
以前から怪しいとは思っていたが、その後に決定的な証拠を掴み夫の不貞行為が客観的にも明らかになったという場合、不貞行為をするような人と結婚生活を続けることはできないという感情が芽生えることは当然のことです。
しかし、将来的なことを考えるとすぐに離婚に踏み切るのも不安であるという現実的な感情を無視することはできません。
今回は、夫の不貞行為が発覚した場合にすぐに離婚すべきかというテーマについて解説をしていきます。
不貞行為と離婚

不貞行為は婚姻関係にある者が第三者と肉体関係を持つことを指します。
不貞行為は平穏な夫婦関係を侵害するものとして損害賠償請求の原因となるばかりでなく、法的な離婚原因ともなります。
ただし、不貞行為があった場合に夫婦は必ず離婚しなければならないという決まりになっているわけではなく、不貞行為が発覚した後の対応は個々の夫婦によって異なります。
そのため、夫の不貞行為が発覚した場合には不貞行為の発覚=離婚ではないということを踏まえ、今後どうしていくかを検討する必要があります。
夫と離婚すべきかどうかについての考慮要素

夫の不貞行為が発覚した後、夫と離婚すべきかどうかの方向性を決定する上で考慮すべき主たる要素について触れていきます。
大きな考慮要素としては、心情、お子さんの状態、ご自身の収入、離婚条件というものが考えられます。
心情

これは単純に不貞行為をした夫を戦略的に許せるのか、戦略的にでも許せないのかという観点です。
戦略的に許すというのは心の底では決して許したわけではないが諸々の事情から現時点で離婚というところまで決断することができないため、とりあえずは夫婦関係を継続するという状況です。
戦略的にでも許せないというのは離婚をすることで諸々不都合が生じるとしても夫婦関係を継続することは到底許容できないという状況です。
戦略的にでも許せないという場合には離婚を前提に検討せざるを得ないということになります。
お子さんの状態

これはお子さんがいる場合、今後お子さんが成長していくに関してどの程度の手がかかるかという観点です。
お子さんが幼く、手が離れるまでには多くの時間がかかり、また、将来にかかってくるお金の見通しもつかないという場合にはすぐに離婚をするという決断を行うことが難しいケースが多くなっています。
他方で、お子さんが既に独立している、大学生ではあるがあと数年で卒業する見込みであるという場合にはその他の条件を踏まえ現時点で離婚をするという選択肢も見えてきます。
ご自身の収入

これは離婚後に十分生活できる継続的な収入の見込みがあるかという観点です。
お子さんがいない、もしくは、既に手を離れているという場合には離婚後に養育費が支払われるということはなく、ご自身の収入で生活をしていく必要があるため、現時点の収入及び今後の予測を前提に離婚後の生活を現実的に想像する必要があります。
婚姻期間中に主婦であった、もしくは、パートをしていたが多くの収入はないという場合にはすぐに離婚に踏み出すということに躊躇を覚えることが少なくありません。
他方で、現時点で相応の収入がある、もしくは、離婚後は増収の具体的な見込みがあるという場合には離婚後の生活に不安がないとまではいえないがやっていけないということはないという状況となります。
離婚条件

これは離婚時に夫からどのような金銭的条件を得られるかという観点です。
離婚時の金銭的条件としては、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割といったものがありますが、これがどのような内容になるかは離婚後の生活を送る上で非常に重要となってきます。
養育費は双方の収入に応じて算定表を用いて計算をすることが一般的であり、財産分与については双方の財産を開示した上でそれを2分の1とすることが一般的です。
夫が不貞行為をして離婚に至る場合の慰謝料の相場は100~300万円とされており、年金分割は婚姻期間中の厚生年金部分を分割する制度ですが分割の割合は基本的に2分の1です。
以上のところから上乗せがある場合には離婚条件としては有利ということになりますが、離婚条件として有利かどうかと離婚後の生活が成り立つかは別の問題ですので、有利な離婚条件を得られるからといってすぐに離婚すべきであるという結論に直接結びつくわけではありません。
離婚条件を前提とした場合に離婚後の生活がどのようになるかについて具体的なイメージをもって検討することになります。
まとめ

今回は夫の不貞行為が発覚した場合にすぐに離婚すべきかというテーマについて解説をしてきました。
結論として、不貞行為発覚時の諸々の状況を考慮の上で離婚すべきかどうかについては慎重に検討すべきということになり、離婚後の生活はさておき感情面でどうしても許せないという場合以外は離婚後の生活状況を具体的にシミュレーションした上で総合的な観点から判断を下すということになります。
夫の不貞行為は明らかであるが今後どのように進めていけばよいか分からないという場合、お手元の資料を整理した上で専門家である弁護士に相談し、そのアドバイスを踏まえ将来的な方向性について考えるということをお勧めいたします。
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