消費者契約法の取消権とは?クーリング・オフとの違いは?
消費者契約であると、取消しができるとか、クーリング・オフができるなどとお聞きになったことはあると思います。取消しとクーリング・オフとは何が違うのでしょうか。取消し、無効、クーリング・オフという効果を中心に見ていきます。

消費者契約法の取消権とは?クーリング・オフとの違いとは?

1 消費者契約法とは

消費者契約法とは、消費者と事業者との間で締結される契約のことを言います(消費者契約法2条3項)。

消費者契約法にいう「消費者」とは個人のことをいいます(消費者契約法2条1項)。

他方、「事業者」とは、法人その他の財団及び事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合における個人を言います(消費者契約法2条2項)。

ここで注意していただきたいのは、個人である「消費者」には、「事業として」または「事業のために」契約の当事者となる場合の個人は除かれます。

すなわち、「事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合」の個人は、事業者となりますから、消費者契約法上の「消費者」には該当しません。

例えば、個人事業者の方が事業を開始するにあたって、事業用のウェブのデザインをする会社と契約を締結した場合、契約の当事者が、個人名であったとしても、その内容から事業として、または事業のために行なっているといえるような場合には、消費者契約法上の「消費者」には該当せず、消費者契約法は、適用されないということはあります。

他方、例えば、個人事業主の方が事業とは関係ない自分で使用する物を購入するために個人名で契約を締結した場合には、消費者に該当すると考えられますから、消費者契約といえ、消費者契約法が適用されるということはあります。

つまり、消費者契約は、消費者と事業者との契約ですから、事業者と事業者との間で締結される契約には適用されるものではないということになります。

2 消費者契約法における消費者の保護と趣旨

消費者契約法では、一定の事由がある場合には、消費者が契約を取消すことができたり、一定の事由がある場合には、契約の条項が無効となる場合があります。

このような保護を消費者に与えている趣旨は、消費者と事業者との間には、情報の質及び量、交渉力の格差があるからです(消費者契約法1条)。

消費者と事業者との関係をみると、消費者は事業者よりも弱い立場にあるため、消費者の利益を守ることとしています。

現代社会においては、インターネットも普及していますから、消費者だって情報を持っているではないかと思われる方もいるかもしれませんが、個人で集められる情報と、事業者が組織だって集められる情報、事業者が事業を行うにあたって集めている情報とは、やはり情報の量や質には大きな差があると思います。

事業者の方も、事業としてではなく私生活(プライベート)での契約を締結する場合を考えてみれば、比較的容易に理解できると思います。

(参照条文)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

3 取消しとは

消費者契約法の趣旨等について今までご説明しました。

ところで、消費者契約法における「取消し」とは何でしょうか。

まず、簡単に説明すると、一応有効に成立した契約を、取消権を有している取消権者の意思表示によって、遡って(契約締結時から)無効とすることです。

すなわち、ある契約について、当事者が騙されて契約を締結してしまった場合など、騙された者が、契約の相手方に「取り消します」との意思表示をすると、その契約は遡って無効となる。というものです。

どのような契約もすべからく無効となってしまうと、取引の安全性が害されてしまいますから、取消しをすることができる事由が定められています。

私人間の取引に一般的に適用される民法にも、取消権者は定められています。

民法で定められている取消権だけでは、消費者を保護することができないため、消費者契約法ではある一定の行為を事業者が行い、消費者が誤認したり、困惑してしまった場合に契約の取消しをすることを認めています。

例えば、事業者が消費者に契約締結をするために勧誘をするにあたって、重要事項について事実と異なることを告げた場合、将来的に不確実なことについて断定的な判断を提供したりした場合であって、消費者が告げられたこと(事実とは異なること)が事実であると誤認したり、断定的な判断が確実であるなどと誤信したような場合には、取消しをすることができます。

