数次相続とは? 再転相続や代襲相続との違いやその特徴を解説

相続が複数重なって生じてしまう「数次相続」の場合、当事者関係や権利関係が複雑化し、相続問題の解決が難しくなる傾向があります。この記事では、数次相続とはどのような状況か、その特徴を解説し、数次相続への対応方法について述べていきます。

複数の相続が重なる「数次相続」とは

複数の相続が重なる「数次相続」とは

数次相続とは、相続が発生した後、相続人が遺産分割をしないまま亡くなってしまい、再度相続が発生した場合のことを指します。先に発生した相続を一次相続、次に発生した相続を二次相続…と言うため、このような状況のことを数次相続と呼んでいます。
数次相続が起こってしまうと、相続手続きを完了させることが一気に難しくなる傾向にあります。
そこで今回の記事では、数次相続について理解を深め、その対策や対処法を考えていきたいと思います。

数次相続の例(図解)

数次相続の例(図解)

数次相続が起こった以下の事例を見てみましょう。

①平成20年、Aが死亡。相続人は息子Bと娘Cの2人。
②BとCはどちらも相続放棄をしなかったが、遺産分割協議も行わなかった。
③令和5年、Bが死亡。Bの相続人は妻Dと息子Eの2人。

まず、①でAが亡くなっていますから、Aについて相続が開始します。
Aの相続人はBとCです。
BとCはあまり仲が良くなく、遺産分割協議をしないまま、Aの相続を放置していました。
次に、③でBが亡くなりました。Bの相続人はDとEです。
DとEは、Bの財産について相続することになりますが、同時に、本来であればBが行うはずだったAの相続についても、その立場を引き継ぐことになります。

これが「数次相続」です。相続が2つ重なって生じているのがお判りでしょうか(上記の場合、①が一次相続、③が二次相続と呼ばれます。)。
このように、相続の手続きが終わらない内に相続が重なってしまう数次相続では、遺された相続人は複数の相続について対応しなければなりません。

数次相続・再転相続・代襲相続の違い

数次相続・再転相続・代襲相続の違い

相続に関係する言葉で、「数次相続」に似たものとして「再転相続」「代襲相続」というものがあります。これらがどのように違うのか、以下見ていきましょう。

①再転相続とは

再転相続とは、相続が発生した後、かつ「熟慮期間中に」、相続を承認もせず放棄もしないまま相続人が亡くなってしまい、再度相続が発生した場合のことを指します。

相続が生じた場面では、民法915条1項によって「熟慮期間」というものが定められています。熟慮期間とは、相続について、放棄するか承認するかを決めることができる期間のことです。熟慮期間内に相続放棄の手続をとらない場合には、相続は承認されたものとみなされます(単純承認。民法921条2号)。
再転相続の場面では、一次相続の相続人は、熟慮期間内、すなわち相続を承認するか放棄するかを決める期間内に、承認も放棄も決めないまま亡くなってしまうことに特徴があります。要するに、一次相続について相続をするか放棄をするか決めることができる立場を、二次相続の相続人が引き継ぐことになるのです。

一方、数次相続の場合は、一次相続について相続の承認がある(熟慮期間の経過を含む。)という違いがあります。
この場合、二次相続の相続人は、もはや一次相続について放棄を選択することはできません(※ただし、二次相続について相続放棄することで、結果的に一次相続から逃れることができます。詳しくは後述します。)

※この記事では、「数次相続」とは狭義の数次相続(上記で説明した、先に生じた相続については承認されている(熟慮期間の経過による単純承認も含む)パターン)を指します。文献や文脈によっては、狭義の数次相続と再転相続の両方を指して(広義の)数次相続と言われることがあります。

