景品表示法は、表示について様々な規制を設けていますが、規制に違反した場合、行政指導や刑事罰を科されることがあります。
このコラムでは、実際に景品表示法違反とされたケースを取り上げ、何がポイントだったのかを解説します。

1 景品表示法に違反してしまったら

景品表示法は、事業者が行う表示について様々な規制を定めています。
これらの規制に違反した場合、行政指導を受けたり、場合によっては刑事罰を受けてしまったりすることがあります。

そのため、事業者が広告を行う場合は、景品表示法に違反しないように努めることが非常に重要になります。
このコラムでは、実際に景品表示法違反とされたケースをご紹介し、景品表示法違反とならないために気をつけるべきことを解説します。

2 優良誤認表示

(1)優良誤認表示とは

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質等に関して、実際のものよりも著しく優良であると示したり、事実に反して他の競合する事業者が提供する商品やサービスよりも著しく優良であると示すことをいいます。

わかりやすく言えば、商品・サービスの内容・品質に関する表示を対象としています。
具体的には、食品について実際は使用していない原材料を使用している旨を表示したり、実際にはその商品が有していない効果や効能があることを表示したりすることがあたります。

以下では景品表示法違反とされたケースをご紹介します。

(2)ケース1

情報誌に掲載した広告において、顔にシミのある人物の画像と共に、「目尻や頬のおばあちゃんジミが消えた・・・!」、「エッ?洗顔で老斑やシミが薄くなる?」及び「濃く、落ちにくい60代以上のシミ(老斑)に劇的実感力」等と表示しいていました。
このように、あたかもこの商品にはシミを薄くしたり消したりする効果があるよう表示がされていました。

行政庁から景品表示法に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出されたが、それは当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであり、課徴金命令が課されました。

(3)ケース2

首に掛けて使用するタイプの除菌剤について、容器包装及びウェブサイトにおいて、あたかも、本件商品を身に付ければ、身の回りの空間のウイルスや菌が除去又は除菌される効果を得られるかのように示す表示をしていました。

景品表示法に基づき、行政庁から、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出されたが、その資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないとして、課徴金納付命令が課されました。

(4)ケース3

除菌スプレーについて、アルコールの10万倍の除菌力を有しており、商品を自動車内または室内に設置することで新型ウイルスや空間に浮遊する細菌を除去する効果があり、また、あらゆる細菌・ウイルスを除菌・除去する効果があり、臭いを完全に消臭する効果が得られるという表示をしていた。

景品表示法に基づき、行政庁から、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出されたが、その資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないとして、課徴金納付命令が課されました。

(5)ケース4

インターネットにより提供されていた就職支援サービスについて、
① 実際には、事業者が任意の方法で算定した特定の一時点における最も高い数値であったのにかかわらず、利用者の就職率は96%であるかのように示す表示をしていた。

② 実際には、紹介される就職案件には、人材派遣会社から派遣先企業に派遣されて業務に従事するものが含まれていたにもかかわらず、あたかも紹介される就職案件には、人材派遣会社から派遣先企業に派遣されて業務に従事するものは含まれていないかのように表示していた。

③ 実際には、事業者が有している求人情報は最大2000社程度であって2500社を下回るものではなかったにもかかわらず、あたかも2500社以上の求人情報の中から求職者に企業を紹介することができるかのように表示していた。

④ 実際には、採用面接を受けるには書類選考が必要な企業が含まれていたにもかかわらず、あたかも書類選考なしで紹介されるすべての企業の採用面接を受けることができるかのように表示していた。

→優良誤認表示にあたるとして、措置命令が課されました。

(6)ケース5

バストアップと痩身効果があるとするエステについて、実際には、事業者が提供するサービス及び他の事業者が提供するサービスを利用した者に対する調査はされず、また、当該調査において事業者の提供するサービスの施術満足度の順位は第1位ではなかったにもかかわらず、あたかも、提供するサービスが他の事業者が提供する同種又は類似のサービスの中で施術満足度第1位であるかのような表示をした。

