2023/10/05
2023年10月3日、円は一時、1ドル150円にまで値下がりしました。
昨年10月にも1ドル150円台を付けたことがありましたが、その前に1ドル150円を付けたのは、1990年8月でした。

消費者や、中小企業を始め国内での取引をする企業にとっては、円安は、エネルギーや輸入品の値上がりを意味することから、原材料それ自体の高騰とも相まって、一般には、メリットはないことになります。
この点、インバウンドの好況が伝えられ、こうした産業では円安が追い風になりますが、観光業が日本のGDPに占める割合はそれほど高くなく、むしろ、インバウンド向けに宿泊・飲食代金が高額化し、日本国民が、国内旅行すらできなくなることも指摘されています。
また、輸出企業など売り上げに占める海外比率が高い企業にとっては、円安は、「円換算」での業績はよくなるとされています。
しかし、これは、海外での売り上げが増加することで業績が良くなるのではなく、外貨での売上を「円換算」する際に、数字によって業績が良くなるというものにすぎません。
(もちろん、円安を踏まえて外貨での商品・サービス価格を下げ、売り上げを増加する場合もあるかもしれませんが、その場合には、外貨建ての売上額が下がりますので、利益は減少する可能性があります。)
また、商品・サービス水準の向上をせずに利益が上昇するわけですから、製品開発、品質向上、新規商品開発、設備投資、リスキリングの動機付けを奪うようにも考えられます。

以上のような円安の負の側面がある中で、円安が今後も継続するとした場合、埼玉の中小企業はどのように今後経営をしていくべきか。
まずは、原材料価格を転嫁できるようにするべきでしょうし、中長期的には、海外取引を増やしたり、高付加価値の製品を開発したりすることで、海外での売り上げを増加させることが必要になると考えられます。
少子高齢化の中で国内向け市場は縮小することが明白であることから、海外での競争に対応できることが必要と考えらます。


■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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