②代襲相続とは

 代襲相続とは、ある相続が発生する前に、本来であればその相続における相続人になるはずだった人が亡くなっていたため、代わりにその人の子などが代襲相続人として相続する場合のことを指します。
 代襲相続と数次相続・再転相続との大きな違いは、相続よりも「先に」相続人になるはずだった人が亡くなってしまうところにあります。
 したがって、数次相続と違って、先に相続の承認・放棄をする立場の人はいません。
 代襲相続人は、相続について自ら承認が放棄を選択することになります。

 代襲相続についてくわしくはこちら

「相次相続」は税法上の制度

ちなみに、似た言葉として「相次相続」というものもありますが、これは税法上の相続税控除の制度を指しますので、上記の分類とはまた異なるものです。したがって、今回は取り上げません。
参考:国税庁HP「No.4168 相次相続控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm

数次相続の特徴

数次相続の特徴

以下では数次相続の特徴について解説していきます。

①全ての相続について丸ごと承認するか、放棄するかを選ぶ

上記でも解説した通り、数次相続の場合は先行する相続(上記の図でいう一次相続)についてはすでに承認がなされています(熟慮期間の経過による単純承認を含む。)。
したがって、二次相続の相続人が選ぶことのできる選択肢は、二次相続について承認する又は放棄をするという2パターンのみです。

二次相続について放棄をした場合は、二次相続の相続人ではなくなりますので、(上記でいうBが相続した)一次相続についても無関係になります。
そのため、もし、一次相続の分について相続をしたくない事情がある場合には、二次相続について相続放棄の手続をとり、一次相続の分も含めて二次相続から逃れるという手段をとらなくてはなりません。

逆に、二次相続についてどうしても相続をしたいという事情がある場合には、一次相続の分も含めて二次相続を承認して相続をすることになりますので、一次相続の分から逃れることはできないということになります。

なお、再転相続の場合は、一次相続について承認又は放棄を決めることができる地位が二次相続の相続人に引き継がれますので、全て承認・全て放棄という上記の2パターンに加えて、「一次相続について放棄・二次相続について承認」という方法もとることができます。
しかし再転相続の場合も、二次相続について放棄をしてしまうとそもそも二次相続の相続人ではなくなってしまうため、一次相続については無関係となり、放棄や承認をすることはできなくなります。

②遺産分割が行われなければどこまでも続く

相続は、遺産分割を行うなどして完了させないと、ずっと未了の状態で残ってしまいます。そして、相続手続きが未了のまま次代が亡くなり数次相続が生じると、当事者が増えてしまったり、遺産の全体が分からなくなってしまったりして、非常に複雑で厄介なことになってしまいます。

例えば下記の図のように、先祖代々の土地に自宅を建てて住んでいる場合に、土地の名義が何世代も前のご先祖様であるAになっているということがよくあります。

もし、上記の図の中のA死亡時・B死亡時に遺産分割協議が行われず、相続について放置されてしまっていたとすると、G死亡時に、Gの相続人である配偶者Hは、自宅の土地を相続するために、Gの相続人である子I・同Jのみならず、 Aの相続人であるC、Bの相続人であるD、同E、同Fも巻き込んで遺産分割協議を行わなければなりません。

なお、上記の図の例では、第三順位の兄弟姉妹が相続人になるパターンを含んでいませんので、事案はやや単純な方です。兄弟姉妹が相続人になり、その後亡くなり次代であるその子(被相続人の甥姪)が複数いて、さらにその甥姪が亡くなればその子らに引き継がれ…という風に、兄弟姉妹の相続人が含まれるパターンの数次相続だと、事案はより一層難解になっていきます。

もし数次相続が生じてしまった場合には、誰が相続人なのか、それぞれの法定相続分がどれくらいなのか等状況が複雑になりますので、一度弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

なお、数次相続とは違って、代襲相続については、第三順位の兄弟姉妹が相続人であったけれども亡くなっている場合に、その子(被相続人の甥姪)は代襲相続人となりますが、その甥姪らが亡くなっている場合には甥姪の子らは再代襲しないことになっています。

