かつて日本のモバイルゲーム業界において話題となり、現在のガチャ文化のあり方を決定づけたコンプガチャ(コンプリートガチャ)。

この仕組みがなぜ法的にアウトとなり、現在のゲーム業界でどのように規制されているのか、景品表示法の観点から詳しく解説します。

1 コンプガチャとは何か?

コンプガチャとは、「特定のアイテム数種類を、有料ガチャで全て揃える(コンプリートする)と、さらに希少なレアアイテムが手に入る」という仕組みです。

(1)仕組み

ガチャ(A〜Eの5種)を回す → 全種類揃う → 限定激レアアイテム「Z」をゲット。

(2)中毒性の理由:

あと1種類でコンプリートという状態になると、ユーザーは「ここまで注ぎ込んだのだから」という心理(サンクコストバイアス)に陥り、最後の1つが出るまで過度な課金をしてしまう傾向がありました。

このように、コンプガチャは、非常に依存性の高いものであるといえます。

2 なぜ景品表示法に抵触するのか?

2012年、消費者庁はコンプガチャを景品表示法が禁じる「カード合わせ」に該当すると判断しました。

(1)カード合わせ(共同懸賞の禁止)とは

景表法には「懸賞による景品類の提供に関する事項」という告示があります。その中で、「2以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の特定の組合せを提示させる方法」による景品提供は、原則として禁止されています。元々は「お菓子の袋の中にある『プロ野球チップス』のカードを揃えたら景品をあげる」といった商法を規制するためのルールでしたが、これがデジタルのガチャにも適用された形です。

(2)コンプガチャが禁止される理由

では、なぜコンプガチャが禁止されているのか?理由は主に2つです。

ア 射幸心の過度な煽り

 揃う確率が数学的に非常に低くなる(いわゆる「最後の一枚が引けない」状態)ため、消費者に多額の出費を強いるリスクが高い。

イ 欺瞞性の高さ:

一見、簡単に揃いそうに見えても、組み合わせの確率は非常に複雑であり、消費者が冷静な判断を失いやすいためです。

3 現行のガチャとの違い

ここで、「今のゲームもガチャでキャラを揃えるのに、なぜ捕まらないの?」という疑問が湧くかもしれません。

その境界線は「景品が何であるか」にあります。

仕組み内容景表法上の判断単発ガチャお金を払って特定のキャラを1人引くセーフ(通常の取引)ボックスガチャ中身の数が決まっており、引けば確実に減るセーフ(上限があるため)コンプガチャガチャの結果を組み合わせて別の景品を得るアウト(カード合わせ)天井システム一定回数回すと好きなキャラがもらえるセーフ(救済措置とみなされる)、となっています。

重要なのは、「有料ガチャの結果を揃えること自体が、新たな景品を受け取る条件になっているか」です。

4 コンプガチャ騒動が残した教訓

この規制以降、ゲーム業界では自主規制ガイドライン(JOGAなど)が策定され、以下の要素が一般的になりました。

(1)出現確率の明記:

以前は伏せられていた各アイテムの排出率を%で表示する。

(2)天井の設定

「300連で確定」などの救済措置を設ける。これらは、ユーザーを守るためだけでなく、企業側が「景表法違反」という致命的なリスクを避けるための防衛策でもあります。

5 まとめ

景表法は「納得感」を守る法律景品表示法は、消費者が「そんなはずじゃなかった」と後悔するような不当な誘引を防ぐための法律です。

コンプガチャの規制は、デジタルの世界であってもリアルの商法と同じルールが適用されることを示した歴史的な出来事でした。現代のガチャも、確率の偏りや「引きの悪さ」に泣かされることはありますが、少なくとも「仕組みとして法に触れるギャンブル」からは一線を画すよう設計されています。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

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