「おじ・おばがなくなった時に、自分がその財産を相続することはあるのか」「自分が死亡したときに甥や姪に遺産を譲れないか」「代襲相続と聞いたことがあるがよくわからない」といった方に向けて、相続制度の基本的な説明から、甥や姪が相続をする場合があるのかなどについてご説明します。

「うちの親族には相続なんて関係ない」という方にとっても、気づいたら身近な問題になるかもしれません。

 相続について初めて直面する方に向けて、わかりやすく説明しますので、ぜひご一読ください。

相続人の範囲を確定する必要性

莫大な遺産について親族間でもめたことがある。そのようなお話はよく語られます。

故人が形成してきた資産が相続という偶然の事態によって親族のもとへと流れるのですから、「誰が相続人なのか」は、相続をすることになる人々にとってとても重要なことです。

また、最近では、「うちには相続といえるほどの資産はないよ」という方にも、「誰が相続人なのか」は無視できない問題となっています。

とあるケースでは、「小学生のころ以来会うことのなかった叔父が、実は莫大な負債を抱えており、叔父が死亡したところ、自身が相続人となっていたために債権者から請求を受けるかもしれない」ということがありました。

相続はプラスの財産も、マイナスの財産(負債)も受け継ぐ制度です。そのため、相続人の範囲は、マイナスの財産を受け継がないためにも重要な情報なのです。

甥・姪の相続権

親子の関係のほか、おじやおばと仲の良い方は多くいらっしゃると思います。直接の親ではありませんが、両親のきょうだいとして、特別な関係性を築き、助け合ってきた方もいらっしゃることと思います。

では、おじやおばと甥・姪の間には、親子と同じような相続が発生することがあるのでしょうか。

結論からいえば、原則として相続をすることはありません

以下でご説明します。

法律上の相続人の範囲

よく、相続の話が盛り上がるのは、皆さんもご存じのように、相続により財産が子や親、妻など相続をする立場の人(相続人)に承継される場面です。なくなる方(被相続人)に近しい関係の方が相続人になることが多いです。

しかし、日本の民法では、被相続人(亡くなった人)の財産を承継できる相続人の範囲が定められているところ、これには甥・姪は書かれていないのです。相続人の範囲は、基本的に、以下のルールにより決まります。

  1. 配偶者は、常に相続人になります。
  2. 被相続人には子が存在するならば相続人になります。
  3. 被相続人に子が存在しないときなど、2のルールにより相続をする人がいない場合には、直系尊属(父母、祖父母など。)が相続人になります。
  4. 2の人が存在せず、かつ直系尊属がすでに死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

以上のルールに照らせば、甥・姪は、「兄弟姉妹」の子どもなのですから、「兄弟姉妹」ではなく、相続人にはあたりません。

甥・姪が例外的に相続をする場合

ここまでご説明したのは「原則」のお話でした。例外的に、甥・姪が相続人の立場になる場合も存在します。それは、上でご紹介したルールの4による場合です。被相続人の兄弟姉妹が相続をするはずだったが、その兄弟姉妹がすでに死亡するなどして相続をすることが出来なくなっている場合です。

例えば、両親や直系尊属はすでに亡くなり、子がいないAさんには、きょうだいのBさんがいたとします。この場合、Bさんは兄弟姉妹として相続人になるでしょう。

しかし、Aさんがなくなる以前に、Bさんが亡くなっており、Bさんのお子さんにはCさんがいたとした場面が想定されます。Cさんは、まさに甥または姪です。

甥・姪は、このうち第3順位の相続人である兄弟姉妹の子として登場します。具体的には、被相続人に子がおらず(第1順位が不在)、かつ直系尊属もすでに亡くなっている(第2順位が不在)という状況で、兄弟姉妹のうちの誰かが被相続人よりも先に亡くなっている(代襲原因がある)場合に、その亡くなった兄弟姉妹の代わりに相続権を引き継ぎます。これが「代襲相続」です。

