
今や3組に1組は離婚するという時代、シングルマザー・シングルファーザーといったひとり親家庭も、増えていると考えられます。仕事をしながら子育てをするにしても、その負担は非常に大きく、生活費や家賃、お子様の養育のための費用など、出費も多いことでしょう。このようなお金の心配を踏まえると、そもそも離婚に躊躇してしまう、ということもあるかもしれませんが、死別等でなければ子どもの親は同居親だけではなく、別居親もいるはずであり、親権者ではなくても親としての責任を果たしてもらうため、経済的な負担をしてもらうべきです。また、公的な手当や助成金も用意されていますので、今回は別居親や国・自治体に請求できるものや制度について知っていただき、選択肢の幅を広げていただければと考えます。
ひとり親家庭の場合、どのようなお金や支援が得られるの?
はじめに:お金の不安を解消すれば、新しい一歩が踏み出せる

離婚をしてひとり親家庭になってしまう場合、特に男女の収入格差が大きい日本においては、離婚を考える女性の最大の壁は「経済的な不安」があります。まずはそのような不安を解消するために、どのような請求を、誰に、どのくらいできるのか、各種の手続や制度を見てみましょう。
離婚時に相手方配偶者から受け取れるお金

離婚をした際に、まずは請求相手となるは、もちろん離婚する(元)配偶者です。
離婚時に夫婦間で取り決めるべき事項のうち、経済的なものとしては
①財産分与
②慰謝料
③養育費
④年金分割
があります。
①財産分与について
財産分与とは、夫婦で築き上げた共有の財産を、離婚時に清算することをいいます。例えば、預貯金、不動産、保険、財形貯蓄、株式、退職金、車などの財産を公平に分けます。
たとえ片働きの場合でも、主婦(主夫)が家事・育児を行ったことによって、配偶者は稼働が可能になり収入を得ることができたと考えられるので、分けるべき財産があれば財産分与は必要というのが原則です。
一般的には、結婚時から離婚成立時(別居時)までに得た財産を2分の1ずつ分けることになりますが、財産形成の貢献度が夫婦であまりにも異なるという場合は2分の1ずつを変える場合もあります。
分けるべき財産がない場合、つまり全く財産を築けなかった場合や、当事者双方借金しかないという場合は、財産分与を求められない場合もあります。
離婚原因がどちらにあるかということは考慮しないのが原則で、婚姻前から所有していた財産や相続した財産など、夫婦生活と全く関係なく得た財産は「特有財産」といって財産分与の計算をする財産から除くことになっています。
②慰謝料

夫婦の共有財産の清算を行う財産分与とは別のもので、DV、不貞、言葉の暴力、モラハラ等相手方に有責性があり精神的苦痛を被った、という場合に請求する賠償金のことです。
これは金額が一律に決まるわけではなく、離婚をしたからといって必ず発生するものではありません。
③養育費
養育費とは、子どもが成長・自立するまでに要する必要な費用のことで、父母双方の収入状況、生活状況によって金額が決まるとされていますが、最高裁判所HPに掲載されている算定表を基に額を決めることが多いです。
養育費を支払う対象となる子がいる場合、原則20歳までを支払いの終期として合意することが多いです。ただし、子が20歳以降も進学する場合、大学卒業までなど、学生の終わりまで認められることもあります。
④年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金や共済年金部分を分けることで、考え方としては財産分与と同じです。
原則、婚姻期間中の年金納付の実績を2分の1ずつ分けますが、相手方が国民年金のみしか加入していない場合は、年金分割はできません。
また、自分が年金に加入していないと、年金分割はできません。
「合意分割」という話し合いや調停・審判を通じて、分割の割合を決める制度と、「3号分割」といって当事者間の合意がなくても、一律2分の1ずつで分割する制度があります。この二つの制度では、分けられる対象期間や、分与の対象が変わってきます。
国や自治体から受けられる手当・支援制度

相手方配偶者と死別した場合や、経済的な支払い能力に期待でいない場合は、国や自治体からの公的手当・支援制度に頼らざるを得ません。
こういった公的制度は、今後変遷していく可能性はありますが、大まかに現在の制度を説明していきます。
ひとり親家庭でなくても受給できる手当など
ひとり親家庭でなくても、広く利用できる経済的な支援制度としては以下のようなものがあります。
児童手当:児童を養育している方に手当を支給する制度で、0歳から高校生年代までの子どもを養育している人に支給され、支給金額は子どもの年齢によって異なります。申請できるのは当該自治体に住民登録をする、児童と同居している者に支給されます。
障害児福祉手当:精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の方に支給される手当です。受給資格として、所得制限があります。
特別児童扶養手当:20歳未満で精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給されます。
子育て支援医療費助成制度:お住まいの自治体によっては、0歳から18歳の年度末までのお子様の医療費の一部または全部の負担金を出しているところもあります。
生活保護:生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長するための制度です。支給を受けられる範囲や額については、その困窮の程度や内容によって変わってきます。
遺族年金:国民年金・厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族に対し、「遺族基礎年金」・「遺族厚生年金」を支給する制度です。
ひとり親が受けられる手当・助成金

ひとり親家庭等の場合に得られる手当等は以下のとおりです。
児童扶養手当:ひとり親世帯で養育される子どもの生活の安定のために支給される手当で、「18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子ども(障害の子どもの場合は20歳未満)」を養育している親など対象者として支給されますが、親の所得によって支給の可否そのもののほか、支給の範囲が決まります。
児童育成手当:父母が離婚した等の条件を満たす場合、18歳になった最初の3月31日までの児童を養育している保護者の方に支給されます。ただし、所得制限があります。
ひとり親家庭住宅手当:自治体によって、ひとり親に対し、住居の借り上げに必要となる資金を貸し付けたり、給付金を出すところがあります。
その他
ひとり親家庭への支援については、全国一律のものもあれば各自治体によってその種類や範囲、貸付か給付か等、大きく異なっているものがあります。
また、「ひとり親家庭」にはまだなっていないけれども、DVから避難しており、裁判所から保護命令を得た場合はひとり親家庭と同じように扱う、という制度などもあります。
必要な申請手続等は自治体の窓口に確認してみるのも良いですし、離婚に伴い経済的な不安がある場合等は、離婚そのものについてまずは弁護士にご相談いただければと存じます。
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