1 上司からセクハラ・パワハラを受けたという女性社員からの訴えがあり、話を聞いたところ、その可能性があると判断されたので、当面、その上司について給料を支払わず、自宅待機処分にしたいというような場合があります。このような場合、自宅待機処分にすることが許されるでしょうか。また、その間、無給とすることができるでしょうか。

2 セクハラ・パワハラをしたことがはっきりすれば、懲戒処分として出勤停止処分にすることも考えられますが、まだ、調査の段階ですから懲戒処分を課すのは早すぎます。
しかし、業務命令としての自宅待機処分であれば、仮に就業規則に自宅待機処分の規定がなくても、正当な理由があるときには許されるとされています。
ただ、自宅待機処分にした場合、会社の命令によって勤務できなくなるということから、給料を支払うのが原則ではあります。

3 この点、懲戒処分を決定するための調査や審議のために時間を要し、その間、就業を制限しないと、不正行為が再発したり、証拠隠滅の恐れがあるというような場合は、賃金を支払わずに、自宅待機処分にすることが許されると考えられています。

4 今回の場合、懲戒するかどうかの決定に時間を要するでしょうし、その間、さらにセクハラ・パワハラが発生したり、この上司が証拠隠滅のために口止めをするなどのことが考えられますから、無給の自宅待機処分も許されると考えられます。

5 ただ、いつまでも無給の自宅待機処分にしておくことが許されるということではなく、セクハラ・パワハラの事実があったのかどうかの調査、懲戒処分を課すかどうかの審議に必要な期間に限って許されるというべきであり、本人が自主的に退職することを強く促すために、何ヶ月も自宅待機処分にしておくというようなことは許されません。

6 なお、自宅待機処分にしている間に、本人から有給休暇を取得したいという申し出があった場合、これを許すべきでしょうか。
有給休暇とは、労働契約上、労働の義務のある日について、その労働の義務を免除する制度であり、自宅待機を命じられている期間は、労働者には労働の義務がないので、有給休暇の申請は受け付けないということでよいと思います。