1 前職調査をした場合
前職調査とは、従業員を採用するときに、応募者の過去の勤務態度に問題がなかったか、なぜ退職したのかなどについて、以前の勤務先に問い合わせることを言います。

以前は電話などで問い合わせることも行われていたようですが、現在では個人情報保護法も制定され、個人情報の扱いには慎重になっているので、原則として前職調査をすることはできません。

前職調査をする場合は、本人から同意書を取り、本人の同意の下で行わなければなりません。また、その場合でも、⑴社会的身分や出生地など社会的差別の原因となるおそれのあること、⑵思想及び信仰、⑶労働組合への加入状況といった個人情報については、調査をすべきではありません。

2 前職調査に応じた場合
前職調査に応じて、以前の勤務先が元従業員の情報を開示することも違法になります(本人の同意書がある場合は別です)。開示してしまえば、情報を開示された元従業員から、開示した者に対して慰謝料請求がされることもあり得ます。

また、民法では使用者責任といって、ある事業のために他人を使用する者(会社など)は、従業員がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。

ある従業員が、前職調査に応じて、元従業員のプライバシーを侵害した場合、その行為が会社の事業の執行について行われた場合には、その従業員と並んで会社が慰謝料支払い義務を負うこともあり得ます。

事業の執行とは何を言うのかが問題ですが、たとえば人事に関する管理職が前職調査に応じた場合、事業の執行にあたる可能性もあります。