
さいたま市内で65歳以上の高齢者の交通死亡事故が増加しているとして、埼玉県さいたま市は4日、「さいたま市交通事故防止特別対策推進要綱」に基づき、交通死亡事故多発非常事態宣言を発令しました。同宣言が出されるのは昨年12月25日以来とのことです。今年1月~6月20日で市内での高齢者の交通事故死者は4人で、過去3年間の同時期平均(1人)と比較し、3人増加し、全世代では7人が死亡しているという報道です。
また、8/13のニュースでも、東松山市では乗用車と軽貨物車が衝突し84歳の女性が死亡、春日部市では自転車に乗っていた69歳の女性が軽貨物車にはねられ死亡という痛ましい報道がありました。
交通死亡事故の損害賠償請求においては、適切な法的知識に基づいた請求を行うことが重要です。本稿では、交通死亡事故における主要な損害項目である逸失利益と慰謝料を中心に、損害賠償の法的枠組みと実務上の取り扱いについて解説します。
損害賠償請求の法的根拠と構造

交通死亡事故における損害賠償請求は、多くの場合、民法第709条の不法行為責任、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任に基づいて行われます。また、遺族固有の慰謝料請求権については民法第711条に規定されています。
交通死亡事故における損害は、以下のように分類されます:
- 財産的損害(積極損害・消極損害)
- 精神的損害(慰謝料)
消極損害の中核をなすのが逸失利益であり、死亡事故や後遺障害がある事故の場合、これが損害賠償額の大部分を占めることが一般的です。
逸失利益の算定について

逸失利益とは、被害者が生存していれば将来にわたって得られたであろう収入から、被害者本人の生活費を控除した金額です。これは被害者の稼働能力の喪失による経済的損失を補償するものです。
算定方法
逸失利益は以下の計算式により算定されます:
基礎収入額 × (1 – 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
基礎収入額の認定
基礎収入額は、被害者の職業・年齢・学歴等により以下のように認定されます。
・給与所得者
原則として事故前年の源泉徴収票記載の支払金額(税込総支給額)を基礎とします。ただし、昇進・昇格の蓋然性が認められる場合は、将来の収入増加も考慮されます。
・事業所得者
確定申告書記載の所得金額を基礎とします。ただし、申告所得額が実収入を適切に反映していない場合は、帳簿、契約書等の客観的資料により実収入の立証が可能です。
・家事従事者
賃金構造基本統計調査(賃金センサス)による女性労働者の平均賃金を基礎収入とします。有職の家事従事者については、実収入と平均賃金のいずれか高い方を採用します。
・学生・幼児
賃金構造基本統計調査による男女別全年齢平均賃金を基礎とします。
・無職者
労働能力・労働意欲があり、就職の蓋然性が認められる場合は、賃金構造基本統計調査による平均賃金を基礎とします。
・年金受給者
受給していた年金額を基礎収入に含めることができます。ただし、年金の性質により取り扱いが異なる場合があります。
生活費控除率
死亡逸失利益については、生活費控除がされます。生活費控除率は、被害者の家族構成における地位により以下の割合が適用されます:
- 一家の支柱で被扶養者1人の場合:40%
- 一家の支柱で被扶養者2人以上の場合:30%
- 女性(主婦、独身女性等):30%
- 男性(独身、幼児等):50%
生活費控除率は、調整機能的な役割を担っていると言われており、一家の支柱の生活非行より都賀低いのは、残された遺族の生活保障の観点からです。
年金生活者の場合、生活費控除率を通常より高くすることが多く、50%~60%という裁判例が多くあります。
就労可能年数
就労可能年数は原則として67歳までとされています。ただし、職種の特殊性や個別事情により67歳を超える就労可能性が認められる場合は、それを考慮した算定が行われます。
中間利息控除(ライプニッツ係数)
将来にわたって得られるはずであった収入を現時点で一括して受領することによる利益を控除するため、ライプニッツ係数を用いて中間利息控除を行います。現行法定利率3%に基づく係数が適用されます。
詳しく知りたい方は、ライプニッツ係数をご覧ください。
シュミレーション
15歳の男性が死亡したとしたら、
- 全労働者平均賃金 5,545,020円(令和4年)
- 生活費控除 1-0.5=0.5
- ライプニッツ係数
67歳まで52年 26.16623999
18歳まで3年 2.82861135
26.16623999―2.82861135=23.337
■計算
5,545,020円×0.5×23.337=64,702,065円
死亡慰謝料について