そのため、代襲相続が発生した場合には、甥・姪が例外的に相続をすることがあるのです。

代襲相続ができない場合

一つご注意いただく必要があるのは、代襲相続が発生しない場合もあることです。

例えば、上のAさんの相続でいえば、Bさんが相続放棄をした場合、Cさんに代襲相続は発生しません。

また、甥・姪が関わる相続で特に重要な点が、代襲相続が一代限りであるというルールです。

相続人が子である場合、この場合にも代襲相続は発生します。このとき、被相続人が死亡するよりも前に代襲相続をした相続人(代襲相続人)も死亡していた場合、代襲相続人の子がさらに相続人となることもできます。

しかし、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪の世代までで打ち止めとなります。つまり、甥・姪が被相続人より先に亡くなっていたとしても、その甥・姪の子(被相続人から見て大甥・大姪)が再代襲して相続人になることはありません。

甥・姪に遺贈をする場合の注意点

ここまでお話したように、甥・姪が相続人となる場合は限られています。甥・姪は相続人でないが甥・姪へ財産を与えたい場合、遺贈という制度が利用されます。

これは、被相続人が遺言により、甥・姪に対してその遺産を与えるという制度です。ある財産だけについて遺贈を行うこと(特定遺贈)も、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継がせる遺贈を行うこと(包括遺贈)も可能です。

もっとも、甥・姪が遺贈を受ける場合、甥・姪には遺留分が認められません(遺留分とは?)。遺留分が認められない甥・姪が、他の相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求という請求を受けるおそれがあります。そのため、遺言を作成する際には、遺留分を侵害しないように作成する必要があります。

このような遺言を作成することは非常に困難です。法律知識や多くの経験を必要としますので、弁護士にご相談されることが推奨されます。

甥・姪が直面しやすい相続上の問題点

甥・姪が相続に携わる場合、一般的な相続と比べていくつかの特有の問題に直面しやすくなります。

相続関係の疎遠さによる情報不足

被相続人の子や配偶者と異なり、甥・姪は生前の被相続人との交流が比較的少ないこともままあります。冒頭でご紹介したように、幼いころ会ったきりの親族から相続をすることになったということもありうるところです。

実は相続人である人が、故人がなくなったお知らせを聞いたけれども、結果として被相続人の財産状況や負債、遺言書の有無といった重要な相続情報を把握できていないケースは多く見られます。

特に、被相続人が一人暮らしをしていた場合などは、財産の全体像を把握するための調査に手間と時間がかかり、場合によっては負債を見落とすリスクも高まります。

相続人調査と戸籍収集の複雑化

甥・姪が法定相続人となる場合、被相続人に第1順位(子)と第2順位(親などの直系尊属)の相続人が存在しないこと等を明らかにする必要があります。

では、どのようにこれらの相続人が存在しないことを知るのでしょうか。

弁護士がこのような場面で行うのは、出生から死亡までの被相続人の戸籍謄本に加え、被相続人の父母(第2順位)の出生から死亡までの戸籍、さらには被相続人のすべての子(第1順位)の出生から死亡または現在までの戸籍といった、戸籍謄本を収集する方法です。

これらの作業を経て、いわゆる家系図のような、相続関係図を作成することで相続人の範囲を判定していくのです。このような調査は、一般的な相続に比べて非常に煩雑な作業となり、専門的な知識がなければ正確な調査が困難です。

その他の問題

他にも、甥・姪が相続をする場面では、他にも甥・姪として相続人がいることも多いです。近年では、一族の集まりというようなつながりが減り、いとこ間では交流がないという事態も見られます。

ほとんど赤の他人との交渉なのですから、この場合の遺産分割協議は、通常のものよりもうまくいかないことが多いです。遠方の相続人間で協議するために非常に苦労することもあります。

他にも、相続財産の配分が問題になるときに、寄与分(寄与分について解説)が問題になる場合も、甥・姪がかかわると事実関係がより複雑になることが想定されます。

このように、複雑な問題が隠れているのが、甥・姪がかかわる相続なのです。

まとめ

甥・姪が関わる相続は、特有の複雑な法律問題が絡み合います。また、事実関係も非常に複雑となり、どのように対応すればよいのか、相続問題への対応に不慣れな方には難しいことが多いです。

相続問題の解決には、正確な法律知識と実務経験のある弁護士が、非常に役立つことも多いと思われます。

このような問題にお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士に相談されることをおすすめします。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。


■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小松原 柊
弁護士のプロフィールはこちら