80歳代の交通死亡事故。年金暮らし・無職でも慰謝料や逸失利益は請求できる?適正な賠償額とご遺族が知るべき知識【弁護士が解説】

さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。

近年、埼玉県内やさいたま市内において、65歳以上の高齢者の交通死亡事故が増加傾向にあり、非常に痛ましい報道を目にすることが増えています。 80歳代といったご高齢の方が交通事故で亡くなられた場合、残されたご配偶者やお子様などのご遺族は、深い悲しみの中で、加害者側の保険会社との対応を迫られることになります。

その際、ご遺族からよくいただくご相談があります。「80歳と高齢で、もう仕事も引退していた。賠償金は低いのではないか?」 「保険会社から提示された金額が妥当なのか分からない」 「年金しか収入がなかったが、逸失利益は認められるのか?」

結論から申し上げますと、「高齢だから賠償金が安い」と諦める必要は全くありません。80歳の方であっても、法的に適正な主張を行えば、数千万円規模の損害賠償請求が認められるケースは多々あります。 しかし、保険会社は営利企業であるため、知識のないご遺族に対しては、本来支払われるべき金額よりも大幅に低い金額(任意保険基準)で示談を迫ってくることが一般的です。

本記事では、80歳(高齢者)の死亡事故における死亡慰謝料の相場等について、交通事故チームの弁護士が解説します。

80歳の死亡事故でも「高額な賠償」は認められます

80歳の死亡事故でも「高額な賠償」は認められます

まず、交通死亡事故における損害賠償は、被害者の年齢に関わらず、法的なルールに基づいて厳格に算定されるべきものです。 80歳の方が亡くなられた場合に請求できる主な損害項目は以下の通りです。

死亡事故の賠償額の計算は、以下の表のA~Cの合計額です。

A 葬儀・治療関連費葬儀関係費用・(死亡までの)治療費等
B 死亡慰謝料被害者に対する慰謝料
被害者の近親者(家族)に対する慰謝料
C 死亡逸失利益残りの人生で予想される収入減少の補償
※事故前年収入や労働能力喪失率を基準に算定
D治療関係費事故から亡くなられるまでにかかった治療費や入院費など。

これらについて、保険会社が提示してくる金額と、弁護士が介入して裁判基準(弁護士基準)で計算した金額には、数百万円から一千万円以上の開きが出ることがあります。 まずは、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

死亡慰謝料の相場と「3つの基準」

死亡慰謝料の相場と「3つの基準」

死亡慰謝料は、被害者が亡くなられたことによる精神的苦痛を金銭に換算したものです。 この金額を決めるにあたっては、以下の「3つの基準」が存在することを知っておく必要があります。

  1. 自賠責基準 国が定めた最低限の補償基準です。3つの基準の中で最も低額になります。
  2. 任意保険基準 各保険会社が独自に定めている基準です。自賠責基準よりは高いこともありますが、次に述べる弁護士基準には及びません。
  3. 弁護士基準(裁判基準) 過去の裁判例をもとに設定された基準です。3つの基準の中で最も高額であり、法的に認められる「正当な賠償額」です。

80歳(高齢者)の死亡慰謝料の相場(弁護士基準)

弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の家庭内での役割によって相場が決まっています。 80歳の方の場合、多くは「その他(高齢者・独身者など)」に分類されますが、それでも以下の金額が相場となります。

  • 高齢者・独身者など:2,000万円~2,200万円
  • (参考)配偶者・母親など:2,400万円~2,500万円
  • (参考)一家の支柱の場合:2,800万円

ここで重要なのは、80歳であっても「一家の支柱」や「配偶者」としての役割が評価される可能性があるという点です。 例えば、80歳の男性がご自身の年金で同居の配偶者(妻)を扶養していた場合、「一家の支柱」に準ずるとして、2,000万円よりも高い慰謝料(2,500万円~2,800万円程度)を主張できる余地があります。

一方、保険会社の提示額は、自賠責基準や任意保険基準を用いるため、1,000万円~1,500万円程度に留まることが少なくありません。弁護士が交渉することで、この差額(約1,000万円前後)を埋め、適正な慰謝料を獲得することを目指します。

 80歳でも「逸失利益」は請求できるのか?

