【学校・いじめ】「別室指導」は誰のためのものか?――いじめ防止対策推進法と「学びの場」をめぐる法的視点

いじめ防止対策推進法第23条第4項は、被害児童生徒が安心して教育を受けられるよう、必要に応じて加害児童生徒を別室で指導する措置を定めています。これは被害者の学習権を守るための規定であり、出席停止とは異なり学校の判断で機動的に実施可能です。被害者が教室を追われる現状を改め、法に基づき加害側への別室指導や組織的な対応を徹底し、被害者の安全と尊厳を最優先に守る運用が求められます。

別室指導

別室指導

学校生活において、いじめや人間関係のトラブル、あるいは不登校など様々な理由により、通常の教室(ホームルーム)で授業を受けることが困難になるケースがあります。そうした場合に検討されるのが「別室指導」や「別室登校」です。

一般的に「別室」というと、不登校傾向にある児童生徒や、いじめ被害を受けた子どもが避難的に過ごす場所(保健室や相談室、校内適応指導教室など)をイメージされることが多いかもしれません。しかし、法律の規定に目を向けると、実は「加害児童生徒」を対象とした別室指導の規定が明確に存在することをご存知でしょうか。

今回は、いじめ問題における「別室指導」の法的根拠や、出席停止措置との違い、そして学校や保護者が知っておくべき法的視点について、弁護士の立場から解説します。

いじめ加害者に対する「別室指導」の法的根拠

いじめ加害者に対する「別室指導」の法的根拠

いじめが発生した際、被害者が教室にいられなくなり、図書室や保健室へ追いやられる…

このような「被害者が我慢する」構図は、長らく学校現場の課題とされてきました。しかし、2013年(平成25年)に施行された「いじめ防止対策推進法」は、この状況を変えるための規定を設けています。

いじめ防止対策推進法第23条第4項には、次のように規定されています。

学校は、前項の場合(いじめが確認され、指導等を行う場合)において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。

つまり、法律は「いじめを行った側」を別室で指導し、被害者が安心して教室で授業を受けられる環境を整えることを学校に求めているのです。これは、いじめを受けた児童生徒の「教育を受ける権利」を守るための措置であり、被害者が不当に学習の機会を奪われないようにするための重要な規定です。

この措置は、単なる隔離や懲罰ではありません。加害児童生徒に対しても、その保護者への助言を行いつつ、心理・福祉の専門家の協力を得ながら継続的な指導を行うことが求められており、教育的な配慮の下で行われるべきものです。

「出席停止」との違いと運用の実態

加害児童生徒に対する措置として、別室指導よりもさらに重い措置に「出席停止」があります。

これは学校教育法第35条に基づくもので、市町村の教育委員会が、性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認める場合に、保護者に対して児童生徒の出席停止を命じることができる制度です。

いじめ防止対策推進法に基づく文部科学省の指針(基本方針)では、いじめを受けた児童生徒が安心して教育を受けられるようにするため、状況に応じてこの出席停止制度を速やかに活用することが求められています。

別室指導と出席停止の違い

別室指導と出席停止の違い

「別室指導」と「出席停止」の大きな違いは、前者が「学校内での学習場所の変更」であるのに対し、後者は「学校への登校自体を認めない」点にあります。

現場の実務感覚としては、出席停止はハードルが高いと感じられることも多いですが、法第23条第4項に基づく別室指導であれば、校長や教員の判断(学校の組織的決定)により、より機動的に実施することが可能です。

しかし、現実には多くのケースで、いじめを受けた被害者側が別室登校を余儀なくされ、加害者が教室に残るという「逆転現象」が依然として生じています

これについて文部科学省のガイドライン等は、いじめの解消の定義として「被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと」を挙げており、被害者が教室に入れない状況が続いているのであれば、それはいじめが解消されていない状態であると言わざるを得ません

被害者が別室登校・不登校になった場合の「重大事態」

被害者が別室登校・不登校になった場合の「重大事態」

いじめによって被害児童生徒が教室に入れなくなり、別室登校や欠席を余儀なくされる状況は、法的に重い意味を持ちます。

いじめ防止対策推進法第28条は、「重大事態」として2つのケースを定義しています。

1号 いじめにより生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある場合(第1号)
2号 いじめにより相当の期間(年間30日が目安)学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合(第2号)

