近年、インターネット環境の発展やスマートフォンの普及、さらにはSNSを通じた情報伝達の加速により、国境を越えた電子商取引(越境EC)が日常的なものとなりました。その中でも、ヘルスケアや美容領域における「海外製品の個人輸入」は、国内の消費者にとって非常に身近な選択肢となっています。日本国内ではまだ流通していない最新の成分を含む美容液や、ドラッグ・ラグ(海外で承認されている薬が日本で承認されるまでの遅れ)によって国内では入手困難なサプリメントや医薬品などを、海外から直接購入できることは、消費者にとって大きなメリットがあるように見えます。

こうした需要を背景に、海外製品の輸入販売業者、個人輸入の手続きをサポートする「輸入代行業者」、さらには自らのブログやSNSを活用してそれらの製品を紹介し、アフィリエイト報酬を得る「美容系インフルエンサー」など、個人輸入に関連する市場は新たなビジネスチャンスを生み出しています。既存のビジネスコラム等では、主に日本国内で製造・販売される健康食品や化粧品の広告規制(誇大広告の禁止や医薬品的な効能効果の標榜禁止など)に焦点を当てて解説が行われることが一般的でした。しかし、昨今急増しているのが、この「海外製品の個人輸入ビジネス」に関連する深刻な法的トラブルや行政指導の事例です。

海外の製品であっても、日本国内の消費者に向けてビジネスを展開する以上、日本の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)の厳しい網がかかります。本コラムでは、海外製品の輸入販売や輸入代行、アフィリエイトに携わる皆様を対象に、個人輸入ビジネスに潜む薬機法の法的リスクと、見落としがちな落とし穴について詳細に解説いたします。

医薬品等の輸入に関する薬機法の原則と流通規制

ビジネスのリスクを正確に把握するためには、まず薬機法が「輸入」という行為をどのように捉えているのか、その大原則を知る必要がございます。

薬機法に基づく規制の大きな柱の一つに「流通規制」があります。これは、有用性と安全性がしっかりと確認された医薬品等のみが市場に流通することを認めるという強力な規制です。医薬品等を日本に輸入する行為自体は、国内での流通を直ちに生じさせるものではないため、本来であれば薬機法の流通規制の直接の対象とはなりません。しかし、輸入された医薬品等が国内で流通することによる国民への健康被害を防ぐため、薬機法では輸入の「目的」によって規制の枠組みを明確に分けています。

薬機法上の輸入に関する規制は、大きく分けて二つに分類されます。一つは「輸入した医薬品等を国内で販売または授与する目的で行うもの(流通目的による輸入)」、もう一つは「輸入した医薬品等を自ら使用するなどの目的で行うもの(流通以外の目的による輸入)」です。

流通目的による医薬品等の輸入を行う場合、すなわち輸入した製品をビジネスとして国内の消費者に販売(または無償でサンプリング等による授与)する場合には、極めて厳格なハードルが存在します。

輸入した医薬品等を国内で販売等するためには、大前提として、その製品自体が日本の薬機法に基づく「承認等」を受けている必要がございます。

また、事業を行う主体としては、海外の製造所において製造された医薬品等を輸入し、国内での製造(包装や日本語の法定表示ラベルの貼付などを含む)、保管を経て市場へ出荷する責任を負う「製造販売業」や「製造業」の許可等を取得しなければなりません。

つまり、製造販売業等の許可を持たず、かつ日本で承認されていない海外のサプリメント(日本の基準では医薬品成分とみなされる成分が含まれるもの等)や化粧品を海外から大量に安く仕入れ、国内の倉庫に在庫として保管した上で、インターネット通販などを通じて国内の消費者に販売する行為は、明らかな「無許可営業」および「未承認医薬品等の販売」となり、刑事罰の対象となる重大な薬機法違反となります。

この流通規制の大原則があるため、一般の事業者が許可なく海外の未承認医薬品等をビジネスとして直接輸入し、国内から販売することは事実上不可能となっています。

流通以外の目的による輸入と「個人輸入」の特例制度

前章で述べた通り、販売目的での輸入は厳格に規制されています。では、なぜ一般の消費者は海外のサプリメントや医薬品をインターネットで自由に購入(個人輸入)できているのでしょうか。

