
離婚にあたって、財産分与、親権、養育費や慰謝料といった重要事項については、準備不足が致命的な不利益につながります。離婚は「思い立ったらすぐできる」ものではなく、戦略的な準備がその後の生活を左右することを理解する必要があります。
準備リスト1:現状の把握

まず重要なのは「財産分与」の対象を明確にすることです。民法768条では、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は、名義を問わず共有財産として分与の対象になると規定されています。
したがって、自分名義の口座や不動産であっても、婚姻中に得たものであれば対象に含まれます。逆に、結婚前から保有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は「特有財産」として原則分与の対象外です。この区別を正しく理解しておくことが不可欠です。
証拠集めとしては、預金通帳のコピー、不動産登記事項証明書、保険証券、証券会社の残高証明などを確保しておくと有効です。さらに、相手の収入や資産状況を示す源泉徴収票や給与明細、確定申告書の控えなども押さえておくと、後の交渉で有利に働きます。
準備リスト2:離婚後の生活シミュレーション

養育費
離婚後にどのような生活を送れるのかを冷静に試算することは不可欠です。特に養育費については、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が実務上の基準として用いられています。自分の収入と相手の収入から、おおよその支払額または受取額を把握しておきましょう。
弊所のホームページでは自動的に計算できるフォームを用意しています。女性離婚のページですが、男性離婚でも内容は変わりません。
住宅の問題
また、住宅問題も大きな論点です。不動産を共有している場合、財産分与の対象になるか、または一方が使用し続ける場合には「使用貸借」や「賃料相当額」の問題が生じることもあります。これらを前もって想定し、弁護士や不動産会社に相談しておくと現実的なシミュレーションが可能です。
小括
離婚後の生活設計を具体的に考えることは、裁判所に対して「生活再建の見込みがある」と示す材料にもなります。
準備リスト3:不貞行為などの証拠収集

離婚原因として最も多いのは「不貞行為」(民法770条1項1号)です。不貞とは単なる親密な交際ではなく、肉体関係を伴う男女関係を指します。これを立証できれば、慰謝料請求や有責配偶者としての主張に大きな力を持ちます。
有効な証拠
・ラブホテルへの出入り写真
・LINEやメールなどのやり取り(肉体関係を推認できる内容)
・探偵事務所の調査報告書
などが挙げられます。
違法収集証拠排除に注意
ただし、違法な手段で取得した証拠は証拠能力を否定される可能性があります。たとえば、無断でパスワードを解除して相手のスマホを覗く行為や、盗聴・盗撮は不正アクセス禁止法やプライバシー侵害にあたりかねません。適法かつ確実な証拠収集を心がけることが重要です。
準備リスト4:親権を主張するための準備

親権の判断基準は、民法819条に基づき「子の利益」を最優先に決められます。裁判実務では、特に「監護の継続性」と「監護能力」が重視されます。
監護の継続性とは、子どもが現在安定して生活している環境を維持すること。監護能力とは、経済力、生活環境、育児参加の実績などを指します。
準備したい有効な資料
・保育園・学校の送迎記録
・日常的に育児をしている様子の写真や日記
・子どもの生活リズムや健康管理に関する記録
その他の準備
さらに、離婚後にどのような育児環境を整えるのか(住居、勤務形態、祖父母などのサポート体制)を具体的に示せるよう準備しておくことが、親権獲得の大きな後押しになります。
準備リスト5:味方を作る

離婚問題は法的な側面だけでなく、心理的負担が極めて大きいのが特徴です。特に長期化すると、判断力の低下やうつ状態に陥るケースもあります。そこで、両親や兄弟、信頼できる友人といった「支援者」を作っておくことが重要です。
さらに実務的には、親族の協力体制が親権判断の要素として考慮されることもあります。たとえば、子どもの送迎や病気のときに祖父母が支援できる体制があると、監護能力の裏付けとして裁判所に評価されやすくなります。
準備リスト6:離婚協議のシミュレーション

離婚協議では、財産分与、慰謝料、養育費、親権・監護権、面会交流など複数の論点が同時に交渉されます。事前に「要求する項目」と「譲歩できる範囲」を整理しておくことが極めて重要です。
調停や裁判では、調停委員や裁判官の提案に即座に意見を求められることも多く、準備不足だと不利な合意をしてしまう危険があります。具体的に金額や条件をシミュレーションしておけば、冷静に判断が可能になります。
準備リスト7:専門家(弁護士)への相談

弁護士への相談は「最後の手段」ではなく「最初の一歩」と考えるべきです。民法や判例の知識を前提に、戦略を立てることができるのは専門家だけだからです。
早い段階で弁護士に相談することで、
・証拠収集の適法性を確認できる
・財産分与・養育費の相場を把握できる
・協議・調停・訴訟の見通しを立てられる
といったメリットがあります。特に無料相談を活用して、「自分のケースで重要視される法的ポイント」を早めに確認しておくことが推奨されます。
おわりに

離婚は感情的な争いの側面が強い一方で、最終的には「法」に基づいて解決されるものです。民法の条文や家庭裁判所の実務に即した準備をすることで、無用な不利益を避け、将来の生活基盤を守ることができます。
ここで紹介した7つの準備は、いずれも法律的に意味のある行動です。離婚を切り出す前に周到に準備し、自分と子どもの未来を守るために冷静に行動することが何よりも重要です。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。