廃棄物処理法上、廃棄物の排出事業者が廃棄物の処理を第三者に委託した場合には、産業廃棄物管理票(マニフェスト)による廃棄物処分の管理をしなければなりません。プロである廃棄物処理業者に任せたのだから問題ない、とはいきません。

産業廃棄物管理票制度(マニフェスト制度)

排出事業者の責任

事業者の自己処理原則

まず、大前提として、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」といいます。)上、事業活動によって生じた廃棄物については、排出事業者の自己処理が原則とされています(廃棄物処理法11条1項、3条1項)。

もっとも、事業者が自ら廃棄物を処理することは現実的でありません。そこで、事業者は、廃棄物処理業者等の他人に対して、処理費用を負担して、廃棄物の「運搬」「処分」を委託することができます(廃棄物処理法12条5項)。

廃棄物処理法は、非常に読みにくい複雑な条文構造となっているため、かっこ書き部分等を省略したものを以下引用していきます。

廃棄物処理法11条1項

事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。

廃棄物処理法3条1項

事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

廃棄物処理法12条5項

事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第十四条第十二項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

事業者が産業廃棄物の「運搬」「処分」を他人に委託した場合に負う義務

事業者が産業廃棄物の「運搬」「処分」を他人に委託する場合には、
①産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務
②産業廃棄物の処理状況の確認義務
③産業廃棄物の処理工程における適正処理義務
を負うことになります。

これら②③の義務は努力義務ではあるものの、事業者の措置の実施状況によっては、生活環境保全上の支障除去命令が発せられるおそれがあることに注意が必要です。

廃棄物処理法12条7項

事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

廃棄物処理法19条の6

・・・生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあり、かつ、次の各号のいずれにも該当すると認められるときは、都道府県知事は、その事業活動に伴い当該産業廃棄物を生じた事業者に対し、期限を定めて、支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務

事業者は、第三者との委託契約により、産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合には、委託する産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した第三者に対し、委託する産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならないとされています(廃棄物処理法12条の3)。

上記のとおり、排出事業者は、産業廃棄物の処理状況の確認義務と、産業廃棄物の処理工程における適正処理義務を負っています。産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付・回付(戻ること)を通じて、書面の流れをもってこれらの流れを把握することとしているのです。

(出典:環境省 産業廃棄物のマニフェスト制度の概要)

産業廃棄物管理票(マニフェスト)は、全部で7枚つづりになっています。

収集運搬業者への交付

排出事情者は、まずこれに記載したものを収集運搬業者に交付します。そして、収集運搬業者は、自社の写しを保管するとともに、収集運搬が終わった際には、その旨を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)を排出事業者に回付します。

この一連の流れによって、排出事業者は、収集運搬業者がきちんと運搬先に運搬するという処理状況の途中段階までの流れを確認できることになります。

処分業者への交付

収集処分業者は、処分業者(中間処理業者の場合もありますが、説明の便宜上最終処分業者を使った説明とします)に対して、産業廃棄物の処分を依頼します。その際、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の一部を処分業者に交付します。そして、処分業者は、自社の写しを保管するとともに、最終処分が終わった際には、その旨を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)を①収集運搬業者、②排出事業者に回付します。

この一連の流れによって、②排出事業者は、最終処分業者がきちんと最終処分をするという処理状況の確認をすることができることになります。また、①収集運搬業者自身も、産業廃棄物の最終処分状況を確認することができます。

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付状況についての報告義務

産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付者は、年に一度、前年度における産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付等の状況に関する報告書を作成し、排出事業者の所在地を管轄する都道府県知事または政令市長に提出する義務を負います(廃棄物処理法12条の3第7項)。

紙の産業廃棄物管理票(マニフェスト)の場合、五月雨式に、運搬・処分の都度、収集処分業者や処分業者から産業廃棄物管理票(マニフェスト)が回付されてきます。そのため、排出内容・排出日ごとに、ひとまとめのファイル等にしておくことで、報告時の便宜に資することになります。また、常日頃からこのような整理をしておくことで、運搬・処分が適正に行われているか、滞ってしまっていないか、産業廃棄物の処理状況を確認することができ、産業廃棄物の処理工程が適正に行われているかを確認することができます。

電子マニフェスト使用義務

上記のとおり、紙のマニフェストの管理は煩雑で、排出量・排出の機会が多い事業所の場合、適時適切な産業廃棄物の処理状況・処理工程の確認を行うことができません。そこで、多量の産業廃棄物を発生させる事業所を設置している事業者は、紙マニフェストの交付に代えて、電子マニフェストの使用が義務付けられています(廃棄物処理法12条の5)。

電子マニフェスト制度では、全国に一つある情報管理センターで一元管理することとなります。センターの一括管理により、以下のようなメリットが生じます。
①登録後の情報改ざん、偽造がされにくい
②迅速かつ正確な情報管理が可能になる
③行政が廃棄物の移動に関する全体像を把握する際有効である

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の関する法的義務違反に対する罰則等

勧告、公表、措置命令

排出事業者等が、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の関する法的義務に違反した場合、都道府県知事は、産業廃棄物の適正な処理に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができるとされています(廃棄物処理法12条の6第1項)。

さらに、都道府県知事は、勧告を受けた事業者等がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができるとされています(廃棄物処理法12条の6第2項)。

そして、都道府県知事は、勧告を受けた事業者等が、勧告に従わなかつた旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつたときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができるとされています(廃棄物処理法12条の6第3項)。

このように、まずは都道府県知事から勧告され、勧告されたことを公表されてしまうという事実上の不利益・ペナルティを課すことで、排出事業者の自発的な遵法行為を促すことになります。それにもかかわらず、事業者が従わない場合、都道府県知事は、是正措置そのものを事業者に行わせることができるという建て付けになっています。

罰則

産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しない、産業廃棄物管理票(マニフェスト)に必要事項を記載しない、産業廃棄物管理票(マニフェスト)に虚偽の記載をして管理票を交付する、といった行為に対しては、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣
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