ご相談内容

先日、生前そこまで付き合いのなかった親の兄弟が亡くなりました。

その時点で既に親は亡くなっていたため、兄弟の葬儀等は別の兄弟が取り仕切りました。

そのような中、数日前に金融業者から私宛に書面が届きました。

内容を確認したところ、亡くなった親の兄弟はその金融業者から相当の借金をして返済をしないままの状態となっているため、相続人としてその返済をしてほしいというものでした。

親の兄弟の借金を私が返す必要が本当にあるのでしょうか。

親族の死亡後に債権者を名乗る人物から負債の返済を求める書面が送付されるということは起こりうるシチュエーションです。

債権者の主張する債権の存在を法的に否定できない場合には相続人として適切な対応をとる必要があります。

今回は、親族が亡くなった後に負債が発覚した場合の対応について解説をしていきます。

相続人となるパターン

今回のケースでまず検討すべきは自身が相続人に該当するかどうかという点です。

親の兄弟が亡くなり、相談者が相続人となるケースに以下のパターンが考えられます。

親の兄弟に婚姻歴がなく、祖父母も既に亡くなっている場合

誰がどのような順位で相続人となるかを相続順位といいますが、法律上、子→親→兄弟の順で相続人となるということが定められています。

親の兄弟に婚姻歴がなく、祖父母も既に亡くなっている場合、親の兄弟が亡くなった時点で存在する相続人は兄弟しかいないため、兄弟が相続人となります。

そして、相続人となるべき兄弟のうち既になくなっている人物が存在する場合でその者に子がいる場合にはその子が既に亡くなっている兄弟に代わって相続人(代襲相続人)となります。

親の兄弟に兄弟以外の相続人が存在したがその者が相続放棄をした場合

親の兄弟に子がいた場合、子が第一順位の相続人となるため、子が相続をすれば親や兄弟が相続人となることはありませんが、子が相続放棄をした場合、親や兄弟に相続権が回ってきます。

親の兄弟に子がいたが、負債の存在から相続放棄を行い、祖父母は既に亡くなっているという場合、兄弟が相続人となり、兄弟のうち既になくなっている人物が存在する場合にはその子が既に亡くなっている兄弟に代わって相続人(代襲相続人)となります。

相続を放棄する

自身が親の兄弟の相続人に該当する場合、相続人として残された負債の処理を適切に行う必要があります。

親の兄弟とは生前にあまり付き合いがなかったということですから、相続人となったからといって親の兄弟の負債を債権者に言われるがまま返済するという方法はあまり考えられません。

その場合、相続人としてとるべき方法は相続の放棄です。

相続放棄とは、相続の対象となる人物(今回の場合は親の兄弟)の権利義務についていずれも受け継がないという意思を表明することをいいます。

相続放棄をした場合、相続の対象となる人物のプラスの財産を引き継ぐことはできませんが同様にマイナスの財産についても責任を負うことがなくなります。

相続放棄の手続

相続放棄の手続については多くの誤解がように感じています。

親族が集まった場で自身は相続をしないと宣言をして親族がそれを受け入れてくれたという話をよく聞きますが、他の相続人や債権者に対して自身は相続しない旨を伝えただけでは法的に相続放棄をしたことにはなりません。

法的に有効な相続放棄を行うためには相続の対象となる人物の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄をするという申述を行う必要があります。

また、相続放棄は法律で定められた一定期間内に行わなければなりません。

その期間は原則として自身が相続人となったことを知った日から3か月以内とされています。

自身が第一順位の相続人である場合は相続の対象となる人物が亡くなったことを知ってから3か月以内に相続放棄をすべきということになり、先順位の相続人が相続放棄を行った結果自身が相続人となったという場合にはそのことを知った日から知ってから3か月以内に相続放棄をすべきということになります。

家庭裁判所に相続放棄の申述を行うためには、相続の対象となる人物が亡くなったことが分かる資料、自身が相続人となっていることが分かる資料、自身の戸籍謄本等が必要となります。

場合によっては大量の戸籍謄本を取得する必要があるため、資料収集にはそれなりの時間がかかるということを想定しておいた方がよいかもしれません。

まとめ

負債の存在を伝える債権者からの書面は突然届くものですが、そのような書類が届いた場合には冷静に対応することが何より重要です。

避けていただきたいのは自分には関係がないだろうと判断して放っておくという対応です。

通常、債権者は戸籍関係を調査した上で相続人に対して返済を求める書面を送付してくるため、放置して問題が解決するということは少なく、その間に相続放棄ができる期間を経過してしまった場合、法的に返済をしなければならない地位に置かれることになりますので、注意が必要です。

身に覚えはないが少し前に亡くなった親族に関する書類が届いたという場合には慌てず専門家である弁護士に相談をした上で適切な対応をとることをお勧めいたします。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二

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