バイクの交通事故で入院したら?費用・慰謝料相場・手続き・注意点を弁護士が解説

最近、バイク事故が増えています。車と違って身がそのまま接触するので、重傷になるケースが多いです。
交通事故に遭ってケガをした場合や入院をした場合に、誰にいくらを請求できるでしょうか。「入院費用は誰が払うのだろう?」「仕事はどうなる?」「慰謝料はもらえるの?」など、次々と疑問や不安が押し寄せてくるかもしれません。そこで、この記事では、交通事故で入院してしまった場合の保険金についての解説と、損害賠償の金額はいくらになるか等を解説していきます。

まずは確認すべき事項について

まずは確認すべき事項について

突然の入院と緊急搬送で混乱の中だとは思いますが、今後の適正な補償のために、入院中または退院後できるだけ早く、以下の点を確認・対応しましょう。ご本人が難しい場合は、ご家族が協力して進めることが大切です。

  • 加害者情報の確認: 氏名、住所、連絡先、車のナンバー、加入している自賠責保険・任意保険の会社名と証明書番号。
  • 警察への届け出: 必ず人身事故で警察に届け出て、「交通事故証明書」を取得できるようにしてください。これが事故の公的な証明となります。
  • 保険会社への連絡:
    • ご自身の保険会社: 加入している自動車保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険、弁護士費用特約など)や、火災保険・傷害保険に弁護士費用特約が付いていないか確認し、事故の連絡を入れましょう。
    • 相手の保険会社: 連絡先が分かれば、事故の状況と入院した旨を伝えます(ただし、安易な約束や示談はしないこと)。
  • 労災保険の確認: 通勤中や業務中の事故であれば、労災保険が適用される可能性があります。勤務先に確認しましょう。
  • 証拠の保全: 可能であれば、事故現場や車両の写真、ドライブレコーダーの映像、目撃者の連絡先などを確保しておきましょう。バイクにもレコーダーはつけておきましょう。
  • 医師への正確な症状伝達: 痛みや不調は我慢せず、正確に医師に伝え、診断書に記載してもらうことが重要です。
  • やってはいけないこと:
    • 安易な示談: 保険会社や相手から示談を急かされても、内容を十分に理解・納得する前に応じないでください。一度示談すると、原則として覆せません。
    • 不利な念書の作成: 「これ以上請求しません」といった念書には安易にサインしないようにしましょう。

入院中にかかる費用等の賠償について

入院中にかかる費用等の賠償について

入院に伴って発生する様々な費用は、原則として加害者(側の保険会社)に請求できます。ただし、「必要かつ相当な範囲」に限られます。

入院治療費

バイクの交通事故で入院をした場合、入院費用は誰が払うのでしょうか?

原則から言うと、病院で治療を受けるのは患者=被害者であるため、病院から請求を受けるのは被害者自身です。

ただし、加害者が保険に入っている多くの場合は、保険会社が、入院費・治療費を、直接病院に支払うという対応(一括対応と言います)をします。このような「一括対応」は、いわば保険会社のサービスなので、事案によっては、保険会社が一括対応をしてくれない場合がありますし、強制することはできません。そういう場合は、被害者自身が、健康保険を使用する等で、対応する必要があります。

ここまでは、誰が支払うかという問題ですが、保険会社が払うとして、どこまで認められるかという問題があります。

難しい言葉になりますが、「必要かつ相当な範囲」で、治療費が認められます。大概の場合、治療は医師の指示で決まるので、その指示通りの治療であれば、必要かつ相当な範囲と言えるでしょう。

一般的に、治療費のなかには、診察料、リハビリ費、検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料等が含まれます。

・健康保険は使うべき?

使えるのであれば利用を検討しましょう。 自由診療(健康保険を使わない)より治療費単価が抑えられ、特にご自身にも過失がある場合、最終的に受け取れる賠償金(慰謝料など)が増える可能性があります。「第三者行為による傷病届」を健保組合に提出すれば利用できます。

・労災保険は?

