交通事故の示談金が低いと感じたら?保険会社の提示額を確認すべきポイントを弁護士が解説

※本記事は、さいたま市大宮区にある弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。

交通事故の治療が終わるころ、加害者側の保険会社から「示談案」や「損害賠償額計算書」が届くことがあります。そこには、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、既払金、過失相殺などが並び、最後に「お支払額」として金額が記載されています。多くの被害者の方は、この書面を見ても、その金額が高いのか低いのか、すぐには判断できません。

結論から申し上げますと、交通事故の示談金について「少し低い気がする」と感じた場合、その直感はあながち間違いではありません。保険会社が最初に提示する示談金は、裁判で認められる可能性のある金額より低く設定されていることが少なくありません。もちろん、すべての事案で大幅な増額が見込めるわけではありませんが、少なくとも、示談書に署名押印する前に、慰謝料、休業損害、後遺障害、過失割合、既払金の控除方法を確認する必要があります。

この記事では、交通事故の示談金が低いと感じたときに、被害者がどこを確認すべきか、保険会社の提示額がなぜ低くなりやすいのか、弁護士に相談することでどのような点を修正できる可能性があるのかを、実務の流れに沿って解説します。

1 交通事故の示談金とは何か

1 交通事故の示談金とは何か

交通事故の示談金とは、事故によって被害者に発生した損害を、加害者側が金銭で賠償するものです。示談金という言葉だけを見ると、慰謝料だけを指すように思われることがありますが、実際にはそうではありません。示談金には、治療費、通院交通費、入院雑費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益、車両損害など、複数の項目が含まれます。

つまり、示談金が低いかどうかを判断するには、最終金額だけを見るのでは足りません。どの損害項目が入っているか、どの項目が抜けているか、各項目がどの基準で計算されているかを確認する必要があります。たとえば、慰謝料だけは一見それなりの金額に見えても、休業損害がほとんど認められていない、後遺障害逸失利益が過小に計算されている、過失割合が不当に大きくされている、というケースがあります。

また、保険会社の書面では、既に支払われた治療費や休業損害が「既払金」として差し引かれます。そのため、最終的な振込予定額だけを見ると、「これだけしかもらえないのか」と感じることもあります。既払金の控除自体は当然に行われますが、そもそもの損害総額が正しく計算されていなければ、最終支払額も当然低くなります。

2 保険会社の提示額が低くなりやすい理由

2 保険会社の提示額が低くなりやすい理由

保険会社は、加害者側の任意保険会社として示談交渉を行います。被害者に対して丁寧に対応してくれる担当者もいますが、保険会社は営利企業であり、支払額を抑える方向で交渉するのが基本構造です。したがって、保険会社から提示された金額が、最初から被害者にとって最大限有利な金額であるとは考えない方が安全です。

特に問題になりやすいのは、慰謝料の計算基準です。交通事故の慰謝料には、大きく分けて自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準または裁判基準という考え方があります。自賠責基準は最低限の補償を目的とする基準であり、任意保険基準は各保険会社が内部的に用いる基準です。これに対し、弁護士基準は過去の裁判例をもとにした基準で、一般に最も高額になります。

被害者本人が保険会社と直接交渉している場合、保険会社は自賠責基準または任意保険基準に近い金額を提示してくることがあります。一方、弁護士が介入すると、弁護士基準を前提として交渉することができます。この差が、示談金の増額につながる典型的な理由です。

また、保険会社は、治療期間が長い場合には「通院期間が長すぎる」、通院頻度が少ない場合には「実通院日数が少ない」、休業損害については「事故との因果関係が不明」、後遺障害については「等級が認定されていない」など、さまざまな理由で金額を抑えようとすることがあります。これらの主張が常に不当というわけではありませんが、被害者側の資料や主張が不足しているために、本来認められるべき損害まで削られていることがあります。

