
食は人の営みの最も基本的なものであることから、農業は、生きる上での基本産業と言っても過言ではないと思います。
このような農業による労災は、農業機械によるものが多いと想定されます。
そこで今回は、農業機械による労災事故について、労災事故・賠償に強い弁護士が解説します。
農業機械とは

農業は、さまざまな作業から構成されています。
そこで、作業の工程(土作りから収穫まで)に合わせて多種多様な農業機械がありますが、代表的なものを、次の通りご紹介します。
1. 耕うん・整地用(土作り)
①トラクター
→アタッチメントを付け替えることで、耕うん、代かき、種まきなど多目的に使用される、農業の主役ともいえる機械です。
②耕うん機
→小規模な畑などで土を掘り起こし、細かく砕くために使用します。手押しタイプが一般的です。
2. 播種・移植用(植え付け)
①田植機
→育苗箱で育てた稲の苗を、等間隔で水田に植えていく機械です。最近では直進自動操舵機能付きも普及しています。
②播種機(はしゅき)
→穀物や野菜の種を、適切な深さと間隔で地面にまく機械です。
③野菜移植機
→キャベツやレタスなどの野菜の苗を自動で植え付けます。
3. 防除・管理用(育てる)
①動力噴霧機(散布機)
→農薬や肥料を液状または粉状にして散布し、病害虫の防除を行います。
②農業用ドローン
→空中から短時間で広範囲に農薬や肥料を散布します。
③草刈機(刈払機)
→畦(あぜ)や農地の雑草を刈り取ります。乗用タイプやラジコンタイプもあります。
4. 収穫用(刈り取り・掘り出し)
①コンバイン
→稲や麦、大豆などの「刈り取り」と「脱穀(実を外す)」を同時に行う機械です。
②バインダー
→稲などを刈り取り、束ねる機能に特化した小型の機械です。
③ハーベスター
→刈り取られた作物を脱穀するための機械や、ジャガイモなどを掘り起こして収穫する機械(ポテトハーベスター)の総称です。
5. 乾燥・調製用(出荷準備)
①乾燥機
→収穫した稲や麦などの水分を、保存に適した状態まで温風で乾燥させます。
② 籾すり機(もみすりき)
→乾燥させた籾から殻(もみ殻)を取り除き、玄米にする機械です。
③選別機:
→作物の大きさや重さ、色などで仕分けを行い、出荷規格に合わせる機械です。
農業機械による労災事故

1. トラクター
①転倒・転落
→畦(あぜ)を乗り越える際や、路肩の崩落による横転。特にシートベルト未着用で下敷きになるケースが目立ちます。
②巻き込まれ
→ エンジンをかけたまま、後方の作業機(ロータリー)に詰まった泥や草を取ろうとして、回転部に巻き込まれる。
③衝突
→公道走行中の自動車との衝突や、後退時の確認不足による歩行者のひき逃げ。
2. 田植機・コンバイン
①挟まれ・巻き込まれ
→コンバインの「カッター部」や「脱穀部」に詰まった作物を手で取り除こうとして指や腕を負傷する。
②転倒
→トラックへの積み込み・積み降ろし中に、歩み板(ラダー)から脱輪して転落・横転する。
③接触
→補助作業者が機械の死角に入り、旋回時に接触する。
3. 耕うん機・管理機
①挟まれ(後退時)
→後退中に壁や立ち木と機械の間に作業者が挟まれる。
②巻き込まれ
→回転する爪に足や衣服が巻き込まれる。特に傾斜地でのバランス崩壊が原因となります。
4. 草刈機(刈払機)
①跳ね返り
→刈刃が障害物(石や樹木)に当たり、機械が急激に跳ね返って作業者自身や周囲の人を直撃する。
②飛散物による負傷
→飛び石が目に入ったり、付近の歩行者に当たったりする。
③接触
→作業者同士の距離が近く、他人の足を刈ってしまう。
5. 動力噴霧機・防除機
①巻き込まれ
→露出している回転軸(PTO)やベルトに衣服が巻き込まれる。
②中毒
→薬液の散布中に防護具が不十分で、農薬を吸い込んだり皮膚から吸収したりする。
特別加入が必要

農業者が労災保険に特別加入できるケースは、以下の3つの区分のいずれかに該当する場合です 。
1. 特定農作業従事者
以下の①〜③の条件をすべて満たす人が対象です 。
規模要件: 年間の農業生産物販売額が300万円以上、または経営耕地面積が2ヘクタール以上であること(これらを満たす地域営農集団などを含む)。
対象者: 土地の耕作、植物の栽培、家畜の飼育などを行う農業者(家族従事者を含む)。
作業内容: 動力機械の使用、2メートル以上の高所作業、酸素欠乏危険場所(サイロなど)での作業、農薬散布、特定の家畜(牛・馬・豚)に接触する作業のいずれかに従事すること。
2. 指定農業機械作業従事者
特定の機械を使用して、耕作や栽培などの作業を行う農業者(家族従事者を含む)が対象です 。
対象機械の例: トラクター、動力耕うん機、自走式の田植機・コンバイン・運搬車、動力草刈機、チェーンソー、無人航空機(農薬散布用など)など 。
3. 中小事業主等
労働者を雇用している事業主とその家族従事者が対象です 。
規模: 農業の場合、常時300人以下の労働者を使用する事業主であること 。
要件: 労働者を通年雇用しない場合でも、年間100日以上使用する見込みがあれば含まれます 。
加入には「労働保険関係の成立」と「事務処理を労働保険事務組合へ委託すること」の2つの要件を満たす必要があります 。
下記HPも参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-9.html
労災給付とは