 80歳でも「逸失利益」は請求できるのか?

ご遺族が最も疑問に思われるのが、「逸失利益」です。 逸失利益とは、「生きていれば将来得られたはずの収入」のことです。「80歳でもう仕事も退職していた場合、将来の収入はないのだから、逸失利益はゼロではないか?」と考える方もいらっしゃいます。 しかし、「年金」も逸失利益の基礎収入として認められます

① 年金収入による逸失利益

年金受給者の場合、受給していた年金額を基礎収入として計算します。 ただし、すべての年金が対象となるわけではありません。

  • 認められる年金:老齢年金、障害年金など(被害者の生存・拠出に基づき支給されるもの)。
  • 認められない場合がある年金:遺族年金など(給付の性格上、逸失利益性が否定されることがあります)。

② 給与収入がある場合(現役で働いている場合)

80歳でも、自営業やパート、会社の役員などで現役で働いている方は珍しくありません。 その場合、「実収入(給与)」と「年金」の両方を合算して基礎収入とすることができます。 保険会社は「高齢なので年金か給与のどちらか一方だけ」と主張してくることがありますが、これは誤りであるケースが多いため注意が必要です。

③ 家事従事者(主婦・主夫)の場合

80歳の女性(または男性)で、配偶者や家族のために家事を行っていた場合、「家事従事者」としての逸失利益が認められる可能性があります。 この場合、賃金センサス(平均賃金)を参考に基礎収入を算出しますが、高齢者の場合は年齢別平均賃金を用いたり、一定の減額が行われたりすることがあります。それでも「収入ゼロ」として扱われるよりは、高額な賠償となります。

逸失利益の計算方法と80歳の特有事情

逸失利益は以下の計算式で算出されます。

【計算式】 基礎収入(年額) × (1 - 生活費控除率) × 平均余命までの年数に対応するライプニッツ係数

それぞれの項目について、80歳の方特有の事情を解説します。

(1) 生活費控除率の攻防

亡くなられたことで、将来かかるはずだった生活費がかからなくなるため、その分を賠償額から差し引きます(控除します)。 要は、死亡事故により生活費がかからなくなる場合に、控除されるものです。
年金生活者の場合、収入に占める生活費の割合が高いと考えられるため、生活費控除率は通常よりも高く設定される傾向にあり、50%~60%とされる裁判例が多くあります。 しかし、もし、被害者が「一家の支柱」であった場合(配偶者を扶養していた場合など)は、生活費控除率を30%~40%に抑えるよう主張することが可能です。

  • 控除率60%の場合 → 年金の4割が逸失利益
  • 控除率40%の場合 → 年金の6割が逸失利益

このように、控除率が10%変わるだけで、受取額が大きく変動するため、弁護士は家族構成や生活実態を詳細に主張し、適正な控除率を目指して交渉します。

目安として、一家の支柱で被扶養者が一人の場合40%
被扶養者が二人の場合30%
女性(主婦・独身・幼児等も含む)の場合30%
男性(独身・幼児等含む。)の場合50%

(2) 算定期間(ライプニッツ係数)

就労可能年数は原則67歳までとされていますが、80歳の方のようにすでに67歳を超えている場合は、「平均余命の2分の1」程度の期間を就労可能期間(逸失利益の対象期間)として計算することが一般的です。

例えば、80歳男性の平均余命が約9年だとすると、その半分の「4年〜5年」分の年金収入が逸失利益として認められる可能性があります。 「平均余命まで全期間ではないのか?」と思われるかもしれませんが、高齢者の場合、将来的に稼働できなくなるリスクなどを考慮し、実務上は短縮される傾向にあります。