通勤・業務中の事故なら、労災保険から治療費(療養給付)が支払われます。この場合、健康保険は使えません。

入院の個室・特別室の使用(差額ベッド代)

入院の個室・特別室の使用(差額ベッド代)

通常、4人部屋や6人部屋の料金は治療費に含まれますが、個室や特別室を利用した場合の差額ベッド代は、原則として自己負担です。ただし、以下のような「相当の理由」があれば、損害として認められる可能性があります。

例えば、症状が重篤であったとか、緊急入院したが個室しか空いていなかった場合が想定できます。被害者が「個室じゃないと眠れない」などという理由では、認められません。

交通事故では、必要かつ相当というキーワードが重要です。

入院雑費

入院雑費とは、入院中に生じる様々な費用のことを言います。

入院生活に必要な日用品(寝具、洗面用具、ティッシュ、衣類など)、通信費、テレビカード代、新聞代などの費用です。

入院雑費は、裁判基準で1日につき1500円が認められます。

※保険会社は、自賠責保険の限度である1100円しか認めてくれません

入院雑費は、何故1500円かと言うと、細かい出費が多いのと、少額であるので、一つ一つ必要性と相当性を判断するのは大変ということで、実務では定額化されています。

したがって、1500円も雑費を使っていないという場合でも、領収書の添付は不要です。

逆に、1500円以上必要だという場合は、それを立証しなくてはなりません。

付添看護費

付添看護費とは、被害者が入院(通院も)した場合に、被害者の家族や、職業付添人(要は、お金を払って付き添ってくれる業者、外部の者)が被害者に付添った場合にでる支出のことです。

例えば、家族であれば、自分の仕事を休んで付添う場合、給料分の損害が発生するでしょう。第三者にお願いする場合は、その費用がかかるでしょう。

これも、同じようなキーワードになりますが、入院付添費は、被害者が治療のために入院した場合、入院中に付添いの必要性があり、実際に付添いがされた場合に、相当な限度で認められるものです。

どういう場合に必要かというと、わかりやすい例は、幼い子です。入院しておけば付添う必要はないとも思えますが、幼い子が一人で身の回りの事をするのは難しいので、親が付添そう必要があると言えます。

他には、高次脳機能障害で寝たきり(いわゆる植物状態)の場合は、介助が必要でしょう。

判例でも、そのような観点で、認められています。

入院付添費の具体的な金額については、近親者付添人の場合には1日6500円程度が認められます。

また、職業付添人の場合には実費全額とされています。

結局は、ここでも、必要性と相当性というキーワードが重要です。

その他費用

①家族の見舞い交通費: 原則として被害者本人の損害とは認められにくいですが、症状が重篤で家族の付添が不可欠な場合など、例外的に認められるケースもあります。

②装具・器具購入費: 治療や将来の生活に必要な義足、車椅子、コルセットなどの購入・レンタル費用。医師の指示に基づき、必要性が認められれば請求できます。

入院による収入減への補償(休業損害)

休業損害とは

休業損害とは

事故により就労できなくなった結果、得られなくなってしまった給与に相当する損害のことを言い、事故前の収入を基礎として計算します。

専業主婦の場合であっても休業損害が認められる場合があります。 また、会社役員は、利益配当として報酬を得ているので、休業損害は認められないことが多いと言われていますが、現場に出るなどしており、労務提供の対価としての報酬があると認められれば、休業損害が認められる場合があります。

金額は、実際に休業により得られなかった金額となります。会社員であれば、収入資料や休業損害証明書を作成してもらい立証します。

主婦の方の場合、家事を行うことで誰かから給料をもらっているわけではなく、目に見えるかたちで収入の減少は生じておりません。 しかし、主婦の方が家事を行うのは家族のためであり、こうした家事労働があることからこそ世帯としての収入があるといえるので、家事労働にも一定の経済的価値があります。

そのため、主婦や主夫の方であっても休業損害を請求することはできます。

もっとも、兼業主婦の方の場合には仕事と主婦業のそれぞれの損害額を比較して、高いほうの金額のみを請求できるという運用になっております。

また、一人暮らしで家事を行っている場合は、主婦業としての損害には含まれません。 家事労働に休業損害が認められる理由は、上記のように家族の生活のために働いていることに経済的な価値を見出しているからであり、一人暮らしの場合には自身の生活のために行っているのであり、誰かのために行っているわけではないことから、家事労働としての損害は認められないのが原則です。

休業損害の計算基準

そもそも休業損害を算出する際の基準は①自賠責基準②裁判所基準の2つがあります。 ①の自賠責基準は、自動車損害賠償保障法等の法令に定められた基準をいい、最低限の損害賠償金額が算定されます。 原則として、一日あたり6100円の金額です。

