
本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の労災集中チームの弁護士が執筆しています。
ビルやマンション、道路建設などの現場において、生コンクリートを圧送する「コンクリートポンプ車」は欠かせない存在です。しかし、高圧で生コンを送り出すその強力なパワーと、巨大なブームや攪拌(かくはん)装置を持つこの機械は、ひとたび手順を誤れば、作業員に大けがをさせる危険があります。
今回取り上げるのは、コンクリートポンプ車作業中に発生した事故で、一つは、詰まったホースが暴れ回り作業員を直撃した「激突事故」。 もう一つは、清掃作業中に回転する攪拌機に身体を引き込まれた「巻き込まれ事故」です。
もし、あなたの大切なご家族が、建設現場でのポンプ車作業中に事故に遭われ、お亡くなりになったり、重篤な後遺障害を負われたりして、「本人の不注意だった」 「労災保険が出るからそれで終わりだ」 会社側からそのように説明され、諦めかけてはいませんでしょうか。
しかし、法的な視点で見れば、これらの事故の多くは「防ぐことができた人災」であり、企業には重い法的責任(安全配慮義務違反)が存在するケースがほとんどです。
この記事では、実際の労働災害事例を基に、事故の原因分析、会社に問うべき法的責任、及び正当な賠償金について、労災問題に精通した弁護士が解説します。
1.事例解説:コンクリートポンプ車が招いた2つの悲劇

まずは、実際に起きた2つの事故状況を詳しく見ていきましょう。いずれも、基本的な安全手順が無視された結果、発生した重大災害です。
事例1:圧送ホースの「暴れ」による激突死
【事故の概要】
道路改良工事の現場で、コンクリートポンプ車を用いて生コンの打設作業を行っていた際に事故は起きました。 被災者は2次下請けの作業員でした。作業中、輸送管(ホース)の途中で生コンが詰まる「閉塞」トラブルが発生しました。 被災者は詰まりを取り除こうとして、輸送管とホースの接続部を切り離そうとしました。その瞬間、内部の高まった圧力によって圧縮された空気と生コンが一気に吹き出し、その反動でホースが激しく振れました(ホイッピング現象)。 制御を失い暴れ回った重量のあるホースが被災者に激突し、即死しました。
【なぜ事故は起きたのか】
この事故の直接的な原因は、「残圧処理」を行わずに接続を外したことです。 通常、閉塞を解消するために配管を外す際は、事前に空気圧縮機のバルブを開放するなどして、内部の圧力を抜かなければなりません。しかし、現場ではその措置が講じられていませんでした。 また、万が一の振れに備えてホースを鎖などで固定する措置もなされておらず、作業手順の定めや指揮者の指示も欠落していました。
事例2:攪拌機(ホッパー)への巻き込まれ死
【事故の概要】
コンクリート打設作業終了後、残土置き場でポンプ車の洗浄を行っていた際に事故は発生しました。 被災者は一人でポンプ車の「攪拌機(ホッパー部分)」を清掃していました。攪拌機とは、生コンが固まらないように羽根がついた棒が回転する装置です。 同僚が発見した時には、被災者は回転する攪拌機に巻き込まれ、死亡していました。 発見時、ポンプ車のエンジンはかかったままで、攪拌機の作動レバーも「入」の状態でした。
【なぜ事故は起きたのか】
この事故の最大の問題は、「回転を止めずに清掃を行っていた」点にあります。 本来、機械の清掃や点検を行う際は、運転を停止することが労働安全衛生規則で義務付けられています。しかし、被災者は指示された手順(あるいは現場の慣習)により、スイッチを切らずに作業を行っていました。 また、作業中には開口部の保護用金属網(安全ガード)が取り外されており、回転体に容易に触れられる危険な状態でした。
2.会社に問われる「安全配慮義務違反」とは

労働災害において最も重要な視点は、「なぜその危険な作業を会社は止めなかったのか」「防ぐための設備や教育は十分だったか」という点です。 これを法的には「安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)」と呼びます(労働契約法第5条)。
今回の2つの事例において、会社側には以下のような重大な義務違反があったと考えられます。
(1)事例1(ホース激突)における責任
- 作業手順の策定・周知義務違反: 閉塞時のトラブル対応は非常に危険を伴います。「必ず圧力を抜いてから外す」という手順を定め、作業員に周知徹底させる義務がありましたが、これがなされていませんでした。
- 飛来・崩壊災害防止措置義務違反: ホースの連結を解く際に、ホースが暴れることを予見し、ロープや鎖で固定して振れ止めを行う措置を講じていませんでした。
- 指揮監督義務違反: 危険作業にもかかわらず、作業指揮者を指名して直接指揮させていなかったことは、元請け・下請け双方の管理責任が問われます。
(2)事例2(攪拌機巻き込まれ)における責任
- 運転停止義務違反(労働安全衛生規則違反): 機械の掃除、給油、検査などを行う場合、運転を停止しなければならないという基本的な法令を守らせていませんでした。
- 安全装置(インターロック)の不備: 保護網(グリル)を外すと自動的に攪拌機が停止する「インターロック装置」が備わっていなかった、あるいは機能していなかったことは、機械設備の安全化(本質安全化)を怠った過失と言えます。
- 不安全行動の黙認・指示: 「事業者に指示された手順により、スイッチを切らず作業を行っていた」との記述がある通り、会社自体が危険な方法を指示していたのであれば、その責任は極めて重大であり、場合によっては刑事責任さえ問われるレベルの過失です。
3.労災保険で受けられる補償(ご遺族への給付)