それは、薬機法において「輸入した医薬品等を自ら使用するなど、国内で販売または授与して流通させる目的以外の目的の輸入(流通以外の目的による輸入)」については、市場に流通して公衆衛生上の危害を及ぼすおそれがないため、薬機法の流通規制の対象外となる適法な行為として扱われているからです。

しかし、過去にはこの制度の抜け穴を突き、「販売目的ではなく、あくまで自己使用目的である」と称して輸入された医薬品等が、実際には国内のフリマアプリなどで違法に転売(流通)され、それを使用した人に重大な健康被害が発生するという事案が相次ぎ、社会問題化しました。

これを重く見た国は、未承認医薬品等の輸入の適正化を図るため、令和元年(2019年)の薬機法改正により、法律上の明確な制度として新たに「輸入確認制度」を導入しました(法第56条の2)。

この輸入確認制度により、未承認の医薬品等を輸入しようとする者は、原則として厚生労働大臣の「輸入確認」を受けなければならないことが法律上義務付けられました。そして、税関等において販売または授与の目的で輸入するおそれがあると認められる場合等は、輸入の確認を受けることができず、通関が認められません。

一方で、明らかに販売や授与以外の目的であると類型的に認められる場合については、例外的に「輸入の確認を受けずに輸入ができる(特例)」とされています。その代表的な例は以下の通りです。

① 個人が、自ら使用する目的で輸入する場合
② 医師等が自らの患者の疾病の治療等に使用する目的で輸入する場合
③ 臨床試験その他の試験研究に使用する目的で輸入する場合
④ 学術研究等のための展示会等に展示する目的で輸入する場合

このうち、①および②が、いわゆる一般的に「個人輸入」と呼ばれているものです。特に①の「個人が自ら使用する目的で輸入する場合」については、一定の数量制限の範囲内(例えば、処方箋医薬品等に相当するものについては1ヶ月分以内、その他の医薬品等については2ヶ月分以内など)であれば、輸入の確認手続きを省略して輸入することが認められています。

ここでビジネスを展開される皆様が絶対に理解しておかなければならないのは、個人輸入が特例として認められるための絶対条件が「自ら使用する目的(自己使用目的)」に限定されているという点です。

個人輸入の特例制度を利用して海外から取り寄せた医薬品やサプリメントを、フリマアプリ等で他人に転売したり、あるいは無償であっても友人に譲渡したりする行為は、自己使用目的を完全に逸脱しており、未承認医薬品の違法な販売・授与に該当します。個人輸入ビジネスの周辺には、常にこの「個人輸入は本人の自己使用に限られる」という大原則が厳然として存在していることを忘れてはなりません。

薬機法における広告規制の基礎知識と「広告三要件」

国内に在庫を持って販売することが違法となるため、多くの事業者が目を付けたのが「輸入代行ビジネス」や、海外の販売サイトへユーザーを誘導して紹介料を得る「アフィリエイトビジネス」です。これらは自らは商品を仕入れて在庫を持たず、消費者の「個人輸入(自己使用)」を手助けする、あるいは情報を提供するだけであるため、違法な販売には当たらず安全なビジネスだと考えるのが一般的です。

しかし、ここで事業者の前に大きく立ちはだかるのが、薬機法の「広告規制」という非常に高い壁です。薬機法は、医薬品等の販売行為そのものだけでなく、販売を促進するための「広告」についても極めて厳格かつ広範な規制を敷いています。

まず、どのような表示や情報発信が薬機法上の「広告」に該当するのかについて理解する必要があります。行政の運用上、以下の3つの要件(広告三要件)をすべて満たすものは、たとえ名目が単なる「情報提供」や「個人の体験談」であっても、実質的に「広告」として規制の対象となります。

① 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること(顧客誘引性)
② 特定の医薬品等の商品名が明らかにされていること(特定性)
③ 一般人が認知できる状態であること(一般認知性)

そして、薬機法の広告規制(第66条:虚偽・誇大広告の禁止、第68条:未承認医薬品等の広告の禁止など)の条文は、すべて「何人も(なんぴとも)……広告をしてはならない」と規定されています。

「何人も」という言葉が示す通り、広告規制の名宛人は、製造販売業者や販売業者といった薬機法上の許可業者に限定されません。

輸入代行業者、アフィリエイター、美容系インフルエンサー、さらには広告を掲載したウェブメディア、雑誌社、ITプラットフォーマーまで、広告に関与したすべての人が規制の対象となり得ます。「自分は商品を製造しているメーカーではないから」「商品を直接販売しているわけではないから」という言い訳は、広告規制違反の責任を免れる理由には一切ならないのです。

