不幸にして労災事故などにあってしまった場合、労災保険から支給される金額で、損害のすべてをカバーできるのでしょうか。労災保険から、慰謝料は受け取れるのでしょうか。

今回は、この「労災保険」と「慰謝料」にフォーカスし、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、「労災専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。

「労災保険」とは  

労災保険とは

労災保険は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付がなされる制度です。

また、受傷・疾病にかかった労働者の社会復帰促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保を図ることも目的としています。

この労災保険は、政府が管掌しており、労働者を使用する全事業が適用事業となっています(公営や、小規模事業についての例外有)。

費用は、政府が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」により事業主から徴収される保険料によってまかなわれます。

ここでは、主に給付について説明します。

労災保険で受給できる給付

療養補償給付

これは、いわゆる治療関係費用です。

診察、薬剤や治療材料の支給、処置・手術その他の治療、居宅における看護、病院等への入院や看護などの療養に必要な費用が給付されます。

療養した医療機関が労災保険指定医療機関の場合には、「療養補償給付たる療養の給付請求書」をその医療機関に提出すると、請求書が、医療機関から労働基準監督署長に提出されますので、療養費を支払う必要はなくなります。

療養した医療機関が労災保険指定医療機関でない場合には、一旦療養費を立て替えて支払うことになります。医療機関への支払いの後「療養補償給付たる療養の費用請求書」を、労働者から労働基準監督署長に提出し、その費用が労働者に支払われることになります。

休業補償給付

これは、給与の代わりになるものとイメージできます。

労働災害により休業した場合には、第4日目から休業補償給付が支給されます。

「休業補償給付支給請求書」という書類を、労働基準監督署長に提出することで給付が受けられるようになります。

障害補償給付

残念ながら、労災によって後遺障害が残ってしまった場合には、認定された等級に応じて、一定額の年金または一時金が支給されます。

遺族補償給付

不幸にして、労災によって労働者が死亡してしまった場合には、遺族の方へ、遺族補償年金が支給されます。

葬祭給付

葬祭料が支給されます。

傷病補償年金

休業補償給付を受けていた方が、療養開始後一定期間経過しても治癒せず、一定の障害状態にある場合に支給される給付です。

ただし、労基署長の職権によることになっています。

後遺障害について

労災における後遺障害等級は、当事務所の次のページも参照してください。

労災に該当した場合、労災保険以外に受け取れるものはないの?  

労災保険以外に受け取れる可能性があるもの 

上記の通り、労災保険から、治療費や休業損害に相当する金員を受け取ることができます。

しかし、それがすべてではありません。

会社は従業員の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負っていることから、労災給付で不足する場合は、この安全配慮義務違反に基づき、賠償を請求する余地があります。

労災給付で不足する典型例は休業損害ですが、その他には、慰謝料が挙げられます。

慰謝料とは

慰謝料という言葉は、テレビを始め日常で非常に頻繁に見られる言葉と思われます。

最も頻繁に使われる場面は離婚の慰謝料では無いかと思いますが、労災に会ってしまった場合も、慰謝料を請求することができます。

慰謝料とは、不法行為や安全配慮義務違反を行った者が、不法行為や安全配慮義務違反により被害を被った相手方に、その被害における精神的苦痛を慰藉するための金銭として支払うべき金員を言います。

労災における慰謝料の具体例

他界された場合の慰謝料

各種裁判例を踏まえますと、労災被害による死亡事故や過労死によるものでは、2200万円から2800万円という裁判例があります。

後遺障害が残ってしまった場合の慰謝料

後遺障害が残ってしまった場合は、交通事故を参考にすることが多いと言えます。

交通事故の場合は、概ね、次のような慰謝料額とされています。

第1級 2800万円

第2級 2370万円

 第3級 1990万円

 第4級 1670万円

 第5級 1400万円

 第6級 1180万円

 第7級 1000万円

 第8級  830万円

 第9級  690万円

第10級  550万円

第11級  420万円

第12級  290万円

第13級  180万円

第14級  110万円

入通院した場合の慰謝料

入通院治療した場合は、交通事故を参考にすることが多いと言えます。

会社に慰謝料を請求するためには

会社に慰謝料を請求するにはなにが必要か

会社に慰謝料を請求するためには、会社に安全配慮義務違反があり、その義務違反によって労災事故が発生していることが必要です。

安全配慮義務とは、雇用関係に基づいて使用者が労働者に対して負う義務の一つです。

労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務、と定義されています。

安全配慮義務違反で会社に賠償を請求するにはどうすればよいか 

 ①雇用契約ないし安全を配慮すべき関係性の存在

  請負、下請け、派遣先での事故の場合には特にこの点が問題になるケースが多いと言えますが、通常、請負、下請け、派遣先などの場合、作業や業務従事の場所での安全確保は元請けや派遣先事業者が行いますので、これらの場合でも、請求できる余地があります。

②安全配慮義務違反の存在

会社に安全配慮義務違反を理由に賠償請求するためには、安全配慮義務違反が存在しなければなりません。

③損害の発生

慰謝料の場合、精神的な苦痛が生じる具体的な事実を、指摘していくことになります。

④損害と安全配慮義務違反との因果関係

発生した損害と、安全配慮義務違反との間に、法的な意味での因果関係があることが必要です。

詳細は、「会社の安全配慮義務違反を訴えたい」というコラムをご参照ください。

労災での慰謝料請求について、グリーンリーフ法律事務所ができること

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの労災を含む事故賠償に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、事故賠償に精通した弁護士が数多く在籍し、また、労災専門チームも設置しています。

このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・労災専門チームの弁護士は、労災や事故賠償に関する法律相談を日々研究しておりますので、労災事件における慰謝料請求に関して、自信を持って対応できます。

なお、費用が気になる方は、上記HPもご参照ください。

最後に

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦

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