障害者の方が労働災害にあったら、会社の安全配慮義務違反は認められる?

このページでは、労災事故に遭われた方からよくある質問「障害者の方が労働災害にあったら、会社の安全配慮義務違反は認められる?」について説明します。結論としては、会社の安全配慮義務は健常者以上に配慮すべきであり、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき、合理的配慮の内容を確定等しなければなりません。そのため、障害者の方が労災事故に遭った場合、通常以上に慎重な検討が必要です。

このページは、グリーンリーフ法律事務所の弁護士が、労災事故に遭われた方からよくある質問「障害者の方が労働災害にあったら、会社の安全配慮義務違反は認められる?」について説明します。

そもそも、会社の安全配慮義務違反とは何ですか?

そもそも、会社の安全配慮義務違反とは何ですか?

労働災害が生じた場合に、会社に対して損害賠償責任を追及できるかどうかの基準となるのが、安全配慮義務違反の有無です。

安全配慮義務違反あり → 会社に対する損害賠償請求が可能

安全配慮義務違反なし → 会社に対する損害賠償請求が困難(※)

※ただし、労働者同士の怪我などの場合には、使用者責任により、会社の損害賠償請求が可能な場合もあります。

判例

会社の安全配慮義務の存在は、最高裁判所によって、こう述べられています。

「労働者が役務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮すべき」安全配慮義務を負っている(最判昭和59年4月10日・労判429号12頁)。

このように、会社は従業員に対し、安全配慮義務を負っています。

被災者が障害者の場合には、会社の義務の内容は異なりますか?

被災者が障害者の場合には、会社の義務の内容は異なりますか?

はい。

会社において従業員が障害者であることを知っていた場合には、その障害の内容を前提とする安全配慮義務を負っていると考えられます。

裁判例によれば、以下のとおり述べられています。

裁判例

従前から身体障害を有していることを認識していたか、少なくとも容易に認識し得たのであり、これを前提とした安全配慮義務を負っている(大阪地判平成19年5月28日・判時1988号47頁)。

障害者に対する合理的配慮とは何でしょうか?

障害者に対する合理的配慮とは何でしょうか?

加えて、会社は、障害者の雇用に関する合理的配慮が求められます。

障害者の雇用の促進等に関する法律

障害者の雇用の促進等に関する法律

具体的には、事業者は、採用時・採用後を問わず、障害者が職場において支障となっている事情の有無を確認し、合理的配慮としてどのような措置を講ずるかについて話し合いを行い、合理的配慮の内容を確定させる必要があります(障碍者の雇用の促進等に関する法律第36条の2ないし第36条の4)。

(雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置)
第三十六条の二 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

(平二五法四六・追加)
第三十六条の三 事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

(平二五法四六・追加)
第三十六条の四 事業主は、前二条に規定する措置を講ずるに当たつては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。
2 事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

障害者差別解消法

令和6年4月1日から、障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されます。

これは、雇用に限った法律ではありませんが、障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供を求めており、具体的には、

① 行政機関等と事業者が、

② その事務・事業を行うに当たり、

③ 個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に

④ その実施に伴う負担が過重でないときに

⑤ 社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること

  とされています。

以上のような規定それ自体が安全配慮義務の根拠になるのか、会社が障害者であることを知っていたのか、合理的配慮は一切していないのか、などは争点になることも少なくありません。

おわりに

おわりに

以上の3項目をもとに解説してまいりました。

ぜひ今回解説したような内容を現在の自分と照らし合わせてみてください。

しかし、どれだけ調べてみても、実際に請求するとなるとやはり不安が残ってしまいますよね。

どれだけ安全配慮義務の疑いがあるとしても、主張を間違えると請求が認められないという可能性もあります。

労働者の方の中には、そもそも会社に損害賠償請求できるなんて知らなかった、とか、自分が悪いからと、要件に該当しているのに、請求を諦めてしまう方もおります。

私たちとしても、1人でも多くの損害賠償を受け取る権利がある方に金銭補償を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と前を向くきっかけづくりをお手伝いさせていただきたいと思っております。

もし、今この記事を読んでいるあなたが少しでもの要件に該当すると思ったら、労災分野に特化した弁護士に相談してみてください。

当事務所では、電話相談10分、初回面談30分を無料で承っており、お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。

私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志

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