2023年のラーメン店の倒産件数(負債1,000万円以上)は45件で、2009年以降では過去最多となりました。食材費等が高騰するも適正な価格転嫁をしにくい状況が背景にあるようです。破産申立てをお考えのラーメン店経営者は、是非、経験豊富な弁護士に相談して下さい。

ラーメン店の倒産状況

2023年の倒産件数は45件で過去15年間では最多

株式会社東京商工リサーチの調査によると、2023年のラーメン店の倒産件数(負債1,000万円以上)は45件(前年比114.2%増)で、2013年の42件を上回り、2009年からの過去15年間で最多を更新したそうです。

また、倒産に至らないまでも「休廃業・解散」した件数は29件(前年比31.8%増)となり、「倒産」と同じく、過去15年間での最多となりました。

資本金別・従業員数別の倒産状況

2023年に倒産したラーメン店を資本金別に見ると、「1千万円未満」が40件で、倒産件数の約9割(構成比88.8%)を占めています。

内訳は、「1百万円未満」が2件、「1百万円以上5百万円未満」が18件、「5百万円以上1千万円未満」が2件であり、その一方で、「5千万円以上」は倒産した店がありませんでした。

また、従業員数別に見ると、「10人未満」が41件、「5人未満」が39件で、これらで、倒産件数の約9割(構成比86.6%)に達しています。

これらの分布から、ラーメン店の倒産は、小規模・零細企業で圧倒的に多く発生しているということが言えます。

地区別の倒産状況

同じく株式会社東京商工リサーチの調査によりますと、2023年のラーメン店倒産の地区別件数は、関東地方の14件が最も多く、全体の3割を占めました。

以下、中国地方の8件、近畿地方の7件、中部地方の6件、東北地方と九州地方の各4件と続いています。

これは、関東地方ではそもそもラーメン店の店舗数が多く、同業者との激しい競合に晒されていることによるものと言えるでしょう。

ラーメン店の倒産が増加した要因

コロナ禍のもとで、ラーメン店を含む飲食業界は、ゼロゼロ融資のほか、時短営業や休業に応じた店舗に対する補償など、手厚い支援を受けてきた印象があります。

そのコロナ禍も落ち着き、街に活気が戻ってきた昨今、それでもなぜ、ラーメン店の倒産は増加しているのでしょうか。

その主な要因としては、

■食材価格や光熱費(電気・ガス)など、経営に必要不可欠な物の「物価高」

■慢性的な「人手不足」(それに伴う人件費の上昇)

が挙げられます。

「物価高」と「人手不足」(人件費の上昇)を補うため、適切な価格転嫁ができればよいのですが、ラーメン店はもともと競合が激しい分野だけに、客離れを恐れて値上げができない、という一面があります。

(特に、ラーメンの場合、「1,000円」の壁という言葉も聞きます)

また、ラーメン店は、大がかりな店舗の確保や調理設備への投資を必要とせず、割と少ない開業資金で参入しやすい分野でもあります。

このため、もともと経済的体力の十分でない小規模・零細企業が、上記の「物価高」と「人手不足」(人件費の上昇)に耐え切れず、倒産件数を押し上げているとも言えます。

破産申立てを考えているラーメン店経営の方へ

ラーメン店破産の特殊性

債務超過に陥り、これ以上業績の回復も見込めないという場合は、苦渋の決断として、会社を倒産させる、すなわち、会社の破産申立てを行うことも考えなければなりません。

ラーメン店だからといって、他の業種に比べて破産申立てが難しくなるということはありませんが、ラーメン店ならではの特殊性に注意することは必要でしょう。

一般的に、ラーメン店では、

■店舗の多くが賃貸物件であり、その明渡しと原状回復が必要である

■フランチャイズの形態で営業していることも多い

■パート・アルバイトを雇って切り盛りしていることが多い

■多くのリース用品を使用している

という特徴があります。

破産を申し立てるには、これらの処理(賃貸物件の明渡し、パート・アルバイトの解雇など)をどうするのか、慎重かつ迅速に進めていかなければなりません。

処理を誤れば、破産申立ての前後で、賃貸人や従業員、フランチャイザーなどの関係者にさらなる迷惑をかけることとなってしまいます。

以下、簡単ではありますが、上記の特殊性に関する注意点を見ていきましょう。

①店舗の多くが賃貸物件であり、その明渡しと原状回復が必要である

ラーメン店の場合、店舗物件は自社所有ではなく、賃貸を利用している(借りている)ことが多いと思います。

営業を停止して破産申立てを行うにあたり、これら借りている店舗は明け渡さなければなりません。

そのため、速やかに賃貸人に連絡を取り、賃貸借契約の解除と物件の明渡し、及び原状回復を進める必要があります。

道路沿いに公告看板を出している場合もあると思いますが、これも上記と同様で、掲示する契約を速やかに解約し、看板の撤去をします。

「大型の業務用冷蔵庫があり、他に適切な保管場所もないので店舗内に置いておくしかない」といった場合は、そのままだといつまで経っても物件の明渡しが完了せず、賃料相当損害金が膨らんでしまいます。

