弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 池田味佐

夫が生活費をくれないし、私が働いたお金を全部もっていってしまうとお悩みの場合、場合によっては、経済的なDVを受けているかもしれません。経済的DVとは何か、離婚との問題について考えてみます。

経済的DVと離婚

1 経済的DVとは

DV(ドメスティック・バイオレンス)は,一般的に「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」と理解されています。

「暴力」という言葉からは身体的な暴力がイメージされますが,DVには身体的な暴力だけでなく精神的(心理的)・性的な暴力も含まれると考えられています。

内閣府男女共同参画局のホームページでも、DVを身体的・精神的・性的な暴力に分類しており、この精神的な暴力の一類型として「経済的な」暴力に位置付けているようです。

また,男女共同参画局では,平成11年以降,3年おきに男女間における暴力における調査を実施しているところ、平成26年からは,暴力の類型に,身体的暴力・心理的攻撃・性的強要とともに経済的圧迫を追加して調査を実施しています。

このような社会的認識の変化は,経済的DVもまた身体的DVと同様に,家庭内などの閉じた環境下における優位性を利用して,立場の弱い者を支配するという性質を持っていることが認識されてきたからといえるでしょう。

調査報告によれば,約5%〜7%の方が経済的な圧迫を経験しており,特に女性に限定するとより高い割合となっています。

令和2年の調査結果では、女性は、5.2%の人が何度もあったと回答をし、4.8%の人が1、2度あったと回答しています。

2 経済的DVとはどんな行為?

では,具体的に経済的DVとはどういった行為を指すのでしょうか。
たとえば,
 ・ギャンブルなどでお金を使い込む
 ・配偶者に生活能力がないにもかかわらず生活費を渡さない
 ・配偶者の財産を奪ったり,勝手に使う

といったイメージしやすいものだけでなく,

 ・配偶者に仕事をさせない,または退職を強要するなど,経済的な自立を妨害する
 ・お金の使い道を勝手に決められる
 ・お金の使い道について暴言を受ける
 ・お金の使い道を過剰に監視されたり制限される
 ・お小遣いなどの処分可能な財産を与えない
 ・お金について知らせない,またはアクセスさせない

といった行為も,夫婦間で立場の弱い一方を支配する行為であり,経済的DVに含まれると考えられます。

具体例からもわかるように,経済的DVは,身体的DVのように「見える」形での悲惨さ・深刻さはなくとも,支配によって被害者の自立を奪うという点で同様の性質を有しているといえます。

このような状況になっていないか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

3 経済的DVとはいえない場合もある

経済的DVに該当する行為としては、先ほど示した行為がありますが、生活費を渡さないことが必ずしも経済的DVにあたるわけではありません。

例えば、生活費を十分に渡してくれないとしても、子供の将来のため・夫婦の老後のために貯金をすることを約束していたり、急にリストラにあって生活費を渡すことが困難になった場合など、生活費を渡さないことに合理的な理由があるような場合です。

また、例えば、妻は家にいるべきで仕事はするなとして、仕事を辞めさせられたとしても、その代わりに毎月家計に十分な生活費を渡しているような場合など、経済的に圧迫するとはいえないような場合(但し、別途精神的DVに該当する可能性などはあります。)

4 経済的DVを理由とする離婚

では,これまで述べたような経済的DVを理由として離婚訴訟を提起した場合,裁判所は離婚を認めるのでしょうか。

この点について,民法770条1項は,法定離婚事由を定めています。
 ①「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
 ②「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
 ③「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
 ④「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
 ⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)

経済的DVと関係するものとして,②悪意の遺棄,⑤婚姻を継続しがたい重大な事由を挙げることができます。

「悪意の遺棄」とは,夫婦の共同生活を否定する意図のもとで、夫婦が互いに負っている同居義務・協力義務・扶助義務に正当な理由なく違反することをいいます。

先に挙げた例の中でも,共同生活を顧みずギャンブルにのめり込んで生活費を使い果たしてしまう場合や,配偶者に生活能力がないにもかかわらず一切の生活費を渡さないような場合には,「悪意の遺棄」に該当することがあり得ます。

他方,「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは,一般に,婚姻関係が深刻に破綻しており,婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合を意味します。

これは,第三者の目から客観的に見ても,その者の立場になれば誰しも離婚を求めるに違いないと思われる場合といいかえることもできます。

配偶者の経済的な自立を妨害したり,お金の使い道の過剰な監視や制限を受けているといった場合には,これらの事情のみならず婚姻関係のあらゆる事情から客観的に「婚姻を継続しがたい重大な事由」があることを主張し立証していく必要があります。

5 離婚をするためには?

経済的DVをする夫は、経済的な圧迫を加えることで、妻を支配することを目的としており、妻が離婚を求めても、なかなか応じてくれないというケースもあります。

そのためには、夫が経済的に圧迫をしているということの証拠を集めておく必要があります。

経済的に圧迫をしていたことを示す日記やSNSでのやりとり、通帳の履歴、家計簿、相手の発言を録音したものなどが例としてあげられると思います。

また、離婚をする前に別居をするといった場合には、婚姻費用の請求をすることができます。お子様がいる場合には、親権を取得した側が養育費の請求をすることもできます。

6 まとめ

経済的DVが長期化すればするほど,離婚後の生活への不安から離婚を断念したり,実際に離婚後に経済的自立が困難となるといった弊害も生じかねません。

配偶者の離婚に向けた経済的独立のための行動や別居生活を始めること自体が難しくなるなど,経済的DVの長期化はそれ自体が離婚を困難にし,より一層支配を強める結果となりえます。

「何かおかしい」と思った際は,配偶者暴力支援センターなどの専門機関や弁護士などの専門家に相談してください。

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