ただし、年金逸失利益に関しては、生存している限り受け取れる性質のものであるため、死亡逸失利益の対象となる期間は、平均余命までの期間です。

年齢ごとの平均余命は「厚生労働省のホームページ」をご覧ください。

葬儀費用や治療費について

葬儀費用や治療費について

慰謝料と逸失利益以外にも、以下の費用が請求可能です。

(1) 葬儀関係費用

葬儀費用については、弁護士基準で原則150万円を上限として認められます。 保険会社は、自賠責基準である「60万円」や、任意保険基準である「100万円」程度を提示してくることが多いですが、実際にかかった費用が150万円以上であれば、150万円までは認められるのが通常です(香典返し等は含みません)。

(2) 治療関係費・付添看護費

事故に遭われてから亡くなるまでの間に入院・治療をされていた場合、その期間の治療費、入院費、付添看護費(近親者付添の場合は1日6,500円程度)、通院交通費なども請求できます。

弁護士費用特約を活用しましょう

弁護士費用特約を活用しましょう

「弁護士に頼むと費用が高額になるのではないか」と心配される方もいらっしゃるでしょう。 そこで確認していただきたいのが、ご自身やご家族が加入している自動車保険や火災保険に付帯している【弁護士費用特約】です。

弁護士費用特約のメリット

  • 費用負担なし:通常300万円まで弁護士費用が保険から支払われます。多くのケースでは、自己負担ゼロで依頼が可能です。300万円を超える場合は、超えた分を、保険金から支払うことになります。
  • 家族の保険も使える:被害者ご本人が車を持っていなくても(免許返納済みでも)、同居のご家族や、別居の未婚のお子様などが加入している保険の特約を使える場合があります。
  • 等級は下がらない:特約を使っても、翌年の保険料が上がることはありません。

死亡事故の場合、賠償金が高額になるため、弁護士報酬(成功報酬)が300万円を超えるケースもあります。 しかし、その場合でも「着手金」などの初期費用は特約で賄えることが多く、300万円を超えた分については、獲得した賠償金(増額分)から精算する形になるため、ご遺族の持ち出し(赤字)になることはないと思われます。

まずは、保険証券をご確認いただくか、保険代理店にお問い合わせください。

解決事例のイメージ(シミュレーション)

解決事例のイメージ(シミュレーション)

具体的なイメージを持っていただくため、80歳男性(年金受給)のケースで、保険会社提示額と弁護士介入後の解決額をシミュレーションしてみます。

【モデルケース】

  • 被害者:80歳男性(無職・年金受給者)
  • 家族構成:妻(78歳)と二人暮らし。子供は独立。
  • 年金収入:年額200万円

■保険会社の提示額(イメージ)

  • 死亡慰謝料:1,300万円(任意保険基準)
  • 逸失利益:0円(「高齢で無職のため」として否定、または極めて低額)
  • 葬儀費用:100万円
  • 合計:約1,400万円

■弁護士介入後の解決額(イメージ)

  • 死亡慰謝料:2,500万円 (妻を扶養していた実態を主張し、通常の高齢者基準2,000万円から増額して交渉)
  • 逸失利益:約780万円 (計算式:年金200万円 ×(1-生活費控除率0.50)× 7.786(80歳平均余命約9年のライプニッツ係数) ※保険会社は生活費控除率60%以上を主張することが多いですが、弁護士が粘り強く交渉し50%を認めさせた場合の計算です。
  • 葬儀費用:150万円(弁護士基準の上限)
  • 合計:約3,430万円

このように、弁護士が入ることで、賠償額が増額)になるケースがほとんどです。本来受け取るべき「正当な基準(弁護士基準)」で計算し直した結果にすぎません。 保険会社の提示額を鵜呑みにせず、必ず専門家のチェックを受けることが重要です。

ご相談・ご質問

ご相談・ご質問

80歳というご高齢であっても、交通事故で命を奪われた無念さは変わりません。 長年社会に貢献し、ご家族を支えてこられた方の最期が、不当に低い評価で終わらされて良いはずがありません。適正な賠償を受けることは、故人の尊厳を守るためにも重要なことです。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。

「保険会社の提示額に納得がいかない」「そもそも何から手を付けていいか分からない」といったお悩みをお持ちの方は、まずは一度お気軽にご相談ください。 弁護士費用特約の有無にかかわらず、親身になってアドバイスさせていただきます。

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ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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