ケースによっては、新たに保管料を支払って別の場所に保管するよりも、複数の専門業者の見積もりを取ったうえで、最も高い金額で買い取ってくれる業者に(適正な価格で)売却することで、早期の明渡しを実現すべきこともあります。

なお、そのまま居抜きで入りたいという同業者がいれば、賃貸人に紹介して、交渉してもらいましょう。

うまく話がまとまれば、倒産する側は賃貸物件の原状回復を免れることができますし、賃貸人も早期に賃料収入が復活することになるので、当事者双方にとって望ましい解決となります。

②フランチャイズの形態で営業していることも多い

ラーメン店の場合、フランチャイザー(事業本部)との間でフランチャイズ契約を締結し、加盟店の一つとして、許諾された看板のもとで営業している形態もあります。

このようなラーメン店が破産申立てを行う場合には、フランチャイズ契約の帰趨にも注意が必要です。

基本的にはフランチャイズ契約を解消することになるのですが、この時、契約の定めによっては、フランチャイザーに対して一定の違約金を支払う義務が生じることがあります

多くの場合、この段階で違約金を支払うだけの経済的体力は残っていないことがほとんどですので、フランチャイザーを、違約金支払請求権を有する債権者として扱うことになります。

③パート・アルバイトを雇って切り盛りしていることが多い

ラーメン店の場合、正社員はほんのわずかで、実際の店舗運営は多数のパート・アルバイトに頼っているという形態も多いのではないでしょうか。

倒産する場合は、これらパート・アルバイトの従業員も解雇することになりますが、その際に気を付けていただきたいのが「解雇予告手当」です。

会社が従業員を解雇する場合、解雇する旨の告知は30日以上前に行われる必要があり、会社が30日以上前に解雇を予告できなかった場合には、30日分の平均賃金を支払わなくてはなりません。

これが「解雇予告手当」です。

そして、この「解雇予告手当」は、正社員だけでなく、パート・アルバイトであっても原則として支払うことが必要です。

ただし、下記に該当する場合には、例外的に支払う必要がありません。

■日雇いの者(ただし、1か月を超えて引き続き雇用される場合は支払対象となります)

■2か月以内の期間を決めて雇用される者(ただし、定められた労働契約の期間を超えて引き続き雇用される場合は支払対象となります)

■季節的業務(例えば、海水浴場やスキー場での業務など)に4か月以内の期間を定めて使用される者(ただし、定められた労働契約の期間を超えて引き続き雇用される場合は支払対象となります)

■試用期間中の者(ただし、14日を超えて引き続き雇用される場合は支払対象となります)

パート・アルバイトだからといって、簡単に解雇できるわけでありません。

支払義務があるにもかかわらず解雇予告手当を支払っていない場合、そのパート・アルバイトの方は労働債権を有する債権者ということになります。

④多くのリース用品を使用している

ラーメン店では、店内設備やビールサーバーなどをリースしていることも多いと思います。

リース用品は“借り物”であり、自社の所有物ではありませんから、破産申立てをする場合には、これらのリース用品を全て本来の所有者であるリース業者に返却する必要があります。

まずは、どれが自社の所有物で、どれがリース用品なのかを、契約書等を手掛かりに仕分けします。

リースだと思っていたら、所有権移転型のファイナンス・リースなどで、自社の所有物になっていることもありますので、注意が必要です。

そのうえで、各リース業者に連絡を取り、当該リース用品を返却(ないし日程調整のうえ引き揚げてもらう)していきます。

ラーメン店の破産申立ては是非弁護士に相談を

これまで継続してきた事業を閉じる決断をするのは、本当に勇気のいることと思います。

しかし、明らかに債務超過の状態にあり、業績が回復する見込みもないのに、無理をしてギリギリまで経営を続けてしまうと、いずれ会社資金が枯渇してしまいます。

破産申立てをするには、依頼する弁護士費用の他に、裁判所に管財予納金を納める必要もあり、相応の費用がかかります。

会社財産が完全に底をついてしまった後では、これらの費用を工面することができず、破産申立てすることさえできない・・・という事態にもなりかねません。

資金繰りや経営の行き詰まりに悩んでいるラーメン店の方は、限界を迎える前に、是非一度、弁護士に相談して下さい

早めに相談して悪いということはありません。

また、その際は、ラーメン店倒産の特殊性を理解し、同種の破産申立てに精通している弁護士を選ぶようにすると良いでしょう。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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