死亡慰謝料には、被害者本人の精神的苦痛に対する慰謝料と、民法第711条に基づく遺族固有の慰謝料があります。実務上は両者を合算した金額が「死亡慰謝料」として算定されます。
請求権者の範囲
まず、死亡慰謝料自体は、相続人が請求することになります。遺族固有の慰謝料は、民法第711条により、被害者の配偶者、子、父母が遺族固有の慰謝料請求権を有します。これらの者と同視し得る関係にある場合は、祖父母、兄弟姉妹等にも請求権が認められることがあります。
慰謝料算定基準
交通事故の慰謝料算定には以下の3つの基準があります:
・自賠責基準
自賠責保険における最低限度の補償基準であり、3つの基準中最も低額です。
・任意保険基準
各保険会社が独自に定める基準であり、自賠責基準より高いこともありますが、弁護士基準には及びません。
・弁護士基準(裁判基準)
裁判例の集積により形成された基準であり、法的に最も適正な基準とされています。
死亡慰謝料の金額(弁護士基準)
被害者の家族における地位により、以下の金額が相場とされています:
- 一家の支柱:2,800万円
- 母親・配偶者:2,400万円~2,500万円
- その他(独身者、子供、高齢者等):2,000万円~2,200万円
慰謝料増額事由
以下の事情がある場合、上記相場を上回る慰謝料が認められる可能性があります:
- 加害者の著しい過失(飲酒運転、無免許運転、速度違反等)
- 加害行為の悪質性(ひき逃げ、救護義務違反等)
- 被害者の苦痛の程度(即死でない場合の苦痛等)
- 加害者の不誠実な態度(謝罪なし、虚偽証言等)
- 遺族の精神的打撃の程度(PTSD発症等)
その他の損害項目

治療関係費
事故から死亡までの治療費、入院費、手術費等が損害として認められます。
付添費
入院中の付添いが必要と認められる場合、付添費が損害として認められます。近親者による付添いの場合は1日6,500円程度が相場です。
交通費
治療や付添いのための交通費も損害として認められます。
葬儀関係費用
葬儀費用については、弁護士基準で原則150万円を上限として認められます。ただし、実費がこれを下回る場合は実費額となります。
文書料
診断書、後遺障害診断書等の作成費用も損害として認められます。
弁護士費用
訴訟提起の場合、認容額の10%程度が弁護士費用として認められることがあります。
死亡交通事故を弁護士に依頼するメリット

死亡事故では保険金額が大きくなるので保険会社と争いになることがほとんどです。
特に、慰謝料や逸失利益は金額が大きくなります。
弁護士に依頼するのとしないのでは、数百万〜事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所でありました)。
弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。
また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。
弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用も特約ででますので、まずは相談ください。
ラインでの相談も行っています。友達登録して、お気軽にお問い合わせください。
弁護士特約とは?弁護士費用がかからない?

【弁護士費用特約】とは、ご自身が加入している、自動車保険、火災保険、個人賠償責任保険等に付帯している特約です。
弁護士費用特約が付いている場合は、交通事故についての保険会社との交渉や損害賠償のために弁護士を依頼する費用が、加入している保険会社から支払われるものです。
被害に遭われた方は、一度、ご自身が加入している各種保険を確認してみてください。わからない場合は、保険証券等にかかれている窓口に電話で聞いてみてください。
弁護士費用特約で、自己負担一切なしのケースもあります。
弁護士特約の費用は、通常300万円までです。死亡事故、骨折や重傷を伴う事故の場合は、一部超えることもありますが、弁護士費用特約の上限(通常は300万円)を超える報酬額となった場合は、越えた分を保険金からいただくということになります。
なお、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合、どの弁護士を選ぶかは、被害に遭われた方の自由です。
※ 保険会社によっては、保険会社の承認が必要な場合があります。
弁護士費用特約を使っても、等級は下がりません。弁護士費用特約を利用しても、等級が下がり、保険料が上がると言うことはありません。
弁護士費用特約は、過失割合10:0の時でも使えます。なお、被害者に過失があっても利用できます。
まずは、ご自身やご家族の入られている保険に、「弁護士特約」がついているか確認してください。火災保険に付いている事もあります。
ご相談 ご質問

交通死亡事故における損害賠償請求は、複雑な法的問題を含んでおり、適切な知識と経験が必要です。また、保険会社との交渉において適正な賠償額を獲得するためには、早期の段階から弁護士に相談することが重要です。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
まずは、一度お気軽にご相談ください。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。