もし、学校側の対応が不十分で、加害者への別室指導等の措置が講じられず、結果として被害者が教室に行けなくなり「不登校(別室登校を含む場合もある)」状態になった場合、これは法第28条第1項第2号の「重大事態」に該当する可能性があります。

重大事態と認定された場合、学校の設置者(教育委員会や学校法人)は速やかに調査組織を設け、事実関係を明確にするための詳細な調査を行わなければなりません。

この際、調査は民事・刑事上の責任追及を直接の目的とするものではありませんが、被害児童生徒の尊厳を保持し、再発防止策を講じるために、事実関係を網羅的に明らかにすることが求められます。

保護者の方から「いじめにより重大な被害が生じた」「いじめで学校に行けなくなった」という申し立てがあった場合、学校が「いじめの結果ではない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査に当たらなければならないとされています。

児童生徒の権利と「こども基本法」の視点

児童生徒の権利と「こども基本法」の視点

2023年(令和5年)4月に施行された「こども基本法」は、すべての子どもについて、個人として尊重され、基本的人権が保障されること、そして教育を受ける機会が等しく与えられることを基本理念として掲げています。

この理念に照らせば、いじめによって「安心して教育を受ける権利」が侵害されている状態は、早急に是正されなければなりません。

また、いじめの加害児童生徒に対しても、ただ排除するのではなく、なぜいじめに至ったのかという背景(ストレスや家庭環境、特性など)をアセスメントし、成長支援の観点から指導を行うことが重要です。

加害児童生徒を別室で指導する場合であっても、学習の遅れが生じないような支援や、スクールカウンセラー等による心理的ケアが必要です。

つまり、別室指導は「懲罰部屋」ではなく、被害者の安全確保と、加害者の行動変容・学習保障を両立させるための「教育的措置」として運用されるべきなのです。

学校・保護者がとるべき対応

学校・保護者がとるべき対応

【学校側の留意点】
学校はいじめを認知した場合、特定の教員が抱え込むのではなく、「学校いじめ対策組織」を通じて組織的に対応する必要があります。

加害者への別室指導を行うかどうかの判断も、この組織的な検討の中で行われるべきです。 また、いじめが犯罪行為(暴行、傷害、器物損壊、強要など)に相当すると認められる場合は、ためらうことなく警察に相談・通報し、連携して対処することが求められています。

【保護者側の留意点】
もし、お子さんがいじめ被害に遭い、「教室に行くのが怖い」と訴えている場合、無理に教室に行かせる必要はありません。しかし、その状態が「仕方がないこと」として固定化されないよう、学校に対して法第23条第4項に基づく措置(加害者の別室指導等)や、安全確保のための具体的な対策を要望することは法的に正当な権利です。

相談の際は、口頭だけでなく、要望書などの書面を用いる、あるいは学校との協議内容を記録に残すことが重要です。

おわりに

おわりに

いじめ対応において最も優先されるべきは、被害児童生徒の心身の安全と尊厳です。

「加害者を別室にするなんてかわいそう」という誤った配慮や、「喧嘩両成敗」といった前時代的な感覚で対応が遅れることは、いじめ対応をゆがめるおそれがあります。

しかし、実際に実務では、出席停止はおろか、別室指導についても慎重なあまり措置を講じないケースが後を絶ちません。このような措置を講じないことが直ちに学校側の違法ということは簡単ではありませんが、不適切の積み重ねや法的に裁量のない部分(例えば、重大事態の疑いがあるのに重大事態調査をしない裁量はない。)についてはその違法性を声高に主張し、司法の場で決着を付けなければならない場面も増えていくのではないでしょうか。

法は、被害者が安心して学べる環境を作るために、学校に対して強い権限と責務を与えています。別室指導や出席停止といった措置は、そのための重要なツールの一つです。いじめ問題に直面した際は、感情的な対立にとどまらず、「法律はどう定めているか」「子どもの権利はどう守られるべきか」という冷静な視点を持つことが、解決への第一歩となります。

学校の対応に疑問を感じたり、重大事態の申し立てを検討されたりする場合は、いじめ問題に詳しい弁護士などの専門家や、法務局の人権相談窓口、自治体の相談窓口へご相談ください。子どもたちの未来を守るために、法を正しく知り、活用していきましょう。

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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