交通事故で頭部を強打すると、一時的にまたは場合によっては永続的に意識不明状態になってしまうことがあります。特に、自転車や徒歩の状態で衝突されると、頭部がむきだしなので意識不明の重体になる確率が高まります。
意識不明となった場合、高次脳機能障害の後遺症が残るケースもあるので、それらに関連したことを解説します。

交通事故の意識不明について

交通事故で、頭を強打した場合は、「意識不明」になることがあります。
それでは、意識不明とはなんでしょうか。

よく、「意識不明の重体」などとニュースででますね。

辞書によると、「意識を失った状態。自分が何をしているか、また、どういう状態にあるかわからないこと。また、そのさま。前後不覚」という説明がなされています。

医学的には、きちんと覚醒している状態で、かつ自分自身と周りの事を認識できている状態を「意識清明」といいます。
「意識障害」とは、意識清明ではない状態のことを指しており、自分自身と周りの認識をするにあたって、障害があることを指します。つまり、意識が混濁し、外側からの刺激や呼び掛けに無反応であったり、状況を正しく認識できなかったりする状態のことです。

「意識不明」は、そのレベルの一つで、全く意識がない、いわゆる失神状態であると言えます。

意識不明の段階について

意識障害の症状は、軽度のものから、傾眠(けいみん)、昏迷(こんめい)、半昏睡(はんこんすい)、昏睡(こんすい)に区分されます。

・傾眠:刺激を与えたり呼びかけたりすることで意識が覚醒するが、放置すれば眠る状態のこと。
・昏迷:強い刺激でないと覚醒しない状態のこと。中程度の意識障害である。
・半昏睡:強い痛み刺激にのみ顔や手足が反応する。
・昏睡:外部からの刺激に完全に反応しない状態のこと。

意識不明で交通事故後遺症が残るのか

交通事故で一時的に意識不明になっても、数時間で意識が戻ることもあります。
しかし、一時的にでも意識不明に陥るほど頭部を強打したので、危険であることに変わりはありません。事故直後は、すぐに検査することと、直後でなくても脳出血が後から散見されることもあるので、定期的な通院はかかせないと言えます。

経験上、頭を強打しても、60%程度の方は、後遺症が残らないという方を見ていますが、40%程度の方は、なんらかの後遺症に悩まされています。
例えば、めまい、記憶障害、性格が変わった等で、ひどい場合は、半身麻痺・全身麻痺・意識が戻らずという事もありました。

意識不明になったとしても、幸い意識が戻ることもあります。しかし、脳損傷は回復が難しく、意識不明の状態が6時間以上続くと、たとえ意識が回復したとしても後遺障害が残る可能性があります。

また、目立つ外傷がない場合は外見上では回復したように見えるため、被害者家族は交通事故による意識不明が原因で後遺障害が発症していると気づかないケースも多くあります。いわゆる、遷延性意識障害(植物状態)です。
総じて、高次脳機能障害とも言います。

交通事故被害者が意識不明の場合は誰が加害者(保険会社)と交渉すれば良いか

当然、意識不明の方は、自ら加害者や保険会社に対して保険金の請求をすることができません。
大体の場合は、まずは、被害者の代わりにご家族が保険会社と交渉することになります。

ただし、ご家族が、「示談」をすることができるかというと、そのままでは示談ができません。
なぜなら、意識不明といえども、個人の権利(損害賠償の権利)を、家族が勝手に使うことはできないからです。
その場合は、成年後見制度を使うことになります。

成年後見制度は、こちらで詳しく解説しています。

交通事故と成年後見

■「交通事故で遷延性意識障害となり、意識がもどらない」
■「保険会社から示談をするためには成年後見人をつける必要があると言われた」

保険会社と示談をするためには、一定の判断能力が必要となります。しかし、ご本人の意識がないため(あっても意思を表明できない)、いつまでも示談ができない事になってしまいます。弁護士を代理人にしようとしても、本人が弁護士とも契約ができない状態です。

なお、被害者が未成年の方であれば,ご両親が法定代理人として示談を行うことができます。
問題は、被害者が成年者の場合です。この場合、ご両親が被害者を代理して示談交渉を行うことはできません。
このような場合には、『成年後見』という制度を活用することができます。
当事務所では成年後見手続きのお手伝いもしております。

■成年後見制度とは

本人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合に、家庭裁判所が本人の代理人(後見人)を選び、本人の財産等を法律的に保護しようという手続きです。
したがって、示談交渉や裁判をするためには、まず、家庭裁判所から「成年後見人」を選任してもらった上で、成年後見人に示談交渉や裁判(ほかに、弁護士への依頼等)をしてもらう必要があります。

成年後見の申立には、各種申立書類(申立書、申立事情説明書、親族関係図、財産目録及びその疎明資料、本人の収支報告書及びその疎明資料、後見人等候補者事情説明書、戸籍謄本、住民票等)が必要となります。
また、申立て後には、裁判所での面接も実施されることがほとんどです。
このように、様々な書類を用意したり、裁判所に提出する文書を作成しなければなりません。ご本人やご家族の負担は大きいと思います。

当事務所では、書類の取り付けや面接への同行等、成年後見申立について、全面的にお手伝いを致します。

■成年後見人に選ばれるのは誰か?

最終的には家庭裁判所が決めることになりますが、申立て時には、候補者を届け出ることができます。通常は、ご本人に近いご親族が多いかと思います。
また、成年後見人に選ばれると、財産報告や定期報告等の義務が生じるので、ある程度は負担になってしまいます。そのようなときは、当事務所弁護士が、成年後見人の候補者となることもできます。
ご親族同士に争いがある場合は、第三者である弁護士を候補者とするか、裁判所に別の弁護士を選んでもらうことになります。

被害者が未成年の場合を除き、家族が代理で保険会社と交渉するためには「代理権」を授与する「成年後見人」を家族の誰かに選任する必要があります。

★参考ページ

https://www.courts.go.jp/saitama/saiban/tetuzuki/kouken/index.html

意識不明と高次脳機能障害について

交通事故に遭い、頭を強く打った場合、後遺障害として、「高次脳機能障害」と呼ばれる様々な障害が残ることがあります。
最近では、高次脳機能障害という言葉も広く浸透してきて、インターネットで探せば情報がたくさんでてきます。
高次脳機能障害とはどのような症状かというと、以下のような症状が重なっておきることを指します。

①記憶障害

・物の置き場所を忘れる。
・新しいできごとを覚えられない。
・同じことを繰り返し質問する。

②注意障害

・ぼんやりしていて、ミスが多い。
・ふたつのことを同時に行うと混乱する。
・作業を長く続けられない。

③遂行機能障害

・自分で計画を立ててものごとを実行することができない。
・人に指示してもらわないと何もできない。
・約束の時間に間に合わない。

④社会的行動障害

・興奮する、暴力を振るう。
・思い通りにならないと、大声を出す。
・自己中心的になる。

この症状により、日常生活または社会生活に制約がでてくる状態が「高次脳機能障害」と言われる後遺障害です。

意識不明と後遺障害等級との関係について

交通事故に遭って、高次脳機能障害が残った場合は、後遺障害の何級に該当するでしょうか。

自賠責保険が認定する後遺障害は、1級から14級まであります。高次脳機能障害は、症状の重さによって、このうちのいくつの級にわかれています。

どういった症状が、どれくらい重いかは、医学的なテストなどで判断します。その結果を参照して、自賠責で等級を判断することになります。
(事故の大きさや、初期症状等も重要です)

こちらのページで詳しく解説しております。

高次脳機能障害について2(後遺障害等級について)

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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