
将来的に自身が認知症になってしまったとき、その程度によっては、判断能力が衰えてしまい、適切な判断ができず、財産や生活を守れなくなってしまう危険性があります。このコラムでは、そのような場合の備えとして、任意後見という制度について解説します。
1 相談事例

60代のAさんは、現時点では特に持病などはありません。
もっとも、最近、物忘れをすることが増えてきました。
以前は物忘れをすることはほとんどなかったため、Aさんは、今後について不安を抱えています。
また、Aさんは結婚をしておらず、兄弟や両親も亡くなってしまったため、頼れる身内がいません。
そのことも、Aさんの将来への不安を増加させています。
2 成年後見制度とは

認知症や知的障害、精神障害などによって、判断能力が低下した方は、財産管理(自分の預貯金や、自宅の管理など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約、施設への入所契約、入院手続きなど)といった法律行為について、自分自身で合理的な判断をおこなうことが困難な場合があります。
また、判断能力の低下に付け込んで、不必要に高額なものを購入させたり、自宅不動産を不当に安く売却させるといった、悪質商法の被害に遭ってしまうおそれもあります。
このように、精神上の障害により、判断能力が不十分であるため、契約等の法律行為における意思決定が困難な人について、成年後見人等がその判断能力を補うというものが、成年後見制度というものです。
成年後見制度には、大きく分けて、以下の2つの制度があります。
⑴ 法定後見制度
判断能力の不十分な者を制限行為能力者とすることにより、その者が単独で行った法律行為を取り消し得るものとして、判断能力の不十分な者を保護する制度です。
このあと見ていくように、これは、一定の範囲内の親族などの申立てにより、家庭裁判所が要否を判断します。また、後見人については、裁判所が職権で決定します。
⑵ 任意後見制度
こちらは、契約による後見制度となります。こちらについては、下の第4項で詳しく見ていきます。
3 法定後見制度について

⑴ 法定後見制度はどのように始まるか
法定後見制度の場合、事前にだれかと契約するといったことはありません。
判断能力が低下した段階で、申立権を有する方が、家庭裁判所に申し立てをします。
申立てをする権利があるのは、判断能力が低下したご本人のほかに、その配偶者、4親等内の親族(4親等内の血族、3親等内の姻族)などというように、法律によって決まっています。
申立てを受けて、裁判所は、本人に後見人を付けるのかについて、調査、判断します。
⑵ 誰が成年後見人になるか
後見人を付ける場合には、次に、誰を成年後見人とするかを決めますが、これも裁判所が職権により決定します。
申立時に、申立人が候補者を推薦することもありますが、第三者が成年後見人に選任されることも多くあります。
一般論としては、法律的な問題が発生しそうなケースでは弁護士や司法書士等の専門職が、身上保護の問題が発生しそうなケースでは社会福祉士等の専門職が選任されることが多いとされています。
成年後見人は、基本的には、ご本人の財産の管理や、身上保護に関する事務をおこないます。
4 任意後見制度について

⑴ 法定後見制度のデメリット
上記で見てきたように、成年後見制度は、判断能力が低下したご本人をサポートする重要な制度です。
もっとも、成年後見人を付ける場合、誰を成年後見人とするかは、裁判所が職権により判断します。
そのため、初対面の専門職が、自分の成年後見人となることも多くあります。
人によっては、「自分が女性なので、女性に後見人についてもらいたい」「成年後見人を多く任されている人に担当してもらいたい」という希望もあると思いますが、そのような希望は基本的には考慮されません。
⑵ 任意後見制度とは
そのような希望がある場合には、任意後見制度を利用することをおすすめします。
任意後見制度とは、自分に十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自分が選んだ代理人(任意後見人)に、財産管理などについて代理権を与える内容の契約(任意後見契約)を締結しておくという制度です。
任意後見契約は、公証役場というところで、公正証書によって契約をします。そのため、契約時に判断能力があることが前提となります。
この契約により、後見人が付くというときにも、任意後見が原則として優先されます。
この任意後見制度は、自分で自由に後見人を選ぶことができるという大きなメリットがあります。
一方で、公正証書による契約が必須であったり、任意後見監督人が全件で選任され、その監督人の報酬が発生するといったデメリットもあります。
5【まとめ】任意後見に関心があるときは、ぜひ弁護士へ相談を

任意後見制度は、自由に後見人を選べないといった法定後見制度のデメリットをカバーするものであり、大変有用な制度です。
もっとも、制度は一般の方にとってはやや複雑であり、また、任意後見制度にもデメリットはあるため、ご関心のある方は、ぜひ一度、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。
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