
「借金が大幅に減額される」・「マイホームを残したまま手続きができる」など、多重債務に苦しむ方にとって非常にメリットの大きい債務整理の手続きが「個人再生」です。
しかし、長年同じ会社に勤めている正社員の方など、一定のキャリアを持つ会社員が個人再生を申し立てる際、「退職金」が原因で毎月の返済額が想定以上に跳ね上がってしまうという思わぬ落とし穴が存在します。
「今はまだ会社を辞めるつもりはないのに、なぜ退職金が関係するの?」 、「弁護士のシミュレーションを見たら、思っていたより借金が減らなかった……」
本コラムでは、「退職金が個人再生の返済額を跳ね上げる仕組み」について、具体的な計算シミュレーションや、そして返済額が上がってしまった場合の対策までを徹底解説します。
なぜ「まだ受け取っていない退職金」が財産扱いになるのか?

個人再生には、法律で定められた「清算価値保障の原則」という絶対的なルールがあります。
これは、「個人再生で減額された後の借金(返済額)は、申立人が現在持っている全財産の合計額(清算価値)を上回らなければならない」というルールです。
簡単に言えば、「もし今、自己破産をして財産をすべて換価(現金化)して債権者に配当した場合の金額よりも、個人再生で分割して返済していく金額の方が多くなければ、債権者は納得しない(だから手続きを認めない)」という考え方です。
ここで問題になるのが、預貯金や車、保険の解約返戻金といった目に見える財産だけでなく、「将来受け取る予定の退職金」も現在の財産(清算価値)としてカウントされてしまうという点です。
法的には、退職金は「賃金の後払い」という性質を持つと解釈されています。
そのため、現時点で手元に現金がなくても、「今すぐ自己破産(または退職)したと仮定すれば、これだけのお金が入ってくるはずだ」という潜在的な財産として評価されてしまうのです。
退職金が「清算価値」に組み込まれる割合(8分の1・4分の1)

とはいえ、将来もらえるはずの退職金を、今すぐ全額現金として用意できるわけではありません。
また、将来会社が倒産したり、懲戒解雇になったりして、満額受け取れないリスクもあります。
そのため、裁判所は、退職までの期間に応じて、以下の割合で計算した金額のみを清算価値(手元の財産)として計上します。
① 今後も働き続ける場合(原則として退職予定がない場合)
→退職金見込額の【 8分の1(12.5%)】
これが最も多いケースです。
たとえば、「今すぐ自己自主退職したと仮定して計算した退職金」が800万円の場合、その8分の1である「100万円」があなたの現在の財産としてカウントされます。
② 近い将来、退職することが決まっている場合(数ヶ月以内など)
→退職金見込額の【 4分の1(25%)】
すでに退職日が決まっている、あるいは定年退職が間近に迫っている場合など、退職金を受け取る確実性が高い場合は、割合が上がり4分の1となります。
見込額が800万円なら、財産評価は「200万円」です。
③ すでに退職金を受け取っている場合
⇒ 手元に残っている残額の【 全額(100%)】
すでに退職金が銀行口座に振り込まれている場合は、単なる「現金・預貯金」として扱われるため、手元に残っている金額の全額(100%)がそのまま清算価値に計上されます。
会社にバレる?「退職金見込額証明書」の取得方法と注意点

個人再生を申し立てる際、裁判所に対して退職金の額を証明する書類を提出しなければなりません。
一般的には、会社に「退職金見込額証明書」を発行してもらう必要があります。
ここで多くの方が、「会社に証明書の発行を頼んだら、借金や個人再生のことがバレるのではないか?」と不安に思われます。
どうしても会社に発行を依頼しづらい場合や、会社が発行してくれない場合は、会社の「就業規則」や「退職金規程」のコピーを用意できれば、弁護士が規定の計算式に当てはめて見込額を計算・作成し、裁判所に提出することも可能です。
無理に会社へ不自然な嘘をつく必要はありませんので、まずは弁護士にご相談ください。
※【重要】財産にカウントされない退職金もある!
実は、すべての退職金が清算価値に計上されるわけではありません。法律上、差し押さえが禁止されている以下の制度を利用した退職金(年金)は、「清算価値の計算から除外(ゼロ円として扱う)」ことができます。
- 確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)
- 中小企業退職金共済(中退共) など
もしご自身の会社の退職金制度がこれらの共済や確定拠出年金を利用したものであれば、いくら高額であっても返済額が跳ね上がることはありません。ご自身の会社の制度がどれに該当するのか、就業規則などをよく確認してみましょう。
退職金で返済額が上がってしまった場合の「対策」

万が一、退職金の計算(8分の1)によって返済額が上がってしまい、原則である「3年間(36ヶ月)」での支払いが厳しくなってしまった場合でも、諦める必要はありません。
個人再生では、特別な事情(返済額が高額になり3年では生活が苦しくなる等)が裁判所に認められれば、返済期間を「最長5年間(60ヶ月)」まで延長することが可能です。
期間を延ばすことで月々の負担を大幅に下げ、無理なく完済を目指すことができます。
また、どうしても清算価値が高額になりすぎて個人再生のメリットが薄れてしまう場合には、最終手段として「自己破産(※一定の財産は手放すことになりますが、借金はゼロになります)」を選択する方が結果的に立ち直りが早いケースもあります。
まとめ

個人再生において、退職金は「まだ手元にないのに、借金の減額幅を左右する」という性質を持っています。
ご自身で「借金が5分の1になるはずだ」と思い込んで手続きを進めると、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
まずは一人で悩まずに、個人再生の実績が豊富な当事務所まで無料相談をご利用ください。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 安田伸一朗
債務整理
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和4年の弁護士登録以来、債務整理・借金問題の解決に特化し、自己破産、個人再生など、多重債務に苦しむ依頼者の生活再建に向けて数々の解決事例あり。最新の法制度に基づいた緻密な戦略と丁寧なヒアリングで、生活再建や早期の根本解決へと導くことに注力。






