会社から解雇された場合、戸惑いや様々な感情でいっぱいになります。ですが、解雇された後にやるべき手続きはありますし、こうした手続きを行うことで得られるお金もあります。
ここでは、解雇された後にやるべきことや得られる金銭についてご案内します。

解雇されたらどうなる

会社から解雇された場合、解雇とは会社との雇用契約を終了することですから、会社に出勤することができなくなります。

会社に出勤できないということは、会社としては労働の利益を得ていないことになりますから、その対価たる給料の支払いも受けられなくなります。

また、会社は解雇した従業員について、健康保険や厚生年金の「被保険者資格喪失届」というものを提出しますから、これらの資格を失います。

解雇後にやるべき手続き

では、会社から解雇された際には、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。

解雇理由証明書の請求

まず、会社に対して解雇理由証明書の交付を求めるべきです。
解雇理由証明書とは、会社が従業員を解雇した理由が具体的に記載された書面であり、会社は、労働者側から請求されたときには、解雇理由証明書を交付する義務を負っています。

解雇理由証明書を求めることで、解雇を争うということになった場合、解雇が不当であるかどうかを判断できます。また、会社としては解雇理由証明書に記載されていない事項は解雇理由として主張することが困難になります。

そのため、解雇をされた場合には、まずは解雇理由証明書を請求するべきです。

年金と保険の切り替え

会社から解雇されると、被保険者資格を喪失することとなります。
会社が被保険者資格喪失届を提出すると、「資格喪失証明書」が会社のもとへ届きます。
通常、会社から「資格喪失届証明書」が解雇した労働者に対して送付されるので、これを市区町村へ提出して、国民健康保険へ加入する必要があります。

なお、会社から健康保険証の返還を求められることがありますが、今後解雇を争う意思があることを示した上で返還するのが良いと思われます。
健康保険証自体は、返還に応じないと被保険者証の無効が公示されることになりますし、資格の喪失は会社で行う以上、返還に応じない理由もありません。
しかし、何ら解雇について争う意思なく返還に応じると、解雇の決定に異議をとなえなかったと主張される恐れがありますので、解雇を争う意思を示しておくことが必要です。

ところで、解雇が不当であるならば、このような切り替え手続きなど必要ないのではないかとも考えられます。しかし、会社からの資格喪失届が年金事務所に送付されると、一度は受理されてしまうので、被保険者としての資格は、後に解雇を争ったとしても消滅します。
資格が喪失したまま会社の保険証を使用すると詐欺罪にあたるおそれもありますので、解雇を争うとしても、保険の切り替えについては行っておく必要があります。

会社への書類の交付請求

従業員を解雇した会社は、従業員に対して書類を交付するなどの義務を負います。先に述べた「資格喪失証明書」も従業員に対して交付する義務を負う書類です。
ですが、稀に会社が従業員に対する書類に送付を怠るようなケースもあります。
そこで、会社に対して労働者が求めておくべき書類をご案内致します。

離職票

会社が従業員を解雇した場合、会社がハローワークに離職証明書を提出すると、ハローワークが「離職票」を発行します。
ハローワークから離職票が発行されたのち、会社は従業員に対して離職票を送付するのが通常の流れとなっています。

ですが、会社が離職票を労働者に送付する期限について法律上の期限はありません。そのため、会社に対して離職票を送付するよう連絡することが良いと考えられます。

離職票がないと、後述する失業保険をもらうことができないため、離職票を会社からもらうことは必須です。

源泉徴収票

源泉徴収票とは、1年間の収入と納めた所得税を記載した書面のことを言いますが、会社は、通常、解雇した従業員に対して源泉徴収票を送付します。

源泉徴収票は、様々な場面で用いることが考えられる書面です。ですので、解雇された場合、源泉徴収票を送付するよう会社に対して連絡することが良いと考えられます。

会社へ就労の意思を示す

解雇されたら会社から賃金は支払われなくなりますが、解雇が不当な場合には、その後の賃金を請求できる可能性があります。

しかし、解雇が不当であったとしても、その後の賃金が支払われるためには労働者が就労の意思を有していることが前提となります。

ですので、会社に対して解雇された後も働く意思があるということを示しておく必要があります。
とはいえ、解雇がされた以上、現実に出社することは難しいと思われます。そのため、会社に対して、解雇日以降の業務の具体的内容の指示をお願いしたり、場合によっては、「働きたいのだが、解雇を宣告された以上出社できない」ということを記載した通知書などを内容証明郵便で送ることも考えられます。

解雇の撤回を求める

労働者が解雇された後に、解雇に対して何らの意義も述べないでいると、解雇を承認したものとされ、解雇を争うことが難しくなることがあります。
あるいは、解雇の撤回を求めて交渉を行うことで、解雇が撤回され、雇用契約が継続される可能性もあります。

