肖像権、パブリシティー権がどのようなものかを述べ、また、どのような場合に、これらの権利を侵害したことになるのかについて、判例をもとに考えてみました。さらにプライバシーの権利との違いについても触れました。

1 肖像権

  人は、その承諾なしに、みだりに容ぼう、姿態を撮影されない権利を有し、また、撮影された写真をみだりに公表されない権利を有するとされており、この権利を肖像権と呼んでいます。

  この権利は、法律上明記されているわけではなく、国民の私生活上の自由を規定している憲法13条にもとづくものとされています。

   ※ 憲法13条

     「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

2 パブリシティー権

  肖像権と似たものにパブリシティー権があります。

パブリシティー権とは、個人の名前、肖像、個性的な特徴などが、商品の販売などを促進する顧客吸引力を有する場合に、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利を言います。一般的に、有名人や公共の関心を持たれている人々がこれを持っています。

パブリシティー権は肖像権の一種ですが、肖像権と違って、肖像などの財産的価値に着目した権利とされています。

3 肖像権、パブリシティー権の侵害が違法になる場合

⑴ 肖像権の場合

ア 不法行為が成立する場合

人の承諾なしに容ぼう、姿態を撮影しても、それが直ちに肖像権の侵害となり、不法行為責任が発生するということにはなりません。例えば、風景写真を撮ったときに、その近くにいた人が写真に入ってしまったとしても、それで不法行為が成立するわけではありません。

最高裁判所平成17年11月10日判決は、どの様な場合に肖像権の侵害が不法行為となり、損害賠償義務が発生するかについて、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものと言えるかどうかを判断して決すべきだとしました。

この最高裁判所の事案は、週刊誌のカメラマンが小型カメラを法廷に隠して持ち込み、傍聴席から腰縄を付けられた状態の被告人を撮影したというものですが、この場合には不法行為が成立するとしました。

ところで、近年では、AがBの了解を得てBの写真を撮り、その後、嫌がらせ目的でBの了解なしにBの写真をインターネット状に公開するということがありますが、このような行為も事情によっては肖像権の侵害になり得ると考えられます。

イ イラストの場合

    すでに述べたように、肖像権とは、承諾なしに、みだりに容ぼう、姿態を撮影されない権利、また、撮影された写真をみだりに公表されない権利を言いますが、それではイラストの場合はどうでしょうか。

    この最高裁判決は、人は自己の容ぼう、姿態を描写したイラストについてもみだりに公表されない人格的利益を有するとして、イラストについても肖像権が成立する場合があることを認め、ただ、イラストはその描写に作者の主観や技術を反映するものであり、公表された場合も、これを前提とした受け取り方をされるという特質が勘案されなければならないとしました。

    その上で、刑事事件の被告人について、法廷において訴訟関係人から資料を見せられている状態及び手ぶりを交えて話しているような状態の容ぼう、姿態を描いたイラストを写真週刊誌に掲載して公表した行為は不法行為にはならないとしましたが、法廷において手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態の容ぼう、姿態を写真週刊誌に公表した行為は、被告人を侮辱し、被告人の名誉感情を害するもので、受忍限度を超え、不法行為になって損害賠償責任が発生するとしました。

⑵ パブリシティー権の場合

   最高裁判所平成24年2月2日判決は、パブリシティー権の侵害が不法行為となる場合について次のように述べました。

   「肖像などに顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、肖像などを時事報道、論説、創作物などに利用されることもあるのであって、その使用を正当な表現としてなどとして受忍すべき場合もある。

   そうすると、肖像などを無断で使用する行為は、①肖像などそれ自体を独立して鑑賞の対象となる商品などとして使用し(プロマイド、グラビア写真など)、②商品などの差別化を図る目的で、肖像などを商品などに付し(キャラクター商品)、③肖像などを商品などの広告として使用するなど、専ら肖像などの有する顧客吸引力の利用を目的とすると言える場合に、パブリシティー権を侵害するものとして、不法行為が成立し違法となる。」

   この判決の事案は、平成18年頃、ダイエットに興味を持つ女性を中心として、ピンクレディーの曲に振り付けを利用したダイエット法が流行し、被上告人である週刊誌(「女性自身」)は、その週刊誌上に、「ピンク・レディーdeダイエット」をする記事を掲載し、このダイエット法を紹介したが、そこにピンクレディーの写真を14枚使用したというものです。

   判決では、以下のように述べ、ピンクレディーの記事の使用は上記の①②③のいずれにもあたらないから、パブリシティー権の侵害にはならず、不法行為は成立しないとしました。

「写真中のピンクレディーの肖像は顧客吸引力を有するが、本件記事の内容は,ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,ピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出などを紹介するものである。

そして,本件記事に使用された本件各写真は,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎない上,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8cm,横3.6cmないし縦8cm,横10cm程度のものであったというのである。

これらの事情に照らせば,本件各写真は,上記振り付けを利用したダイエット法を解説し,これに付随して子供の頃に上記振り付けをまねていたタレントの思い出などを紹介するに当たって,読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。」

   

4 プライバシー権との関係

  プライバシー権とは私生活をみだりに公開されない権利を言うとされています。

肖像権、パブリシティー権に比べるともっと広い権利になりますが、容ぼう、姿態を撮影したり、公表されない権利である肖像権、個人の名前、肖像、個性的な特徴などが、商品の販売などを促進する顧客吸引力を有する場合に、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利であるパブリシティー権とは、また違う権利であると言えます。

5 肖像権ガイドライン

  デジタルアーカイブ学会は、肖像権ガイドラインというガイドラインを発表し、どのような場合が肖像権の侵害になるかを示しています。

  すでに述べたとおり、どのような場合が肖像権の侵害になるかについて、最高裁判所平成17年11月10日判決は、「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものと言えるかどうかを判断して決すべきだ」としていますが、この基準ですと、どのような場合が肖像権の侵害となるのか明らかではありません。

  このガイドラインでは、どのような場合が肖像権の侵害になるか(公開に適するか)について、さまざまな例を+、-のポイントで示し、トータルのポイントがどうなるかによって、公開するしないの基準にしていますが、公開の適否を判断するのに非常に役に立つと思います。

  また、肖像権の侵害を認めた判例、認めなかった判例を示しているので、これを読むと大体の傾向を知ることができるように思います。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫

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