輸入代行業者の広告リスク:第68条(未承認医薬品等の広告の禁止)違反の罠

それでは、本題の一つである「輸入代行業者」が直面する最大の実務的リスクについて解説いたします。

輸入代行業とは、日本国内の消費者からの依頼を受け、海外の販売業者に対する商品の注文、支払い、通関手続きなどの一切の作業を代行し、商品を海外から消費者へ直送させるビジネスモデルです。輸入代行業者は自ら商品を仕入れて在庫を持たないため、薬機法に基づく販売業等の許可がなくても事業を営むことができます。

しかし、輸入代行業者が自社のウェブサイト上で顧客を集めるために行う「宣伝手法」が、致命的な違法行為となるケースが後を絶ちません。その最大の要因が、薬機法第68条の存在です。

薬機法第68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)は次のように定めています。「何人も、第十四条第一項(中略)の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていない医薬品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」

輸入代行業者が取り扱う海外のサプリメント、医薬品、美容機器などは、当然のことながら日本国内での承認を受けていない「未承認医薬品等」に該当します(仮に海外では食品扱いのサプリメントであっても、日本の基準で「専ら医薬品として使用される成分」が含まれていたり、医薬品的な効能効果を標榜していれば、日本では未承認の医薬品とみなされます)。

輸入代行業者はしばしば、「私たちは個人輸入の手続きを代行しているだけであり、自ら商品の所有権を取得して売主として販売しているわけではない。単なる代行サービスの案内なのだから、医薬品の広告規制は適用されないはずだ」と主張します。しかし、現在の法解釈および行政の実務において、この理屈は完全に否定されています。

広告規制に関する実務上の解釈では、広告の主体が、広告の対象である医薬品等の「売主」であること(自ら所有権を取得して販売すること)は、広告規制が適用されるための必須の前提とはされていません。すなわち、他者が売主となって販売する医薬品等についての表示を行う場合であっても、サイト訪問者の購入意欲を昂進させる意図があれば、広告三要件における「顧客誘引性」は十分に満たされると判断されます。

通常、輸入代行業者が運営するウェブサイトに海外の医薬品等が掲載され、それを見た消費者が個人輸入の代行を依頼すれば、輸入代行業者には手数料などの利益(収入)が発生するという仕組みになっています。このように自らが経済的な利益を得る目的がある以上、輸入代行業者のサイト上に掲載された製品情報や効能効果のうたい文句は、ユーザーに対して当該医薬品等を購入する意欲を昂進させる意図で行われたもの(すなわち「顧客を誘引する広告」)であるとみなされます。

したがって、輸入代行業者が自社のウェブサイト等において、海外の未承認医薬品等の効能効果(例えば、「この海外製クリームでシミが確実に消える」「海外で話題の痩せ薬!1ヶ月で〇キロ減量」「飲むだけでED(勃起不全)が劇的に改善」など)を宣伝することは、法第68条の「未承認医薬品等の広告の禁止」に真っ向から違反するリスクが極めて高い違法行為となります。

また、「サーバーを海外に置いているから日本の法律は及ばない」といった誤解も散見されますが、これも極めて危険な認識です。未承認医薬品等の個人輸入代行サイトを、海外に所在する事業者が海外のサーバーを利用して運営していたとしても、日本国内に所在する消費者をターゲットにして日本語で広告(情報発信)が行われている以上は、日本の薬機法第68条に違反する行為として摘発の対象となります。

アフィリエイトとインフルエンサーに忍び寄る危険性

輸入代行業者自身のリスクに加えて、近年行政当局による取り締まりや監視の目が厳しく向けられているのが、「アフィリエイター」や「美容系インフルエンサー」の存在です。

アフィリエイターやインフルエンサーは、自身のブログ、X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどのSNSを通じて商品を紹介し、閲覧者が設置されたリンクを経由して商品を購入(輸入代行を依頼)することで、紹介料(アフィリエイト報酬)を得るビジネスモデルを展開しています。個人輸入ビジネスの市場拡大に伴い、海外の魅力的なサプリメントやコスメをアフィリエイトで紹介するケースが増加していますが、ここにも薬機法の深い落とし穴があります。

