こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

「うちは下請法に該当しないから大丈夫」だと安易に考えていませんか?―そう考えている経営者や営業幹部の方こそ注意が必要です。資本金の多寡に関わらず、取引上の立場を利用して相手に不利益を強いる行為は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」として厳しく罰せられます。「協力金」や「返品」などの行為が慣習化してしまっていると、独占禁止法違反により、多額の課徴金を課せられてしまう恐れがあります。本コラムでは、取引先への「お願い」が法的な「リスク」に変わる境界線を徹底解説します。

取引先に対し、無理なお願いをしていないか?

ビジネスの現場では、目標達成や在庫処理のために、取引先に対して「無理なお願い」をしてしまう局面があるかと思います。例えば、「今月、目標に少し届かないから、この商品を少し多めに仕入れてくれないか?」、「新店オープンの協賛金として、売上の数パーセントを拠出してほしい」、 「リニューアルで棚替えをするから、旧在庫はすべて引き取ってほしい」などといったお願いです。

これらの行為は、多くの業界で「長年の慣習」として行われてきた側面があります。これは、担当者同士の人間関係があり、双方が納得しているように見えるため、問題意識を持たれにくいのが実情でした。しかし、こういったお願い行為は、独占禁止法(独禁法)に違反する恐れが高いと考えられます。担当者が「合意」の上だと思っていても、公正取引委員会(公取委)により、「優越的地位の濫用」という独占禁止法に違法する行為だと判断されてしまうケースがあります。

「優越的地位の濫用」とは何か?(下請法との違い)

独占禁止法と下請法について、混同されている方も多いかと思います。

下請法は、親事業者の資本金と下請事業者の資本金の「金額の差」により適用の有無が決まる法律です。そのため、資本金の条件に当てはまらなければ、「うちは規制対象外だ」と誤解されることが少なくありません。 しかし、独禁法の「優越的地位の濫用」に、そのような資本金の条件はありません。

ここで、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たり得るかの判断基準は、簡単に言うと、「取引上の立場が相手より勝っているかどうか」となります。もし取引の相手方が、こちらとの取引を打ち切られると経営に大きな支障をきたすような状況であれば、そこに「優越的地位」が認定される可能性があります。例えば、特定の商材において、取引の相手方がこちらの会社に依存していれば、こちらは「優越的な地位」にあることになり得るといえます。その優越的地位を利用して、正常な商慣習に照らし、取引の相手方に対して不当に不利益を与えることは、取引市場の公正な競争を阻害する行為として厳しく制限されることとなります。

現場でやってしまいがちな「アウト」の具体例

では、どのような行為が「濫用」とされるのか、代表的なケースを挙げます。

1. 「金銭」の要求

最も多いのが、名目の不透明な金銭の徴収です。 「協力金」、「協賛金」、「センターフィー」といった名目で、具体的な計算根拠を示さずに金銭を拠出させる行為です。また、当初の契約にないにもかかわらず、支払段階になって一方的に値引きを行うことも、不当な不利益の押し付けとみなされる可能性があります。

2. 「商品・サービス」の押し付け

取引継続や条件維持を条件に、相手が求めていない自社製品や関連会社のサービスを購入させる行為です。これは「抱き合わせ販売」に近い性質を持ち、相手の自由な選択権を奪うものと考えられます。

3. 「不利益」の押し付け

例えば、「納品した商品が売れ残ったから」という理由だけで、相手に非がないのに返品する行為や、契約にないのに店舗の棚出しや販促支援に、相手の従業員を無償で派遣させるといった行為は、立場が弱い側が拒否できないことを利用した不当な要求とみなされる可能性が高いと言えます。

なぜ「合意しているから大丈夫」と言えないのか

現場の担当者は、「取引の相手方も納得していた」、「無理強いはしていない」などと考えることも多いかと思いますが、公取委の判断はよりシビアだと言えます。

公取委は、その合意が真意に基づくものかを注視するため、「断れば次の契約が更新されないかもしれない」、「他の案件で不利な扱いを受けるかもしれない」などという恐怖心が取引の相手方にある場合には、法的に有効な合意とは認めない可能性が高いといえます。口頭でのお願いであっても、取引の相手方が断りにくい状況であれば、それは「強要」と同じ結果をもたらすと考えられます。

公取委の調査が入った時のインパクト

優越的地位の濫用(継続して行われる違反行為)は、「課徴金制度」の対象となっています。

違反行為の対象となった取引額の「1%」が課徴金として課されます。取引規模が大きければ、その額は数億円に達することも珍しくありません。また、実名での公表による「企業イメージの毀損」は計り知れず、消費者からの信頼に致命的な打撃を与え得るリスクがあります。加えて、損害を被った取引先から民事上の損害賠償を請求されるリスクも抱えることになります。

まとめ

上記で述べた通り、協力金などを求める行為が慣習化してしまうと、なかなか法的な問題点に気が付かないこともあるかと思います。この点、問題がないと思っていた行為が、万が一にも、優越的地位の濫用に当たり、公取委から課徴金の納付を課されてしまうと、企業に対する毀損は計り知れません。

これらの複雑かつ専門的な手続の中で、企業が冷静に対応し、最大限の防御を行うためには、独占禁止法に精通した弁護士のサポートが不可欠です。

独占禁止法は専門的な法分野だといえますので、お悩みの際には、同法に精通した弁護士に一度ご相談されることをお勧めいたします。

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