労災給付とは、仕事や通勤が原因で被った怪我や病気に対し、国が、治療費や生活費を支給する制度」です。
主な給付は、次の2つです。
療養補償給付
いわゆる治療費で、治療に関する費用の支給です。
健康保険を利用する場合には原則3割負担ですが、労災の指定病院であれば、窓口でのお金はかかりません。
また、いわゆる治療費や薬代だけでなく、手術代や入院費、さらには通院のための交通費も対象になります。
支給は、「治る」までまたは「これ以上よくならない(症状固定)」と判断されるまで受けられます。
休業補償給付
休業する期間の給料を補うための給付です。
受け取れるのは、給料(額面)の約80%です。
傷病手当金とは

傷病手当金は、怪我や病気で会社を休んだときに支給される健康保険の制度です。
大まかな需給金額は、「給料(額面)の約3分の2」が1日単位で計算され、支払われます。受給可能な期間は最長で、通算1年6ヶ月です。
受給条件
以下の条件をすべて満たす必要があります。
①業務外の怪我や病気であること(仕事中や通勤中なら「労災」の対象)。
②仕事ができる状態ではないこと(医師の判断が必要)。
③連続して3日間休み、4日目以降も休んでいること(最初の3日間支給対象外)。
④休んでいる間の給与支払いがないこと(給与が手当金より少ない場合は、差額が支給)。
労災給付と傷病手当金の申請方法

労災保険の場合
①会社へ報告
「業務(通勤)においてで怪我・病気をした」と伝え、労災を使いたい旨を言う。
②書類作成
「休業補償給付支給請求書」を作成します。会社が用意してくれることが多いですが、会社が用意してくれない場合は、弁護士に相談してください。
③医師の証明
労災指定の病院で「業務上の災害または疾病が原因で働けない」という証明をもらいます。
④提出・調査
労働基準監督署へ提出します。その後、監督署から会社や本人に「当時の状況」などのヒアリング調査が入ります。
⑤決定
労災と認められれば、支給が始まります。
傷病手当金の場合
①申請書の用意
健保のサイトからダウンロード、または会社からもらいます。
②医師の記入
「療養のため就業不能だった」という意見を書いてもらいます。
③会社の記入
人事・総務などの担当部署に提出し、休業中の給与が出ていない証明を書いてもらいます。
④提出
自分または会社経由で健康保険組合へ送ります。
⑤決定
書類に不備がなければ、通常1ヶ月程度で振り込まれます。
※現在は「マイナポータル」を通じた電子申請の方法もあります。
労災と傷病手当の併用は可能なのか

上記の通り、労災は業務上の災害・疾病、傷病手当金は業務外の傷病・疾病ですので、原因が異なります。従って、原因がどちらか一方に特定されるため、非常に例外的なケースを除き、併用できないのが原則です。
会社の安全配慮義務違反や不法行為が原因で労災が起きたとき

労災給付は、労働者が仕事中に遭難した事故に対する一定の保障を提供しますが、必ずしも、その損害の全額が補填されるとは限りません。
また、事故が、企業や使用者の安全配慮義務違反や不法行為によるものであった場合には、労災給付では補償されない損害が生じることがあります。
このように、企業や使用者に安全配慮義務違反や不法行為が認められる場合、企業や使用者に対して民事訴訟を起こし、損害賠償を請求することが可能と考えられます。
弁護士介入のメリット

①会社に対して代理人として交渉を行うことができる
弁護士は、社労士や司法書士と違い、被害者の代理人として交渉を行うことができます。
会社との交渉は在職中であっても退職された後であっても一般の方には負担が大きいと思いますし、法的な内容になると交渉の能力も必要になります。交渉の仕方によっては請求できる金額も変ってきます。
②労災申請のみならず、慰謝料を含めた損害の賠償請求まで可能
労基署に対する労災申請は最低限の補償でしかありません。これとは別に、逸失利益、慰謝料等の賠償請求が可能な場合があります。弁護士であれば、労働者の代理人として、労働審判、民事訴訟等の方法により使用者に対し損害賠償請求が可能です。
③労災保険の申請をサポート
労働災害事故によって、負傷してしまった場合、労災保険の給付が受けられます。
ところが、会社(事業主)が労災保険の申請を拒否することがあります。
しかし、会社の協力を得られなくても、労災保険の申請は可能です。
弁護士に相談・依頼することで、迅速な給付を受けることが可能となります。
④会社を訴えざるを得ない場合もあります。
不幸にして労災事故に遭ってしまい、労災からの給付だけでは損害の填補が不足する場合には、会社を訴えざるを得ない場合があります。
様々な検討点を経て賠償請求をしていくことになりますので、弁護士のサポートは必須と考えています。
賠償請求について、グリーンリーフ法律事務所ができること
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来、数多くの労災を含む賠償に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、賠償に精通した弁護士が数多く在籍し、また、労災専門チームも設置して、労災・賠償に強い弁護士を目指しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・労災専門チームの弁護士は、労災や賠償に関する法律相談を日々研究しておりますので、労災事件に関して、自信を持って対応できます。
なお、費用が気になる方は、上記HPもご参照ください。
最後に

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