アフィリエイターやインフルエンサーによるSNSへの投稿やブログ記事は、一見すると「個人の単なる感想」や「体験談」のように見えます。

しかし、その投稿に特定の商品名が記載されており、さらにアフィリエイトリンクが貼られていれば、読者をそのリンクへ誘導して商品を購入させる(自身が報酬を得る)という明確なビジネス上の意図が存在します。

これにより、前述の広告三要件(①顧客誘引性、②特定性、③一般認知性)を完全に満たすことになり、その投稿自体が法的に「薬機法上の広告」として扱われることになります。

その結果、紹介している商品が日本の承認を受けていない海外医薬品であった場合、あるいは海外では食品扱いであっても日本国内では医薬品的な効能効果をうたっているために未承認医薬品とみなされる製品であった場合、その投稿を行ったアフィリエイター自身が、第68条(未承認医薬品等の広告の禁止)に違反した当事者として直接責任を問われます。

「私はメーカーではないし、業者から依頼されて使ってみた感想を素直に書いただけだ」「他の人もみんな書いている」という自己弁護は、広告規制の名宛人が「何人も」である以上、通用しません。さらに、効果を過大に表現したり、事実に反する体験談を創作したりした場合には、第66条の「虚偽・誇大広告の禁止」にも抵触します。

令和3年(2021年)の薬機法改正により、虚偽・誇大広告等の違反行為に対しては、対象期間中の売上額の4.5%という高額なペナルティを国庫に納付させる「課徴金制度」も導入されています。

行政の監視体制はかつてなく強化されており、悪質なアフィリエイターや、違法な広告表現を指示・黙認した広告代理店、さらにはインフルエンサーが書類送検される事案も実際に発生しています。個人の副業や小規模なビジネスであっても、薬機法違反のリスクと無縁ではない厳しい時代に突入していると認識しておく必要があります。

ビジネスを守るための実務的対応策とまとめ

海外製品の個人輸入に関連するビジネスは、ニッチな需要に応える高いポテンシャルを秘めている一方で、これまで述べてきたように、薬機法の「未承認医薬品等の広告規制」という強力な地雷源の上に成り立っているといっても過言ではありません。ビジネスを法的なリスクから守り、健全に成長させるためには、以下の実務的対応策を徹底されることが求められます。

1.取り扱う製品の成分と位置づけの厳密な確認

海外では「サプリメント(食品)」として販売されているものであっても、日本国内では「医薬品」に該当する成分が含まれていることが多々あります。輸入代行やアフィリエイトで取り扱う前に、対象製品の成分が、日本の厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に該当していないか、あるいは向精神薬等の規制対象成分が含まれていないかなど、日本の法令基準に照らした入念な事前調査が不可欠です。

2.広告表現の抜本的な見直しと適正化

輸入代行業者のサイトやアフィリエイターのブログにおいて、身体の構造や機能への影響(例:「細胞を再生する」「代謝を上げる」)、あるいは特定の疾病の予防・治療効果(例:「〇〇病に効く」「認知症を予防する」)を標榜することは、未承認医薬品の広告とみなされる決定的な要因となります。情報の提供は事実に基づいた極めて限定的な範囲に留め、顧客誘引性を生じさせるような表現(効能効果の確約、過度な体験談、購入を強く煽る文言など)を徹底して排除するコンプライアンス体制を構築することが必要です。

3.アフィリエイター等の管理体制の強化

広告主となる輸入代行業者(またはASP等)は、提携するアフィリエイターやインフルエンサーに対して、薬機法の基礎知識に関する教育を行い、使用してはならない表現のガイドラインを明確に示すことが重要です。定期的なサイトパトロールを実施し、違法な表現が発見された場合は即座に修正指示や提携解除を行うなど、自浄作用のある仕組みを持つことが求められます。

海外市場の魅力を日本の消費者に届ける個人輸入ビジネスは、適切に運営されれば消費者にとって非常に価値のあるものです。しかし、薬機法への理解不足や「バレなければ大丈夫だろう」という安易な利益追求は、企業の信用失墜や行政処分、高額な課徴金、最悪の場合は刑事罰といった取り返しのつかない結果を招きます。自社の法務部門や薬機法に精通した専門の弁護士等と緊密に連携し、法の趣旨に沿った適切なビジネスモデルと広告宣伝体制を構築していくことが、今後のヘルスケア市場で生き残るための最低条件となります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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