→優良誤認表示にあたるとして、措置命令が課されました。

(7)ケース6

果物を使用したジュースについて、実際には、原材料の98%がぶどう、りんご及びバナナの果汁であり、メロンの果汁は2%程度しか使用されていなかったにもかかわらず、パッケージの正面、裏面及び側面にメロン丸ごと1個のイラストを載せ、あたからも商品の原材料の大部分がメロンの果汁であるかのように表示した。

→優良誤認表示にあたるとして、課徴金納付命令が課されました。

(8)ケース7

ロックバンドが行うコンサートについて、実際には、SS席(一般販売では最もグレードの高い席)を購入しても1階スタンド席となる場合があり、S席を購入しても主に1階スタンド席後方・バルコニー席又は2階スタンド席となる場合があり、A席を購入しても主に2階スタンド席後方のみであったにもかかわらず、あたかも、SS席を購入すれば1階アリーナ関、S席を購入すれば1階スタンド席、A席を購入すればバルコニー席又は2階スタンド席となるかのように表示していた。

→優良誤認表示にあたるとして、措置命令が課されました。

3 有利誤認表示

(1)有利誤認表示とは

有利誤認表示とは、商品やサービスの価格等に関して、実際のものよりも著しく有利であると表示したり、競合他社のものよりも著しく有利であると表示することをいいます。

わかりやすく言えば、商品・サービスの取引条件(価格など)に関する表示を対象としています。
具体的には、消費者が実施に支払う金額よりも安い金額を商品・サービスの価格として表示することや同一ではない商品の価格(高い価格)を併記することで安く見えるように表示することなどがあります。

(2)ケース1

海産物を販売する事業者が自社サイトにおいて、ある海産物について、「通常価格 ¥13,800 税込」、「販売価格 ¥9,980 税込」と表示していました。
しかし、実際は、「通常価格」と称する価格は、自社サイトにおいて販売されたことのないものであった。
→有利誤認表示にあたるとして、措置命令が課されました。

(3)ケース2

オンライン学習塾が提供するサービスについて、実際には、広告で表示されていた期限後に申し込んだ場合であっても、「返金保証」と称する制度又は「成績保証」と称する制度を利用できるものでした。
しかし、あたかも、広告で表示された期限までに入会を申し込んだ場合又は入会前の学習面談を受けた場合に限り、入会金及び4回分の授業料が返金される「返金保証」と称する制度又は通常授業1か月分と同時間分の追加授業を無料で受けられる「成績保証」と称する制度を利用できるかのように表示していました。
→有利誤認表示にあたるとして、措置命令が課されました。

4 おとり広告表示

(1)おとり広告表示とは

商品またはサービスを購入できるかのように表示しているものの、実際には、事業者が商品の処分権を有していなかったり、もともと販売する意思や予定がなかったりすることにより、消費者が表示された商品を購入できないにもかかわらず、購入できると誤認するような表示をいいます。

わかりやすく言えば、実際には提供しない、提供できない商品を提供するように表示することです。実際に提供される商品が存在しない点が優良誤認表示や有利誤認表示と異なります。

(2)おとり広告表示とされたケース

回転寿司チェーンが数種類の新商品について、それぞれキャンペーン期間を設けて当該期間中にそれぞれの商品を提供するかのような表示をしました。
しかし、実際は、事業者がキャンペーン期間中に本件商品の原材料が不足する可能性があると判断し、一定期間、全店舗の内相当数の店舗において本件商品を提供しなかった。
おとり広告表示にあたるとして、措置命令が課されました。

5 まとめ

以上見てきたように、景品表示法は一般消費者を対象とする表示等について様々な規制を設けています。
この規制に反しないためには、何が違反とされるのかということをよく理解した上で、表示についてよく検討することが重要です。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎
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