不幸にも労働災害で亡くなられた場合、まずは国の労災保険から遺族に対する給付が行われます。
(1)遺族(補償)給付
労働者が死亡した場合、その収入によって生計を維持していた遺族に対して支給されます。
- 遺族(補償)年金: 遺族の人数等に応じて、年金形式で支給されます。
- 遺族特別支給金: ボーナス等を基礎とした給付に加え、一律300万円の特別支給金が支払われます。
(2)葬祭料(葬祭給付)
葬儀を行った遺族等に対し、葬儀費用の一部として支給されます。
【ここが重要:労災保険の限界】 しかし、これらの労災給付はあくまで「最低限の生活保障」です。 事故によって奪われた命に対する「慰謝料(精神的苦痛への賠償)」は、労災保険からは1円も支払われません。 また、将来得られるはずだった収入の全額にあたる「逸失利益(いっしつりえき)」についても、労災年金だけでは本来の損害額の全てをカバーできないことが一般的です。
4.会社に対する損害賠償請求

労災保険でカバーされない「慰謝料」や「逸失利益の不足分」については、事故の原因を作った会社(雇用主および元請業者)に対して、民事上の損害賠償請求を行う必要があります。
(1)請求できる主な項目
死亡事故において会社に請求できる主な項目は以下の通りです。
- 死亡慰謝料: 被害者が亡くなったことによる精神的苦痛に対する賠償です。 弁護士が介入して請求する場合の基準(裁判所基準)では、被害者が一家の支柱であった場合、約2,800万円が相場となります。
- 死亡逸失利益: 被害者が生きていれば将来得られたはずの収入です。 計算式は「基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × 稼働可能期間に対応するライプニッツ係数」となります。 若くして亡くなられた場合や、年収が高い熟練工の場合、その額は数千万円から1億円以上になることもあります。
- 葬儀費用: 労災の葬祭料で賄いきれない実費分などを請求します(上限150万円程度が目安)。
(2)賠償金のシミュレーション
【モデルケース】
- 被害者:45歳男性、年収500万円
- 家族構成:妻、子2人(一家の支柱)
- 事故状況:コンクリートポンプ車の事故で死亡。会社の安全配慮義務違反が認められるケース。
A:労災保険のみの場合
- 遺族補償年金などが支給されますが、慰謝料はありません。
B:会社へ損害賠償請求をした場合(弁護士基準) 以下の項目を会社に請求できます。
- 死亡逸失利益: 500万円 × (1 – 0.30:生活費控除率) × 14.029(係数※概算) ≒ 約4,900万円
- 死亡慰謝料: 2,800万円(一家の支柱の場合の基準)
- 合計請求額目安:約7,700万円 + 葬儀費用等 (※ここから労災保険の年金給付分などが一部調整(控除)されますが、それでも数千万円規模の請求権が残ります)
会社への請求を行わないということは、この数千万円という正当な権利を放棄することになります。残されたご家族の生活を守るためにも、請求は決してためらうべきことではありません。
5.会社側の反論と弁護士の役割

損害賠償請求を行う際、会社側は責任を逃れるために様々な反論をしてくることが予想されます。
(1)「作業員の勝手な行動だった(過失相殺)」
会社は「手順を守らなかった本人が悪い」「勝手に手を入れた」と主張し、賠償額を減額(過失相殺)しようとするでしょう。 しかし、弁護士は以下のように反論します。
- 事例1に対して: 「圧力を抜く手順書が存在しなかったではないか」「そもそもホースを固定する用具を用意していなかったのは会社の責任だ」
- 事例2に対して: 「スイッチを切らずに作業する手順を指示していたのは会社ではないか」「インターロックがあれば、手を入れても止まっていたはずだ。フールプルーフ(誤操作防止)の観点からも設備の欠陥である」
労働者がミスをすることを前提に、ミスをしても事故にならない仕組みを作るのが事業者の義務です。この点を強く主張し、不当な過失相殺を阻止します。
(2)「元請けに責任はない」
下請けの作業員が亡くなった場合、元請け会社は「下請けの管理問題だ」として責任を否定することがあります。 しかし、建設現場においては、元請け業者には現場全体の安全を統括管理する義務があります。特にポンプ車のような大型機械を使用する作業では、元請けの指示や管理体制が重要視されます。弁護士は、元請け・下請け双方の責任を追求し、支払い能力のある側からの賠償確保を目指します。
6.まとめ:決して一人で悩まないでください

コンクリートポンプ車による事故は、その破壊力の大きさから、被害者やご遺族に甚大な苦痛をもたらします。 ホースの圧力管理や回転体の停止といった基本的なルールが守られていれば防げたはずの事故です。
会社に対して責任を追及することは、ご家族の生活を支えるため、そして二度と同じような事故を起こさせないためにも、非常に重要な意味を持ちます。
労災申請の手続きから、会社に対する損害賠償請求、示談交渉、訴訟に至るまで、専門家である弁護士が全面的にサポートいたします。 「会社と揉めたくない」「知識がなくて不安だ」という方も、まずは一度ご相談ください。あなたの状況に合わせた最適な解決策をご提案します。
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