対して、②裁判所基準とは、過去の裁判例等をもとに設定されているものです。 一日当たりの基礎収入×休業日数で計算します。 通常、①の自賠責基準よりも②の裁判所基準のほうが高くなることから、被害者側弁護士は示談交渉にて②の基準で損害賠償金額を提示します。

判所基準を用いる場合、基礎収入に基づいて計算をしますが、主婦の方は、誰かからお金を現実にもらっているわけではないので、外形上その人個人の基礎収入はありません。

そこで、裁判所の基準を用いる際には賃金センサスという平均賃金に基づいて計算を行います。たとえば、令和5年度に事故にあった場合に参照するのは令和4年度の賃金センサスですが、令和4年の全年齢女性の平均収入は394万3500円ですので、一日あたりの休業損害は394万3500円÷365=1万804円となります。 このように、自賠責基準と裁判所基準では大きな開きがあります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料

バイク事故による怪我の治療のために、入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償です。入通院の期間や日数、怪我の程度によって算定されます。腰椎破裂骨折のような重傷の場合、入院期間も長くなる傾向があるため、100万円〜200万円以上となるケースも少なくありません。これも裁判基準(弁護士基準)で計算すると、保険会社の提示額より高額になることがほとんどです。

慰謝料の計算には、自賠責保険基準、任意保険基準、そして弁護士基準(裁判基準)の3つの基準がありますが、弁護士が介入した場合や裁判になった場合は、最も高額となる傾向にある弁護士基準で計算します。

骨折など、重い怪我の場合は、より高額な慰謝料基準が適用されます。

バイク事故は、骨折の方が多いので、別表1をみてください。

慰謝料は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準・財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)と言われる専門書に記載されている表が、基本的に基準として採用されています。

以下では、裁判基準の表を公開します。

●表の見方

  • 入院のみの方は、「入院」欄の月に対応する金額(単位:万円)となります。
  • 通院のみの方は、「通院」欄の月に対応する金額となります。
  • 両方に該当する方は、「入院」欄にある入院期間と「通院」欄にある通院期間が交差する欄の金額となります。

    (別表Ⅰの例)
    ①通院6か月のみ→116万円
    ②入院3ヶ月のみ→145万円
    ③通院6か月+入院3ヶ月→211万円

入院して後遺障害が残ったケースについて

入院して後遺障害が残ったケースについて

バイク事故で入院をして、その後リハビリや経過観察等でしばらく通院するかと思います。
それでも、後遺症が残るケースも多いです。その場合に、どのような補償があるのでしょうか。

後遺障害慰謝料

後遺障害(後遺症)とは治療しても完治せず、「症状固定」(治療してもこれ以上は状態が変わらない段階)の段階で体に不具合が残ることをいいます。
後遺障害には1級から14級まで等級があり、この等級によって損害賠償の額が大きく変わってきます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対する補償です。

認定された後遺障害等級によって、慰謝料額が変わります。

保険会社は、大抵は、【自賠責基準】に近い金額で慰謝料額を提示してきますが、弁護士が入ることにより、【裁判基準】での金額で交渉が可能です。

★慰謝料表 

後遺障害等級自賠責基準裁判基準労働能力喪失率
第1級1,100万円2,800万円100/100
第2級958万円2,370万円100/100
第3級829万円1,990万円100/100
第4級712万円1,670万円92/100
第5級599万円1,400万円79/100
第6級498万円1,180万円67/100
第7級409万円1,000万円56/100
第8級324万円830万円45/100
第9級245万円690万円35/100
第10級187万円550万円27/100
第11級135万円420万円20/100
第12級93万円290万円14/100
第13級57万円180万円9/100
第14級32万円110万円5/100

逸失利益

逸失利益

将来得られるはずだったが、後遺障害のために得られなくなってしまった収入のことを「後遺障害逸失利益」といいます。

専門用語で「得べかりし利益(うべかりし利益)」とも言います。

逸失利益は、基本的には1年あたりの基礎収入に、後遺障害によって労働能力を失ってしまうことになってしまうであろう期間(労働能力喪失期間。)と、労働能力喪失率(後遺障害によって労働能力が減った分)を乗じて算定することになります。