③遺産分割などの相続手続が難航するおそれがある

上記②でも述べた通り、数次相続が生じた場合には、誰が相続人か、誰がどれだけの法定相続分を有しているかが非常に複雑になります。
また、それだけでなく、先行する一次相続等の遺産分割を考える際に、遺産として何があるのか、その他考慮しなくてはならない事情(生前贈与や寄与分など)には何があるのかなど、事情が分からない中で遺産分割を進めなくてはならなくなるため、調査に時間がかかったり、話し合いがスムーズにいかなかったりすることがあります。
他にも、銀行口座の解約や相続登記などの相続手続きにおいて、戸籍などの多くの資料が必要となり、やはり手間と時間がかかってしまうことも予想されます。

数次相続が生じてしまう理由は様々だと思いますが、相続が重なれば重なるだけ遺された人々の大変さも大きくなってしまうため、なるべく自分の代で相続を完了させるように心がけたいところです。

数次相続が起こってしまった場合の対処法

数次相続が起こってしまった場合の対処法

①まずは状況の正確に把握する

上記でも述べてきた通り、数次相続の難しさのひとつは、誰が当事者なのか、誰がどれだけの権利(法定相続分)を有しているのかが分かりづらいところにあります。

したがって、まず相続人を確定させるために、戸籍を辿ることが必須になります。
戸籍の記載内容(特に手書きの頃の戸籍)は分かりづらいことも多く、被相続人や相続人について、いつ生まれていつ亡くなったか、配偶者や子どもはいるのか等、抜け漏れの無いように確認する必要があります。
戸籍の確認と同時に、相続関係説明図を作成するとより分かりやすくなります。
相続関係説明図は、いわゆる家系図のようなもので、相続に関係する人々について氏名のみならず、いつ生まれ、いつ亡くなったか、いつ結婚したか等の身分関係に関する情報も書き込んだ図になります。

相続人の関係について明らかになった後は、各相続について、誰がどれだけの法定相続分を有しているかを確認します。
また、被相続人についての財産の調査も必要になります。
銀行や信金へ問い合わせを行って預貯金を調べたり、名寄帳や登記を取り寄せて不動産の有無を調べたりしますが、被相続人が亡くなった時期が古いと、記録や手がかりが残っておらず、調査が難しい場合もあります。

②生じた相続をひとつずつ解消していく

重なり合った複数の相続については、当事者が重なることもありますが、それぞれ別々の当事者がいることになります。また、それぞれの相続について相続財産も別々に存在することになります。
したがって、全ての相続についてまとめて話し合いをすると分かりづらくなってしまうため、古い相続から順番にひとつひとつ話し合い、遺産分割協議書にまとめていく方法がおすすめです。

③話し合いがスムーズに行えない場合は調停手続を検討

当事者が多くて話がまとまらない、そもそも話し合いに応じてもらえないような場合は、裁判所の調停という手続を使って、話し合いを進めることができます。
調停では、調停委員が事案や各当事者の主張の整理を行い、合意に向けて話し合いを進めてくれますので、特に当事者が多かったり主張の対立がある場合には有用な手続きです。

ただし、調停委員は当事者の誰かの味方をしてくれるわけではありませんので、自分の主張を確実に伝えたい場合には、弁護士をつけることをおすすめします。

数次相続が生じた場合は弁護士に相談を

上記で見て来た通り、数次相続は、調査や話し合い、手続き等、複雑な面が多いため、専門家への相談や依頼がかなり有用な状況だと言えます。
相続に関連する専門家は、弁護士のほかにも税理士や司法書士などがいますが、相続について代理人として話し合いを行えるのは弁護士だけです。数次相続の場合は、複数重なる相続について遺産分割協議を行わなければならないため、弁護士を代理人として立てることに大きな意味があると考えられます。
しかし、数次相続が生じた場合には、何と言ってもまずは状況の整理です。
弁護士を依頼するかはさておき、状況の正確な把握と整理のため、ひとまず弁護士へご相談頂くことをおすすめいたします。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 木村 綾菜

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