3 示談金が低いと感じたときにまず確認すべき書類

3 示談金が低いと感じたときにまず確認すべき書類

示談金の妥当性を確認するには、保険会社から届いた示談案だけでは足りないことがあります。最低限確認したいのは、損害賠償額計算書、診断書、診療報酬明細書、通院日数が分かる資料、休業損害証明書、源泉徴収票、事故状況が分かる資料、後遺障害等級認定結果などです。

損害賠償額計算書には、各損害項目と金額が記載されています。ここで見るべきなのは、最終支払額だけではありません。慰謝料がどの期間を基礎に計算されているか、休業損害の単価と日数がどうなっているか、過失割合が何対何とされているか、既払金として何が控除されているかを確認します。

診断書や診療報酬明細書は、治療期間や通院内容を確認するために重要です。慰謝料は、通院期間や実通院日数と密接に関係します。保険会社が通院期間の一部しか認めていない場合、あるいは整骨院・接骨院の施術を一部否認している場合には、示談金が低くなることがあります。

休業損害については、会社員であれば休業損害証明書や給与明細、自営業者であれば確定申告書や帳簿、主婦・主夫であれば家事従事者としての生活実態が重要になります。保険会社の提示では、休業日数が少なく見積もられていたり、有給休暇を使った分が十分に反映されていなかったりすることがあります。

4 特にチェックすべき5つのポイント

4 特にチェックすべき5つのポイント

(1)慰謝料が弁護士基準で計算されているか

最も分かりやすいチェックポイントは、入通院慰謝料です。保険会社の提示額が低いと感じるケースでは、慰謝料が自賠責基準または任意保険基準に近い金額で計算されていることがよくあります。

たとえば、むちうちで3か月通院したケース、骨折で6か月通院したケースなどでは、弁護士基準で計算した場合と保険会社提示額との間に大きな差が出ることがあります。弁護士基準では、単純に「1日いくら」と機械的に計算するのではなく、入通院期間や傷害の内容に応じて算定表を用いて検討します。

ただし、通院頻度が極端に少ない場合、通院期間全体が慰謝料算定の基礎としてそのまま認められないことがあります。そのため、慰謝料を確認するときは、治療期間、実通院日数、傷病名、治療内容を合わせて見る必要があります。

(2)休業損害が正しく計算されているか

休業損害は、保険会社の提示で差が出やすい項目です。会社員の場合、事故で欠勤した日だけでなく、有給休暇を使って通院した日も休業損害の対象になり得ます。有給休暇は本来自由に使える財産的価値のあるものですから、事故のために使わざるを得なかった場合には損害として評価されます。

自営業者の場合は、売上の減少や業務への支障を資料で示す必要があります。保険会社は、自営業者の休業損害について厳しめに見てくることが多く、確定申告書の所得額だけを基礎に低く計算されることがあります。しかし、業務内容、事故前後の売上、代替人員の有無、実際にできなかった仕事の内容によっては、さらに主張すべき余地があります。

主婦・主夫の場合も、現実に給与を受け取っていないからといって休業損害がゼロになるわけではありません。家族のために家事を行っていた方が、事故によって料理、洗濯、掃除、買い物、育児、介護などに支障を来した場合には、家事労働の損害として請求できる可能性があります。

(3)後遺障害の検討が抜けていないか

示談金が低い原因として、後遺障害の検討が抜けているケースがあります。治療が終わった時点で痛み、しびれ、可動域制限、変形、醜状、嗅覚障害などが残っている場合には、後遺障害等級の申請を検討すべきです。

後遺障害等級が認定されると、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できる可能性があります。たとえば、むちうちで14級9号が認定された場合でも、保険会社の事前提示とは大きく異なる賠償額になることがあります。骨折後の可動域制限や変形障害がある場合には、さらに大きな金額差が生じることがあります。

保険会社から「そろそろ示談しましょう」と言われたとしても、症状が残っている場合に後遺障害申請をしないまま示談してしまうのは危険です。いったん示談が成立すると、原則として後から追加請求をすることは困難です。