ただし、将来もらえる金額を、一括してもらう事になるので、「中間利息」というものを控除する事になります。

中間利息の控除は、一般的にはライプニッツ式という方式で計算されます。

まとめると、後遺障害事故における逸失利益は以下の計算式によって算定されます。

■後遺障害逸失利益の計算式
= 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

  • 基礎収入⇒ 事故にあった方の事故時の収入です。
  • 労働能力喪失率⇒ 後遺障害によりどの程度労働ができなくなるかの率です。表により大体定型化されています。
  • 労働能力喪失期間⇒ 症状固定の日から67歳までとされています。
  • ライプニッツ係数⇒ 表にまとまっており、ほぼ定型化されています。

【具体例】
たとえば、事故前の年収が500万円の40歳の方が、腰椎破裂骨折で後遺障害8級(労働能力喪失率45%)に認定され、67歳まで働くと仮定した場合、

500万円 × 45% × (67歳までの27年間に対応するライプニッツ係数)

となり、ライプニッツ係数にもよりますが、数千万円単位の逸失利益が認められる可能性があります。

なぜバイクの交通事故で弁護士? 依頼するメリットと相談のベストタイミング

なぜバイクの交通事故で弁護士? 依頼するメリットと相談のベストタイミング

「弁護士に頼むと費用がかかるのでは?」「大げさにしたくない」と思われるかもしれません。しかし、特に骨折のような重傷事案においては、弁護士に依頼することで得られるメリットは非常に大きい場合があります。

【弁護士に依頼する主なメリット】

  • 適正な後遺障害等級の獲得に向けたサポート:
    • 後遺障害診断書の記載内容について、医学的知見に基づきチェックし、医師に対して適切な記載を依頼・アドバイスします。
    • 等級認定に有利となる画像所見や検査結果の収集をサポートします。
    • 複雑な申請書類の作成・提出を代行します。
    • もし、納得のいかない等級認定結果が出た場合でも、異議申立ての手続きを適切に行います。
  • 賠償金の増額交渉:
    • 慰謝料、逸失利益などを漏れなく、最大限請求します。
  • 保険会社との交渉窓口の一本化:
    • 被害者の方に代わって、保険会社との全ての連絡・交渉を行います。これにより、煩わしいやり取りから解放され、治療やリハビリ、生活の再建に専念できます。
  • 訴訟への対応:
    • 万が一、交渉で合意に至らない場合でも、訴訟(裁判)手続きに移行し、裁判所を通じて適正な賠償の実現を目指します。

バイク事故の場合、特にケガが重くなりやすいのと、過失割合の争いが多いです。

【相談のベストタイミングは?】

できるだけ早い段階、可能であれば「症状固定」の診断を受ける前からのご相談をおすすめします。

なぜなら、

  • 適切な後遺障害等級認定を得るためには、症状固定前から計画的に検査を受けたり、医師との連携を図ったりする必要があるからです。
  • 早期にご相談いただくことで、今後の見通しや取るべき対応について、弁護士が戦略を練るための十分な時間を確保できます。
  • 治療中の段階から保険会社との対応についてアドバイスを受けることで、不利な状況に陥るのを防ぐことができます。

もちろん、既に症状固定の診断を受けた後や、保険会社から示談案の提示を受けた後でも、決して遅すぎることはありません。少しでも疑問や不安を感じたら、まずは一度ご相談ください。

交通事故による大腿骨骨折について弁護士に依頼するメリットまとめ

交通事故による大腿骨骨折について弁護士に依頼するメリットまとめ

後遺障害が残ると保険金額が大きくなるので保険会社と争いになることがほとんどです。

特に、慰謝料や逸失利益は金額が大きくなります。

弁護士に依頼するのとしないのでは、数十万~事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所でありました)。

弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。

また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。

こうした事がメリットになります。

弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用もでますので、まずは相談ください。

ラインでの相談も行っています。友達登録して、お気軽にお問い合わせください。

弁護士特約については、こちらをご覧ください。【弁護士費用特約】とは、ご自身が加入している、自動車保険、火災保険、個人賠償責任保険等に付帯している特約です。

弁護士費用特約が付いている場合は、交通事故についての保険会社との交渉や損害賠償のために弁護士を依頼する費用が、加入している保険会社から支払われるものです。弁護士費用特約で、自己負担一切なしのケースもあります。

弁護士特約の費用は、通常300万円までです。多くのケースでは300万円の範囲内でおさまります。

バイク事故の際は、是非ご相談ください。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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