自己破産したらアパートから出ていかなければならないのか?賃貸借契約への影響とその対処法

借金額が膨れ上がり返済不能になった人が、借金返済の免除を受けるために採ることができる裁判上の手続として「自己破産」があります。

「自己破産したら、今住んでいるアパートから退去しなければならないのか?」、「自己破産後、新たに賃貸借契約を更新(又は締結)することができるのか?」などのお悩みを抱えている方向けに専門家が、自己破産が賃貸借契約に影響を及ぼすケース等について解説するページになっております。

そもそも自己破産とは?

そもそも自己破産とは?

借金額が膨れ上がり返済不能になった場合の債務整理の手続は、主に3つあり任意整理・個人再生・自己破産が挙げられます。

任意整理は裁判所を介さずに行う方法(直接、債権者と交渉)であり、個人再生・自己破産は裁判所上の手続を踏みます。

個人再生:借金の額から圧縮した金額を3年~5年にわたって返済していく手続

自己破産:借金が免責されることになり借金返済を免れる手続

自己破産などの債務整理をした場合のデメリットとして、ブラックリストに載る・官報に掲載される・資格制限が課される・価値のある財産(例えば、不動産・車など)が換価処分される等が挙げられます。

自己破産をした場合、アパートから追い出されるのか?

自己破産をした場合、アパートから追い出されるのか?

賃貸人との賃貸借契約が継続している限りは、借主は退去せずに済みます

その理由としましては、自己破産手続上、自己破産をする人が締結している賃貸借契約は、破産管財人(自己破産手続開始後に、破産者の資産等を管理・換価処分等をする弁護士を指指します)が契約を解除するか否か判断することができ、貸主は管財人に対して、解除するか否かの回答を求めることができます(破産法第53条)。

したがって、管財人が賃貸借契約を解除するべきという判断をしない限り、賃貸借契約を解除することはできないとされるため、貸主側から自己破産を理由として契約を解除することはできないとされています。

管財人が選任された場合、管財人が賃貸借契約を解除することは、破産者の生活の拠点である住居を奪うことを意味するので、原則解除されることはないと考えられます。

例外的に破産管財人によりアパートの賃貸借契約が解除される場合

例外的に破産管財人によりアパートの賃貸借契約が解除される場合

収入に比して明らかに身の丈に合っていない高い家賃の物件を借りている場合、賃貸借契約を継続するとは、経済的な更生につながらないとの理由で破産管財人が賃貸借契約を解除する場合がございます。

また、家賃を滞納している場合破産手続開始前の滞納家賃も他の債権と同様に免責の対象になります

このような場合、貸主側が、未払家賃(一般的に3か月分以上の滞納)があり信頼関係が破壊されたことを理由に、賃貸借契約を解除し、アパートを退去せざるを得ない事態になる可能性もございますのでご注意ください。

さらに、今住んでいるアパートから立ち退きたくないという理由で滞納家賃を支払った場合、かかる行為が偏頗(へんぱ)弁済(一部の債権者を特別扱いして借金を返済する行為をいいます。)に当たる可能性があり、免責不許可事由(借金の免除を認めないという事由)に該当する可能性がありますので、安易に返済しないよう気を付けてください

自己破産後に、新たに賃貸借契約を結ぶことはできるのか?

自己破産後に、新たに賃貸借契約を結ぶことはできるのか?

アパートを借りる場合、貸主としては借主がしっかり家賃を支払えるほどの能力があるかどうかについて審査します。

審査方法は主に2つあり、まず、貸主自身が、借主が家賃を支払うことができるかどうかの審査を行います。

また、家賃の支払いができなくなった場合に備え保証人をつけることになりますが、現在、保証人をつける代わりに保証会社が就くことがございます。

このような場合、2つ目の審査として、保証会社が審査をすることになります。

保証会社が、審査をする際に利用するものとして信用情報があります。

信用情報には、主に事故情報つまりブラックリスト等が掲載されており、自己破産をして信用情報に事故情報の登録がある場合には、保証会社は審査の結果保証をしない結論を出します。

したがって、このような場合、賃貸借契約を結ぶことができないという事態が生じますのでご注意ください。なお、事故情報は自己破産した場合、約7年間残ります

保証会社の審査が通らなかった場合の対処法

仮に、審査が通らず賃貸借契約を結ぶことができなかった場合の対応策として以下の方法が考えられます。

1 連帯保証人を立てる

現在でも、連帯保証人を立てて賃貸借契約することができる賃貸物件は少なくなく、保証会社の利用が条件とされている物件であっても、不動産仲介業者と相談すれば連帯保証人付きで契約することができる場合もあります

2 公営住宅を借りる

公営住宅とは、地方公共団体が建設・買取りを行った賃貸住宅のことを指し、所得が低い方が利用できるように家賃も低額に抑えられているので自己破産後も住みやすい物件といえます。

公営住宅を借りる条件として所得制限が課せられており、所得額に応じて支払う家賃の額も変動するのが特徴です。

3 同居人名義で借りる

賃貸の審査は申込者を対象に行われることから、例えば夫婦で申し込む場合で、夫が自己破産をしたことでブラックリストに載っている際には、妻名義で賃貸借契約を結ぶことで審査が通る場合がございます。

まとめ

まとめ

原則、自己破産を理由に今まで借りていた賃貸物件から立ち退かなければいけない理由はございませんが、例外的に立ち退かざるを得ない場合もありますのでご注意ください

もし、自己破産を検討しており家賃を滞納している場合には、弁護士に素直に話すことをオススメします。

自己破産は、法律上認められた債務整理手続きの1つです。借金返済に困り生活に苦しんでいる場合は、まず弁護士に相談していただければと思います。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 安田 伸一朗

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