(4)過失割合が不当に大きくされていないか

過失割合も、示談金を大きく左右します。たとえば、損害総額が300万円でも、被害者の過失が30%とされれば、過失相殺により90万円が差し引かれます。過失割合が10%違うだけでも、最終的な受取額に大きな差が出ます。

保険会社は、事故状況について加害者側の説明や事故態様を前提に、被害者に不利な過失割合を提示してくることがあります。被害者としては、ドライブレコーダー、防犯カメラ、実況見分調書、事故現場写真、車両損傷状況、信号サイクル、道路標識、目撃者の有無などを確認する必要があります。

特に、交差点事故、右直事故、車線変更事故、駐車場内事故、自転車事故、歩行者事故では、事故態様の評価によって過失割合が変わりやすくなります。「保険会社が言っているから仕方ない」と考えるのではなく、事故状況に照らして本当に妥当かを検討すべきです。

(5)既払金や控除の処理が正しいか

示談案では、治療費、休業損害の内払い、仮払金、自賠責保険からの既払金などが控除されます。控除自体は通常の処理ですが、項目の性質を誤って控除している場合や、被害者の手元に残るべき給付まで差し引かれているように見える場合には、確認が必要です。

たとえば、労災保険を利用している場合には、労災から支払われる給付と相手方への損害賠償請求との調整が問題になります。治療費や休業補償の一部は調整対象となりますが、特別支給金のように控除されない性質のものもあります。示談案の控除欄に違和感がある場合は、内容を精査する必要があります。

5 示談前に署名押印してはいけない理由

5 示談前に署名押印してはいけない理由

保険会社から示談書が届くと、「早く終わらせたい」「これ以上やり取りしたくない」と感じる方は多いです。事故後の通院や保険会社対応で疲れ切っている方にとって、示談書に署名して終わらせたいという気持ちは自然です。

しかし、示談は原則として最終解決です。示談書には、「本件事故に関し、今後相互に何らの請求をしない」といった清算条項が入るのが通常です。つまり、一度署名押印して示談が成立すると、後から「やはり慰謝料が低かった」「後遺障害を申請すべきだった」「休業損害が抜けていた」と気づいても、追加請求は非常に難しくなります。

そのため、示談書に署名する前に、少なくとも次の点は確認してください。治療は本当に終了しているか、後遺障害申請の必要はないか、慰謝料は弁護士基準と比較して低すぎないか、休業損害は実態に合っているか、過失割合に争う余地はないか、既払金の控除に誤りはないか。この確認をしないまま示談することは、被害者にとって大きな不利益になり得ます。

6 示談金が低いと感じたときの具体的な対応

6 示談金が低いと感じたときの具体的な対応

まず、保険会社に対してすぐに返事をする必要はありません。示談案が届いたら、「内容を確認します」と伝え、書面を保管してください。電話だけで説明を受けた場合には、必ず計算書を送ってもらうようにしましょう。口頭の説明だけでは、どの項目がどのように計算されているか検討できません。

次に、治療関係資料、収入資料、事故状況資料を整理します。通院日数、治療期間、休業日数、事故前収入、事故後の減収、症状の残り方などを一覧にしておくと、示談案の問題点が見えやすくなります。

そのうえで、弁護士に相談するのが現実的です。相談時には、保険会社の示談案、診断書、後遺障害診断書があればその写し、休業損害証明書、源泉徴収票、事故状況が分かる資料、保険証券を持参すると話が早く進みます。弁護士費用特約がある場合には、弁護士費用の自己負担を抑えて相談・依頼できる可能性があります。

弁護士に相談した結果、増額の余地が小さいと判断されることもあります。その場合でも、「この金額なら大きく不当とはいえない」と確認できること自体に意味があります。反対に、慰謝料、休業損害、後遺障害、過失割合のいずれかに明確な問題があれば、弁護士が保険会社と交渉することで示談金が増額される可能性があります。

