このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、取締役会議事録の書き方や決議の方法、電子署名(電子化)の注意点について、会社法に基づいて解説します。電子署名が広く認められ、取締役会議事録作成は簡易になりつつありますが、会社法の定める必要な方法によらなければなりません。

はじめに

このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、取締役会議事録の書き方を中心に、株式会社の株主・取締役(代表取締役)に向けて、有益な情報を提供しております。前回は株主総会について触れましたので、今回は取締役会にフォーカスして参ります。

取締役会議事録の書き方の例(ひな形)

第●回 取締役会議事録

【日付】、【場所】において、取締役●名(総取締役数●)出席のもと、取締役会を開催し、下記の議案につき可決確定のうえ、【時間】散会した。
出席取締役  ****(議長)
****
****
出席監査役  ****

第1号議案 【****】の件
取締役【**】は選ばれて議長となり、「**」旨を述べ、「**」を提案したところ、全員一致をもって可決した。
第2号議案 【****】の件
・・・

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、出席取締役及び監査役の全員がこれに【署名】or【記名押印】する。

【日付】

【株式会社名】
出席取締役  **** 印
**** 印
**** 印
出席監査役  **** 印
以上

会社法施行規則により取締役会議事録に記載しなければならないこと

取締役会議事録の雛形と関連して、法律をざっと見て参ります。
法務省令、すなわち会社法施行規則101条には、以下のとおり記載されております。

(取締役会の議事録)
第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
二 取締役会が法第三百七十三条第二項の取締役会であるときは、その旨
三 取締役会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
イ 法第三百六十六条第二項の規定による取締役の請求を受けて招集されたもの
ロ 法第三百六十六条第三項の規定により取締役が招集したもの
ハ 法第三百六十七条第一項の規定による株主の請求を受けて招集されたもの
ニ 法第三百六十七条第三項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの
ホ 法第三百八十三条第二項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの
ヘ 法第三百八十三条第三項の規定により監査役が招集したもの
ト 法第三百九十九条の十四の規定により監査等委員会が選定した監査等委員が招集したもの
チ 法第四百十七条第一項の規定により指名委員会等の委員の中から選定された者が招集したもの
リ 法第四百十七条第二項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの
ヌ 法第四百十七条第二項後段の規定により執行役が招集したもの
四 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
五 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
六 次に掲げる規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
イ 法第三百六十五条第二項(法第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)
ロ 法第三百六十七条第四項
ハ 法第三百七十六条第一項
ニ 法第三百八十二条
ホ 法第三百八十三条第一項
ヘ 法第三百九十九条の四
ト 法第四百六条
チ 法第四百三十条の二第四項
七 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
八 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名
4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第三百七十条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

取締役会決議の要件は?

取締役決議の要件は、例外(特別取締役による重要な財産の処分等の決議、および、あらかじめ定款で定めた方法により書面決議が認められる場合)を除き、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数の賛成により成立します(会社法369条1項)。

つまり、4名の取締役がいるケースでは、2名だけでは開催すらできず、3名が出席しその内2名が賛成するか、4名が出席しその内3名が賛成しなければならないということですので、注意が必要です。

この定足数や賛成数の要件は、定款により加重することはできても、軽減することはできません。

また、取締役自身が利害関係を有する場合には当該取締役は議決に参加することができません。「特別利害関係」といい、例えば、競業取引や利益相反取引を行う取締役の当該取引に対する議決を行う場合や譲渡制限株式の譲渡承認を取締役役員自らが求める場合が典型です。

なお、取締役会議事録は、例えば記載漏れがあれば決議が無効というわけではありません。つまり、取締役会の議事録は、法律関係の明確化のために作成されるものに過ぎません。
しかし、どのような会議があったのかを示す重要な文書(証拠)になりますし、登記事項に関する決議であれば登記申請書に議事録を添付する必要もあります。また、会社法976条によって議事録を作成しないことや記載すべき項目が記載されていない場合等には罰則を課される可能性もあります。コンプライアンスの観点からも重要であることは言うまでもありません。

電磁的記録とは?

取締役会議事録は、「電磁的記録」により保存することも認められております。
では、「電磁的記録」とは何か。

取締役会議事録の電磁的記録とは、従来の手書きの議事録を紙媒体から電子的なデータに変換し、データベースなどの電子媒体上で保管・管理することを指します。これにより、紙媒体での保管や検索が不要になり、会社の業務効率化や情報管理の効果を期待できます。

具体的には、取締役会議事録をスキャンして電子ファイル化し、データベースに保存することが一般的です。電子ファイル化には、OCR(光学式文字認識)技術を使用して手書きテキストを認識し、編集可能なテキストデータに変換することもあります。

電子化された取締役会議事録は、オンラインのデータベース上で検索・閲覧が可能になり、必要な情報を素早く取得できるようになります。また、情報漏洩や紛失のリスクを減らすこともできます。さらに、法的に要求される期間内にデータを保存することもできます。

電子署名とは?

取締役会議事録は、出席した取締役・監査役の署名・記名押印が求められます。
電磁的記録をもって作成した場合の署名等に代わる措置としては、会社法369条4項、会社法施行規則第225条1項6号において、「電子署名」の使用が認められていました。

電子署名の要件としては、
① 署名を行った者が本人=出席取締役であることが確認できること。
② 議事録が改ざんされていないことを確認できること。
です(電子署名法2条)。

しかし、従前は、認証局において、本人確認が取れた電子証明書を付与した電子署名のみが、許されるという限定的なものでした。

ところが、令和2年5月29日付で法務省が公式見解を示し、経団連がHPにおいて以下の公表を行いました。まさに、コロナ禍でテレワーク推進の最中に発出されたものであり経済団体の要請に応える関係のものであったように思います。脱書面、脱印鑑の流れは国だけではありません。
(出展 https://jane.or.jp/proposal/notice/10829.html

【法務省の見解】
会社法上、取締役会に出席した取締役及び監査役は、当該取締役会の議事録に署名又は記名押印をしなければならないこととされています(会社法第369条第3項)。また、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には、署名又は記名押印に代わる措置として、電子署名をすることとされています(同条第4項、会社法施行規則第225条第1項第6号、第2項)。
当該措置は、取締役会に出席した取締役又は監査役が、取締役会の議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって、いわゆるリモート署名(注)やサービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても、取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして、当該取締役会の議事録について、その意思に基づいて当該措置がとられていれば、署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると考えられます。(注)サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し、利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの

このため、電子契約事業社が提供するクラウド型の電子署名を利用することが広く認められるようになりました。

取締役会決議を省略できる場合はある?

原則として、取締役会の持ち回り方式による書面決議は認められておりません(最判昭和44年11月27日)。

しかし、例外として、外国出張等による取締役の機動的な意思決定等を認めるため、あらかじめ定款で、「取締役が取締役会の決議の目的である事項につき提案をした場合において、取締役の全員が書面(電磁的記録)により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす」旨を定款で定めることができます(会社法370条)。

取締役会議事録の保存期間は?

取締役会議事録は、10年間、本店に備え置かれます(会社法371条2項・976条4号)。備え置いていないと、監査に引っかかることもあるので要注意です。

誰でも取締役会議事録を見ることはできる?

取締役会議事録は、誰でも見ることができるわけではありません。
しかし、株主であれば、その権利を行使するために必要があれば、会社に対し、閲覧・謄写を求めることができます(会社法371条2項・976条4号)。ただし、取締役会の議事には秘密を要する事項も含まれており、裁判所の許可を得た場合に限られます(会社法371条3項)。

ご相談 ご質問
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
弁護士のプロフィールはこちら