令和元年に民法改正が改正され特別寄与料制度が誕生しました。

従来の寄与分とは、相続人でなければ請求することはできないものでした。

これに対し、特別寄与料は相続人ではない親族が請求できるものです。

したがって、特別寄与料制度によって、被相続人の介護をした相続人ではない親族の労力が報われることがあります。

本コラムでは、そのような特別寄与料の制度の内容や請求の仕方について解説します。

特別寄与料制度とは

特別寄与料は、民法改正により令和元年7月1日から始まった制度です。

特別寄与料とは、被相続人に対して、無償で療養看護などの労務を提供したことによって、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした親族がいる場合、その親族が相続人に対し寄与の程度に応じた金銭を請求することができるという制度です(民法1050条)。

特別寄与料を請求できる要件

特別寄与料を請求するためには以下の要件を備えていることが必要です。

被相続人の親族であること

特別寄与料を請求できるのは、被相続人の相続人以外の親族です。

すなわち、六親等以内の血族又は三親等以内の姻族が特別寄与料を請求することができます。

血族とは、血族関係にある人をいい、血のつながりがある人物(自然血族)だけでなく養子縁組を組み親子関係が生じた人(法定血族)もこれに含まれます。六親等以内の血族とは、被相続人の子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪、叔父叔母、いとこ等が不無まれます。

姻族とは、配偶者の血族のことをいいます。三親等以内の姻族とは、被相続人の義父母(配偶者の父母)、義祖父母(配偶者の祖父母)、義叔父叔母や義甥姪などがこれに含まれます。

そのような人が特別寄与料を請求することができる可能性があります。

もっとも、相続放棄、相続欠格、相続人排除によって相続権を失った者は、特別寄与料を請求できません(民法1050条かっこ書)。

そして、被相続人の内縁の配偶者は、法律上被相続人の「親族」には当たらないため、特別寄与料を請求することはできません。

被相続人の介護等を無償で行ったこと

特別寄与料を請求するためには、生前の被相続人の介護等の労務の提供をしたことが必要です。

加えて、その労務の提供について、無償で行われていることが必要です。

労務提供によって被相続人の財産の維持又は増加に貢献したこと

労務提供によって被相続人の財産の維持や増加に貢献したといえることが必要です。

例えば介護サービスを利用する代わりに、親族が被相続人を介護していた場合には、被相続人の労務提供によって介護費用の支払いを抑えられているといえ、被相続人の財産の維持に貢献したといえます。

「特別の寄与」といえること

特別寄与料が認められるためには、単なる寄与では足りず「特別の寄与」である必要があります。

特別寄与料において「特別の寄与」と言えるためには、「その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度に顕著な貢献」がある必要があります。

一方で、寄与分(介護等をした相続人が主張できる権利)が認められるためにも、「特別の寄与」行為が必要であるとされていますが、寄与分の場合の「特別の寄与」とは、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える程度の貢献であるとされています。

このように、特別寄与料の「特別の寄与」は、寄与分の「特別の寄与」とは考え方が異なりますので注意が必要です。

特別寄与料は請求できる期限があることに注意!

特別寄与料は請求することができる期限が定められています(民法1050条2項但し書き)。

・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき
・相続開始の時から1年を経過したとき

このように特別寄与料を請求することができる期間は非常に短いため、期限を徒過しないよう注意する必要があります。

よって、被相続人が亡くなったことを知った際には、すぐに動き出す必要があるといえます。

特別寄与料の計算方法について

特別寄与料の計算方法は法律で決まってはいません。

もっとも、家庭裁判所は、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。」と規定しています(民法1050条3項)。

そして実務上、特別寄与料の目安を以下のような考え方で計算していることが多いです。2つのパターンに分けて紹介します。

療養看護型

被相続人の介護をしたような場合

介護日数×介護報酬相当額×裁量割合(0.5~0.9)

裁量割合とは、親族には元々被相続人の扶養義務があること、介護従事者と異なり介護の専門家ではないことを理由に、費用を介護事業者の場合よりも控えめに計算するためのものです。

家業従事型

被相続人の事業に従事したような場合

特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1―生活費控除割合)×寄与期間

生活費控除割合とは、家業に従事している場合、労働に対する報酬が生活費等の形で家業収入の中から支出されていることが多いので、これを控除するためのものです。

特別寄与料を請求するには…

特別寄与料を相続人に対し請求するには以下の方法があります。

相続人と直接交渉する

特別寄与料を請求する場合、まず自分で相続人と話し合いをしてみることになります。

もっとも、自分と相続人では話し合いがまとまらないのであれば次のステップに進むことをおすすめします。

弁護士に依頼し交渉をしてもらう

相続人と直接話し合いを行うことが難しいということであれば、弁護士に依頼し、代わりに相続人と交渉してもらうことが有効な場合があります。

弁護士の法的根拠に基づいた説明が有れば当事者間の合意が得られる可能性も高まります。

家庭裁判所で調停を申し立てる

当事者間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に対し特別の寄与に関する処分調停を申し立てることができます。

調停では当事者双方からの事情の説明や,提出された資料等を踏まえ、裁判官や調停委員が解決案を提示したり,助言をしたりするなどして,当事者間の合意を目指した話合いが進められます。

調停で話し合いがまとまらず調停が不調となった場合には、審判手続が開始されます。

まとめ

・特別寄与料とは、被相続人でない者が相続人の介護等をした場合に親族に対し、金銭の支払いを請求できる制度
・特別寄与料を請求する場合、弁護士に依頼すると有効な場合がある

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 椎名 慧
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