このように取消権が与えられている場合に、取消しをすることができます。

取消すことができる事由については、消費者契約法4条以下に定められています。

消費者契約法の2023年6月の改正により追加されますので、改めてチェックしていただく必要があると思います。

(参照条文)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

4 無効とは

消費者契約法には、取消しができる場合だけでなく、一定の事由がある場合には、契約の条項は「無効」としています。

「無効」とはどういうことかと言いますと、そもそも効力を生じないということです。

どのような行為が「無効」となるかということについては、民法上にも定めがあります(民法90条など)。

しかし、民法だけでは保護をすることができないため、消費者契約法では、無効となる行為について定められています。

例えば、事業者側の債務不履行によって、消費者に損害を負わせた場合でも、事業者の損害賠償責任を全部免除するという内容であったり、事業者が責任の有無を決定するなどの条項は無効となります(消費者契約法8条1項など)。

また、事業者側の債務不履行(故意または重過失による)場合に消費者に損害を与えた場合に責任を一部免除したり、その範囲(免除の範囲)を事業者側が決定できるような条項は無効となります。

そのほか、消費者の利益を一方的に害するような条項も無効となります(消費者契約法10条)。

(参照条文)
第一〇条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

5 クーリング・オフとは

取消しと、無効とは別の「クーリング・オフ」とは何でしょうか。

クーリング・オフ制度とは、一般的には、一定の期間内であれば、消費者が販売業者等との間で申込みまたは締結した契約を無理由かつ無条件で撤回または解除ができる権利のことをいいます。

取消しの場合には、法律上定められた取消権がある場合に、取消しの意思表示がされるということであり、無効の場合には、法律上定められた無効事由がある場合に無効となるというものでした。

しかし、クーリング・オフの場合には、取消しや無効とは異なり、契約自体は有効に適切に行われている場合であっても、無理由かつ無条件で契約を撤回または解除ができる(簡単にいいますと、やっぱりやめた、となしにできる)というものです。

この、クーリング・オフの制度は、民法上には定めはありませんし、消費者契約法上にも定めはありません。

クーリング・オフの制度がある取引としては、代表的には、特定商取引法です。

特定商取引法でクーリング・オフの制度が認められているものは、訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引などです。

また、一度有効に締結した契約を無理由、無条件で撤回、解除することができるものになりますから、8日ないし20日(契約類型によって異なります)という期間の制限があります。

ただし、クーリング・オフの期間は、法定された書面がきちんと交付されていないなどの場合には、上記の期間が進行しませんから、きちんと交付されるまで、期間が進行しないということになります。

なお、クーリング・オフの制度が設けられた趣旨は、一定の期間という、消費者に契約を締結することに対する熟慮期間を設けさせるとともに、事業者の不適切な勧誘を抑制したり、消費者の被害を救済するという趣旨があります。

6 まとめ

取消しは、取消権者から取消しの意思表示があった場合に、遡って契約がなかったことになるもの。
無効は、一定の事由がある場合に、効力が生じないもの。
クーリング・オフは、一定の期間内において、申込の意思表示を撤回したり、契約を解除して契約をなしにすること。

取消しと無効は、消費者契約法上にも定めがありますが、クーリング・オフは消費者契約法で定められたものではありません。特定商取引法など、一定の取引類型のものにのみ適用されるものです。

それぞれ、根拠となる条文が異なり、取消権も内容により取消しができるものか否かで異なってきます。

消費者から無効、取消し、クーリング・オフと言われた場合には、どのような主張なのか考える必要があることもありますので、内容を考えてみると良いと思います。

もちろん、消費者との契約トラブルがないようにするには、事業者側から消費者が理解できるように十分な説明をしていただくことが必要になると思います。

ご相談 ご質問
今回のコラムについてご質問がある場合、電子メール(2021glexpand@g-leaf.or.jp)にてお受けします。件名には、コラムを書いた弁護士名をご記載ください。大変恐縮ですが、電話でのご質問はお受けしておりません。
企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。

■この記事を監修した弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
弁護士のプロフィールはこちら