労災による傷病が治った後でも労災保険のアフターケア制度を使えば病院で診察や検査を受けられる場合があります。このコラムでは、労災のアフターケア制度について弁護士がわかりやすく解説します。

1 労災のアフターケア制度とは?

労災には、アフターケア制度が存在します。

このアフターケア制度とは、労災による傷病が治った後、必要に応じて、労災保険の指定医療機関において、診察や検査、指導などといったアフターケアを受けられるという制度です。

傷病が再発したり、後遺症による新たな症状が発生したりすることを防止し、労災にあった労働者の社会生活をサポートするための制度です。

ただし、労災によるすべての傷病について、アフターケアが受けられるわけではありません。
アフターケアの対象となる傷病は決められた20種で、さらに障害等級の規定も設けられています。これについては、以下でご説明いたします。

2 労災のアフターケアの対象となる傷病

それでは、アフターケア制度の対象となるのはどのような場合か、みていきましょう。
アフターケア制度を受けることができる条件として、20個の傷病が決められています。
具体的な傷病名と対象となる条件については以下のようになっています。

(1)せき髄損傷

• 脊椎損傷者で障害等級第3級以上の障害給付を受けている方や受けると見込まれる方で医学的に早期にアフターケアの実施が必要と認められた方
• 障害等級第4級以下の障害給付を受けている方であっても医学的に特に必要と認められた方

(2)頭頸部外傷症候群等

• 頭頸部外傷症候群/頸肩腕障害/腰痛にり患し、障害等級第9級以上の障害給付を受けている方や受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 障害等級第10級以下の障害給付を受けている方であっても医学的に特に必要があると認められている方

(3)尿路系障害

尿道狭さくの障害を残す方又は尿路変向術を受けた方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(4)慢性肝炎

ウイルス肝炎にり患した方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(5)眼疾患

• 白内障、緑内障、網膜剥離、角膜疾患、眼瞼内反等の眼疾患の傷病者で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 障害給付を受けていない方であっても医学的に特に必要があると認められる方

(6)振動障害

振動障害の傷病者で障害補償給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(7)大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折

• 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折の傷病者で障害給付を受けている方又は受けると見込まれている方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要と認められる方
• 障害給付を受けていない方で医学的に特に必要があると認められる方

(8)人工関節・人工骨頭置換

人工関節・人工骨頭を置換し障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方で医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(9)慢性化膿性骨髄炎

骨折等により化膿性骨髄炎を併発し、引続き慢性化膿性骨髄炎に移行した方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方で医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(10)虚血性心疾患等

• 虚血性心疾患にり患した方
•虚血性心疾患にり患した方で障害等級第9級以上の障害補償給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 障害等級第10級以下の障害補償給付を受けている方で医学的に特に必要があると認められる方
• ペースメーカー・除細動器を植え込んだ方
• ペースメーカー・除細動器を植え込んだ方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(11)尿路系腫瘍

尿路系腫瘍にり患し療養補償給付を受けている方でこの尿路系腫瘍が症状固定したと認められる方で医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(12)脳の器質性障害

• 外傷による脳の器質的損傷/一酸化炭素中毒/減圧症/脳血管疾患/有機溶剤中毒等に由来する脳の器質性障害が残存した方で障害等級第9級以上の障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要と認められる方
• 障害等級第10級以下の障害給付を受けている方であっても医学的に特に必要があると認められる方

(13)外傷による末梢神経損傷

外傷により末梢神経損傷に起因し症状固定後も激しい疼痛が残存する方で障害等級第12級以上の障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(14)熱傷

熱傷の傷病者で障害等級第12級以上の障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(15)サリン中毒

いわゆる「地下鉄サリン事件」によりサリンに中毒した方で療養補償給付を受けてサリン中毒が症状固定した方のうち、以下のような後遺障害によって医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 縮瞳、視覚障害等の眼に関連する障害
• 筋萎縮、筋力低下、感覚障害等の末梢神経障害及び筋障害
• 記憶力の低下、脳波の異常等の中枢神経障害
• 心的外傷後ストレス障害

(16)精神障害

業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症した方で療養補償給付を受けて症状固定した方のうち、以下のような後遺症状によって医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 気分の障害(抑うつ、不安等)
• 意欲の障害(低下等)
• 慢性化した幻覚性の障害又は慢性化した妄想性の障害
• 記憶の障害又は知的能力の障害

(17)循環器障害

• 心臓弁を損傷/心膜の病変の障害/人工弁に置換した方
障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
• 人工血管に置換した方
人工血管に置換した方で症状固定し医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(18)呼吸機能障害

呼吸機能障害を残す方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(19)消化器障害

消化吸収障害等を残す方又は消化器ストマを造設し方で障害給付を受けている方又は受けると見込まれる方のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

(20)炭鉱災害による一酸化炭素中毒

炭鉱災害による一酸化炭素中毒について療養補償給付を受けて症状固定した方で医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

3 アフターケアを受けるための手続

(1)申請と健康管理手帳の交付

アフターケア制度を受けるためには、まず、所属事業場を管轄する都道府県の労働局に申請を行い、審査を受ける必要があります。申請は治療が終わった翌日から可能ですが、いつでも申請できるいくつかの傷病を除き、対象となるケガや病気ごとに、治った日の翌日から起算して2年間または3年間の申請期限が設けられているので注意が必要です。
審査が通ると「健康管理手帳」が交付され、労災保険指定医療機関において診察、保健指導、処置、検査など、定めた範囲内で無料のアフターケアを受けることが可能になります。審査が通らずに健康管理手帳が交付されなかった場合は、改めて厚生労働大臣に対して審査請求をすることができます。

(2)受診

受診の際には、その都度、労災保険指定医療機関の窓口で健康管理手帳を提示し、受診結果を記入してもらう必要があります。健康管理手帳の提示がない場合は、受診することができません。

(3)健康管理手帳の期限

健康管理手帳には、有効期限が設けられています。新規の場合は、対象となるケガや病気ごとに2年間または3年間となっており、一部の傷病を除いて更新することも可能です。
更新を希望する場合には、有効期限の1ヶ月前までに手続きを行う必要があります。手続きの際には医師の診断書の提出を求められるものもあるので、あらかじめ確認しておくと安心です。
更新手続きを行うと、新規で申請したときと同様に労働局による審査があります。審査の結果、新しい手帳が不交付となった場合には、厚生労働大臣に対して審査請求をすることできます。
更新後の手帳の有効期限は、ケガや病気ごとにそれぞれ異なるので注意してください。

4 アフターケアに関する通院費も請求できます。

下記の要件のいずれかに当てはまる場合、通院費の支給を受けることができます。

1. 自宅または勤務先から、鉄道、バス、自家用車などを利用して片道2キロメートル以上、4キロメートル以内にある病院のうち、アフターケアを受けることができる病院へ通院するとき

2. 片道2キロメートル未満であっても、ケガや病気の状態から鉄道、バス、自家用車などを利用しなければ通院することができないとき

3. 自宅または勤務先から、おおよそ4キロメートル以内にアフターケアを受けることができる病院がないため、4キロメートルを超える最寄りのアフターケアを受けることができる病院へ通院するとき

通院費の支給を受ける場合には、アフターケア通院費支給申請書と併せて領収書などの通院費の額を証明する書類の提出も求められるので、忘れずに入手しておく必要があります。

5 まとめ

以上みてきたように、労災には手厚いアフターケア制度があります。
もっとも、全ての傷病が対象になるわけではありませんし、いつまでも請求できるわけではありませんので、適切な方法・適切な時期に申請を行うことが大切です。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎
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