そこで、解雇に不満がある場合には、まずは会社に対して解雇の撤回を求めることが必要です。解雇の撤回を求める際には、口頭での証拠に残らない方法ではなく、書面を通知したりメールを送信したりなどの証拠に残る形で求めることが重要です。

解雇後に得られるお金

解雇されることで労働者が被る不利益は計り知れません。
ですが、解雇されたことでもらえるお金もあります。

解雇予告手当

従業員を解雇する際には、会社は従業員の不利益を緩和するために解雇から30日以上前に予告する義務を負っています。

この予告期間が不足する場合には、その日数分の解雇予告手当を支払うという決まりになっています。ですので、例えば即日解雇されたというような場合であれば、30日分の解雇予告手当を支払う必要がありますし、解雇予告が10日前にあったという場合であれば、20日分の解雇予告手当を支払う必要があるのです。

そのため、自身がいつ解雇予告をされたかということを確認したうえで、会社に対して解雇予告手当を請求するということが考えられます。

失業保険

解雇された場合に得られる最も重要なお金として失業保険があります。これは、雇用保険に加入している場合であり、一定の条件を満たした方がもらえるお金となっています。

具体的には、ハローワークで求職の申込みを行い、積極的に転職活動をしており、雇用保険の被保険者期間が一定期間を超える場合にもらえます。

失業保険を受けとるためには、ハローワークに離職票を提出し、求職の申込みをする必要があります。その後、雇用保険説明会などを経て、失業の認定を受けて初めて失業保険を受給できるという流れになっています。

失業保険では、おおむね離職前の給与一日当たりの50~80%の額に、雇用保険の被保険者だった期間に応じて決められた給付日数分の額を受給することができます。
給付日数は、雇用保険の被保険者であった期間や、解雇理由によっても異なりますが、90日~120日となるケースが多いようです。

退職金

解雇された場合であっても、会社から退職することには変わりありません。会社から退職金がもらえる可能性があります。

ですが、退職金は法律上、支払うことを義務付けられているものではありません。会社の就業規則や退職金規定などを確認して、退職金を支払うという会社の決まりになっているか確認する必要があります。

なお、会社に規定で明確に退職金を支払うという決まりがなかったとしても、退職金が支払われている慣行があるなどの場合には、退職金の支払いが認められる可能性がありますので、こうした慣行の有無についても確認すると良いと思われます。

未払い賃金

会社から解雇された時点で、残業代など未払いの賃金があるなら、それも会社に対して請求することができます。働いた分については、支払いを求める権利がありますので、残業代などの未払いがあると疑われる場合には、残業をしたことを示す資料など、証拠関係についても整えるとよいです。

ですが、残業代について請求できる期間に期限があります。残業代の請求は過去3年分までしかすることができません(2020年4月の法改正により2年の時効期間が3年に延長されました)。これを消滅時効といい、基本的に3年が経過すると、そのときから3年前の月の残業代が消滅してしまうのです。

ですから、残業代を含めた未払い賃金があると疑われる場合、なるべく早めに行動に移すことが重要です。

解雇後の賃金

仮に解雇が不当解雇であり無効であると判断されれば、解雇後の給料を請求することができます。本来ならば、実際に働いた分しか給料を請求することはできないのですが、不当に解雇がなされた場合、働けなくなった原因は会社にあります。

このように、解雇が不当解雇であると認められた場合には、解雇された日からの給料を請求することができます。

慰謝料

解雇は、労働契約を一方的に終了させるもので、不法行為に該当する可能性があります。そのため、解雇が不当であり、それにより精神的苦痛を被った場合には、不法行為に該当するとして、慰謝料を会社に対して請求できることがあります。

不法行為に該当するのは、①解雇が不当であること②解雇が著しく社会的相当性に欠けること③会社側に故意・過失があること④労働者に特段の精神的苦痛が生じていることの要件を満たした場合です。

解雇がこれらの要件に該当して不法行為にあたるということは、労働者の側で証明しなくてはなりません。そのハードルは決して低いものではありませんが、例えばパワハラの末、強制的に解雇されたなどの場合には、解雇による慰謝料請求が認められることもあります。

解雇の有効性を争う方法

会社による解雇が不当なものであるとして争うためには、会社と交渉をする、労働審判を申し立てる、訴訟提起をする、などの方法が考えられます。

いずれの方法をとるにしても、解雇事由が不当であるということを示す証拠を整理しておく必要があります。

まとめ

ここまで、会社から解雇されたときの手続きや得られる金銭についてご案内しました。
解雇された直後は、特に精神的な負担が大きいものです。
ですが、やるべきことはたくさんあります。特に解雇の効力を争うといった場合になると、会社との連絡など精神的にさらに大きなストレスがかかります。
会社からの解雇についてお悩みの方は、一度弁護士に相談していただけますと幸いです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭
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