7 弁護士に依頼すると何が変わるのか

7 弁護士に依頼すると何が変わるのか

弁護士に依頼した場合、まず保険会社との窓口が弁護士に移ります。被害者自身が保険会社からの電話に対応し、専門的な説明を受け、反論を考える必要がなくなるため、精神的な負担が大きく軽減されます。

次に、賠償額の計算基準が変わります。弁護士は、慰謝料について弁護士基準を前提に交渉します。休業損害についても、会社員、自営業者、会社役員、主婦・主夫など、それぞれの立場に応じて必要な資料を整理し、実態に即した請求を行います。

また、後遺障害が問題になる事案では、後遺障害診断書の内容、画像資料、検査結果、症状の一貫性などを確認し、適切な等級認定を目指すためのサポートを行います。すでに非該当や低い等級の結果が出ている場合でも、異議申立てを検討できることがあります。

さらに、過失割合に争いがある場合には、事故態様を整理し、類型別の基準や裁判例を踏まえて反論します。ドライブレコーダーや実況見分調書などの証拠を確認することで、保険会社の提示より有利な過失割合を主張できる場合があります。

8 保険会社の提示額をそのまま受け入れてよいケースもある

8 保険会社の提示額をそのまま受け入れてよいケースもある

ここまで、保険会社の提示額が低い可能性について説明してきましたが、すべてのケースで弁護士に依頼すれば必ず大幅に増額するわけではありません。事故態様、傷害の程度、通院期間、通院頻度、後遺障害の有無、過失割合、弁護士費用特約の有無によって、依頼するメリットは変わります。

たとえば、物損だけの小規模事故で争点がなく、保険会社の提示額が客観資料とほぼ一致している場合には、弁護士を入れても大きな増額が見込めないことがあります。また、通院期間が短く、後遺障害もなく、休業損害も発生していない事案では、費用対効果を慎重に見る必要があります。

一方で、骨折、長期通院、むちうちの後遺症、休業損害の争い、主婦・主夫休損、過失割合の争い、死亡事故、高齢者の逸失利益、無保険車事故などがある場合には、示談前に弁護士へ相談する価値が高いといえます。特に弁護士費用特約が使える場合には、費用面の不安が大きく下がります。

9 まとめ

9 まとめ

交通事故の示談金が低いと感じた場合、まず大切なのは、保険会社の提示額を「最終回答」と思い込まないことです。保険会社の示談案は、あくまで相手方からの提案です。慰謝料が弁護士基準で計算されているか、休業損害が実態に合っているか、後遺障害の検討が抜けていないか、過失割合が妥当か、既払金や控除の処理に誤りがないかを確認する必要があります。

特に、治療終了直後に届く示談案は、被害者が疲れて判断力を失いやすいタイミングで届きます。しかし、ここで安易に署名押印してしまうと、後から追加請求することは原則として困難です。少しでも低いと感じたら、示談前に資料を整理し、弁護士に確認することをお勧めします。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所では、交通事故集中チームが、保険会社の提示額の妥当性、後遺障害申請の必要性、過失割合、休業損害、弁護士費用特約の利用可否などを確認し、被害者の方が適正な賠償を受けられるようサポートしています。「示談金が低い気がする」「このままサインしてよいか分からない」という方は、示談書に署名する前にご相談ください。

参考:示談案で確認すべき主な項目

参考:示談案で確認すべき主な項目
確認項目見るべきポイント
入通院慰謝料自賠責基準や任意保険基準に近い金額ではないか。治療期間・実通院日数・傷害内容が反映されているか。
休業損害欠勤日、有給休暇、減収、家事労働への支障が適切に反映されているか。
後遺障害痛み・しびれ・可動域制限・変形などが残っているのに申請しないまま示談しようとしていないか。
過失割合事故状況、ドラレコ、実況見分調書、道路状況に照らして妥当か。
既払金・控除治療費、内払い、自賠責、労災給付などの控除方法に誤りがないか。

ご相談・ご質問

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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