(1) 今回は、「ショッピングセンター内で、足を滑らせて転倒し障害を負ったとして、ショッピングセンターの運営会社に対し、損害賠償等を請求した事案」(岡山地裁平成25年3月14日判決)をご紹介致します。

(2) 事案の概要
■X(70代)は、Yの運営するショッピングセンター内アイスクリーム売場前通路において、ショッピングカートを押して歩行中、アイスクリームが床に落ちてそのまま放置されていたため、これに左足を滑らせ転倒し、大腿骨や腰椎を骨折した。
■Xが事故当時履いていた靴は、特に滑りやすい状態ではない
■事故当日は、アイスクリームが値引販売され、多数の客が集まっていた。

(3) 判決の内容
① ショッピングセンターは、年齢、性別等が異なる不特定多数の顧客に店舗側の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択、購入させて利益を上げることを目的としているので、信義則上の義務として、不特定多数の人の通常考えられ得る履物、行動等を前提として、その安全を図る義務がある。
② アイスクリームを購入した顧客がその一部を落とし、床面が滑りやすくなることは容易に予想される。当日は、値引販売により多数の顧客が売場を訪れることが予想される。そうすると、売場付近に十分な飲食スペースを設けたり、清掃業者による清掃時間を延長したりして、売場付近の通路の床面にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき義務がある。
③ Xとしても、足元への注意を払うべき義務を怠った過失がある(過失割合は20%)。

(4) 一言
店舗等を運営する企業としては、幼児や高齢者など多様な客が来ることを前提に、想定されるあらゆる可能性を考え、事故が発生しないような安全対策をとっておく必要があるということです。企業にとっては厳しい判決ですが、安全対策を怠ると、損害賠償責任を負ったり、社会的非難の対象となってしまいます。