
飲酒運転で人を轢いてしまったという事態は、被害者の方はもちろん、加害者本人やその家族にとっても、極めて深刻な出来事です。
「これからどうなってしまうのか」、「一生を棒に振るのではないか」という不安と絶望に苛まれていることでしょう。
本コラムでは、飲酒運転による人身事故を起こしてしまった際、どのような刑事手続きが待っているのか、そして弁護士を介入させることでどのような法的メリットがあるのかを、実務的な視点から詳しく解説します。
飲酒運転事故で問われる罪の重さ:その「境界線」とは

飲酒運転で人身事故を起こした場合、問われる罪は主に2つあります。
どちらが適用されるかによって、刑罰の重さは天と地ほどの差が生じます。
・過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)
不注意(過失)によって人を死傷させた場合に適用されます。
「7年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金」が科せられます。これに加え、飲酒(酒気帯び等)の事実が道路交通法違反として併合罪となります。
・危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)
アルコールの影響により「正常な運転が困難な状態」で走行し、人を死傷させた場合に適用されます。
負傷の場合は「15年以下の懲役」、死亡の場合は「1年以上の有期懲役(最長20年)」という、殺人罪にも匹敵する極めて重い刑罰が科せられます。
こちらは「罰金刑」がなく、起訴されれば原則として正式な裁判が開かれます。
なぜ「危険運転」か否かが、争点になるのか

検察官は、単にアルコールが検出されただけでなく、歩行状態、言動、事故の態様(蛇行運転や信号無視の有無)、そして何より「事故当時の意識」を精査し、より重い「危険運転致死傷罪」を適用できないか検討する傾向にあります。
ここで重要なのは、「お酒を飲んでいた=即、危険運転」ではないということです。
しかし、取調べで不用意な供述をしてしまうと、本来は「過失」で済むはずの事案が「危険運転」として処理されてしまうリスクがあります。
事故直後から判決までの「刑事手続きの流れ」

飲酒運転の人身事故は、多くの場合、現場で「現行犯逮捕」されるか、証拠隠滅を恐れて後日、「通常逮捕」されます。
逮捕されてからの流れについては以下の通りです。
① 逮捕から勾留(約23日間)
逮捕されると、警察で48時間、検察で24時間の合計72時間、身柄が拘束されます。
この間、弁護士以外は家族であっても面会できない「接見禁止」がつくことも珍しくありません。
その後、検察官が「身柄を拘束し続ける必要がある(証拠隠滅や逃亡の恐れ)」と判断し、裁判官が認めれば、さらに最大20日間の「勾留(こうりゅう)」が続きます。
② 起訴・不起訴の判断
勾留期間が満了するまでに、検察官は事件を裁判にかける(起訴)か、釈放する(不起訴)かについて決定します。
飲酒運転で人を死傷させた場合、初犯であっても不起訴(起訴猶予)になる可能性は極めて低く、多くのケースで正式な裁判(公判請求)となります。
ただし、被害が軽微であり、かつ迅速に示談が成立していれば、略式起訴(罰金刑)で済む可能性もゼロではありません。この「可能性の追求」が弁護士の腕の見せ所です。
③ 刑事裁判(起訴〜約1〜2ヶ月後)
起訴されると「被告人」となり、公開の法廷で審理が行われます。
④ 判決(執行猶予か実刑か)
裁判官が、事故の悪質性、被害の程度、示談の有無、反省の状況、そして「再犯防止策」を考慮し、判決を下します。
「執行猶予」がつけば、直ちに刑務所に入ることは免れますが、「実刑」となればそのまま収監されることになります。
弁護士を選任する「4つの具体的メリット」

「自分で反省すれば十分だ」と考える方もいるかもしれませんが、刑事手続きにおいて弁護士は「代理人」以上の役割を果たします。
メリット(1):被害者との「示談交渉」を唯一遂行できる
刑事処分を軽くするために最も重要なのは、被害者やご遺族との「示談(じだん)」です。
被害者感情が激しい飲酒運転事故において、加害者本人やその家族が直接交渉しようとすれば、さらなる火に油を注ぐ結果になりかねません。
また、検察や警察は、加害者側に被害者の連絡先を教えることはありません。
弁護士であれば、検察を通じて被害者の連絡先を確認(被害者の同意がある場合)し、冷静かつ誠実な謝罪と賠償の交渉を行うことができます。
なお、保険会社は「民事的な損害賠償」は行いますが、「刑事処分を軽くするための謝罪」までは踏み込みません。
メリット(2):早期の身柄解放(保釈)に向けた活動
弁護士は、逃亡の恐れがないことを客観的な証拠(家族の身元引受書、本人の誓約書、示談書など)で示し、裁判官に対して勾留の取り消しや、起訴後の保釈を請求します。
一刻も早く社会復帰し、賠償原資を得るために働く環境を整えることは、結果的に被害者のためにもなります。
メリット(3):取り調べに対するアドバイス(供述の適正化)
逮捕直後の取り調べで作成される「供述調書」は、後の裁判で決定的な証拠となります。動揺している加害者は、警察官の誘導に乗り、「本当はフラフラだったんじゃないか?」という問いに「はい」と答えてしまうことがあります。
これが「危険運転」の証拠とされてしまう可能性があります。
弁護士は接見(面会)を通じて、言って良いこと、悪いこと、そして事実を正しく伝えるための法的アドバイスを行います。
メリット(4):再犯防止策の提示と情状立証
裁判官は「この人はまた酒を飲んで運転するのではないか?」という点を非常に重視します。
弁護士は、単なる反省文だけでなく、以下のような弁護活動を行い、再犯防止策を行っていることを裁判官に主張することになります。
・アルコール依存症治療への通院状況: 専門病院での受診記録の提出。
・物理的な遮断: 車両の売却、運転免許の自主返納、断酒会への入会。
・監督体制: 家族による厳重な監視体制の構築。
弁護士へ依頼するタイミング:1分1秒を争う

逮捕から起訴が決まるまでの最長23日間が、人生の分かれ道です。
この期間に、被害者感情を逆撫でせずに示談交渉の端緒を掴み、取り調べに適切に対応できるかどうかが、その後の判決、しいては出所後の社会復帰に直結します。
特に飲酒事故の場合、世間の風当たりは強く、親族すらも離れていく「孤立無援」の状態になりがちです。
弁護士が味方として、法的な権利を守り、被害者への誠実な対応をガイドする唯一のパートナーとして弁護活動をサポートしてくれます。
弁護士として最後に強調したいのは、「裁判が終われば解決ではない」ということです。
飲酒運転をしてしまった背景には、アルコールへの依存や、ストレス管理の問題、あるいは「自分だけは大丈夫だ」という慢心が隠れていることが多々あります。
裁判で執行猶予を勝ち取ることが目的ではありません。「二度とハンドルを握らないこと」「お酒との付き合い方を根本から変えること」、これが被害者への最大の謝罪であり、その殻の人生を守る唯一の道です。
まとめ

飲酒運転で人を轢いたという事実は、どれほど悔やんでも変えることはできません。
今すべきことは、現実から目を背けることではなく、法的な手続きに誠実に向き合い、被害者の方に対して自分ができる最大限の償いを模索することです。
弁護士は、依頼者が法的に正当な手続きを受け、過ちを償い、再び前を向いて歩き出すための権利を全力で守ります。
もし、ご自身や大切な家族がこのような事態に陥ってしまったら、迷わず専門家に相談してください。その一歩が、被害者への適切な賠償と、今後の人生の再建の始まりとなります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





