男性離婚に強い弁護士の選び方・争点ごとの考え方

配偶者との離婚を考えているが、面と向かっては冷静に話し合うことができず、弁護士を介入させることを検討しているという方は少なくありません。

その段階で悩みの種になるのがどの弁護士に依頼をすべきかという点ですが、弁護士の良し悪しの判断には分かりやすい基準がありません。

今回は男性離婚に強い弁護士の選び方及び争点ごとの考え方について解説をしていきます。

離婚に強い弁護士とは?

離婚に強い弁護士とは?

弁護士は法律事務全般を取り扱いますが、この世の中には多種多様な法律が存在し、各々の弁護士が取り扱う法律事務も千差万別です。

それぞれの法律事務には対応する法律が存在し、日々、法律に書かれている内容の解釈が争われ、時には法律自体が改正され、実務上の運用もめまぐるしく変化していきます。

そのような状況において、特定の法律事務を重点的に扱っている弁護士とそうではない弁護士を比較した場合、両者の知識やスキルには大きな差が生じ、その差は時間の経過とともに拡大していきます。

餅は餅屋という言葉がありますが、弁護士はただ弁護士であればよいわけではなく、どのような法律事務を、どのような密度で、どのくらいの期間扱ってきたのかを見極める必要があります。

離婚に強い弁護士とは、これまで離婚事件の処理に多くの時間を費やしてきた弁護士ということができ、より具体的には、法律相談等で把握した事実関係をもとに、離婚事件の今後の見通しを適切に見極めることができ、見通した結論まで実際に導いていける弁護士ということができます。

離婚に強い弁護士の選び方

離婚に強い弁護士の選び方

巷に弁護士は数多く存在していますが、弁護士は飲食店のように点数付けがされていたり、口コミにその仕事ぶりの詳細が記載されているということがなく、どの弁護士が離婚に強い弁護士なのか知る術は多くありません。

知人からの紹介を受ける場合等を除き、弁護士を探す最初の取っ掛かりはインターネット上に公開されている法律事務所のホームぺージになるのではないかと思います。

多くの法律事務所にとってホームページは主な集客の手段となっており、それぞれの法律事務所はホームページにおいて積極的に取り扱いたい分野に多くの分量を割き、自らのアピールポイントを記載しています。

離婚や男性離婚というキーワード検索で引っ掛かることはもちろんとして、閲覧した際のホームページの内容が充実しており、実際に取り扱った案件が多く紹介されているという法律事務所には離婚に強い弁護士が在籍している可能性が高いといえます。

ホームページによってある程度の絞り込みを行った後、弁護士に法律相談をすることになりますが、可能であれば複数の弁護士に法律相談することをお勧めします。

弁護士と依頼者は、離婚というデリケートな問題について、継続的な期間、相当程度綿密な関係性を構築することになりますので、実際に対面してコミュニケーションをとった際の印象というものは弁護士を選ぶ上での大きな要素となります。

法律相談の結果、非常に優秀と思われるがコミュニケーションに難があるという弁護士とある程度優秀と思われコミュニケーションも円滑であるという弁護士がいた場合、後者を選択した方が総合的な満足度が高いということが往々にしてありますので、ある程度の質が担保されているという前提においては弁護士の人柄を選択の決め手とすべきでしょう。

争点ごとの考え方

争点ごとの考え方

離婚事件の解決方法

離婚には協議、調停、裁判の3種類があります。

協議、調停は当事者間の話し合いで離婚事件を解決しようとするものであり、両者は話し合いを家庭裁判所で行う否かという点で異なります。話し合いがまとまらない場合、いずれの場合も離婚は成立しません。

裁判は裁判官に離婚の是非を判断してもらうものであり、基本的には調停後に行います。最終的には裁判官が離婚の是非を判断しますので、手続終了時にはいずれかの結論が出ます。

一般的には、協議→調停→裁判と手続が進んでいきますが、後ろに行けば行くほど結論が出るまでの時間が長くかかることになり、裁判まで進んだ場合には結論が出るまでに2~3年ほどの時間がかかる可能性もあります。

婚姻関係が継続している間、基本的には配偶者や子に対する婚姻費用を負担する必要がありますので、離婚条件等の落としどころについてはその経済的負担を踏まえた上で検討することになります。

以下に示すそれぞれの争点について自身に有利な主張をしていくことは当然のことですが、そこにこだわって退き際を見誤ると、有利な結論が得られないにもかかわらず、徒に時間をかけた分だけ婚姻費用の支払いが嵩むという結果に陥りますので、大局的な視点をもって対応することが重要となります。

離婚自体

配偶者が離婚に応じないと主張している場合です。

配偶者が離婚はしないという態度を曲げない場合、協議や調停では結論が出ませんので、離婚をするためには裁判まで進む必要があります。

離婚しない理由については離婚後の経済的な事情が多くの割合を占めていますので、裁判まで進みたくないと考える場合には、経済面の不安を解消できる離婚条件を提案して翻意を求めるといった対応をすることになります。

親権者

親権者

離婚後、どちらが子の親権者となるかについて主張が対立する場合です。

いずれも親権者となることを譲らない場合、協議は調停では結論が出ませんので、親権者に関する判断をしてもらうため裁判まで進む必要があります。

裁判所は夫婦のいずれが親権者となることが子にとってプラスであるかという観点で判断を行いますが、その判断要素は、主として、夫婦のいずれがこれまでに子と多くの時間を過ごしてきたかという点になります。

事案によりますが、男女の働き方の関係から、この観点では母親に軍配が上がることが多くなっているため、これまでの母親の監護状況に特段の問題がない場合には、親権者についてどこまで深刻に争うかという点を慎重に検討する必要があります。

あくまで親権者となることを争うか、面会交流の充実を条件に早期に離婚という結論を得るかは悩ましいところです。

養育費(離婚までは婚姻費用)

配偶者が子の親権者となる場合、子に対する養育費の金額を定める必要があります(離婚までは配偶者や子に対する婚姻費用の金額を定める必要があります)。

基本的には夫婦双方の収入を前提に公表されている算定表を用いて養育費の金額を定めます。

双方に代理人が就いている場合や調停以降に進んだ場合には算定表に基づいて計算される養育費を下回る金額で合意されることはあまり想定されないため、計算の前提となる夫婦双方の収入が適切かどうかについて争うことになります。

夫婦の双方がフルタイムで働いている場合、双方の収入が適切かについて疑義が生じることは少ないのですが、配偶者が主婦やパート収入を得ているに留まるという場合には本来の稼働能力を前提として想定される収入を前提に養育費を算定すべきという主張を行うことになります。

慰謝料

慰謝料

離婚に際して夫婦の一方もしくは双方が離婚になった原因は他方にあるとして離婚慰謝料の支払いを求めることがあります。

結婚生活中の出来事については双方の言い分があり、離婚原因についても夫婦の言い分が一致することはほとんどないため、慰謝料を請求された側が任意に慰謝料の支払いに応じるケースは稀です。

慰謝料を請求された側が慰謝料請求に応じない場合、それでも慰謝料を請求しようと考えれば裁判に進むことになりますが、裁判では、不倫や暴力といった明確な離婚原因があるケースを除き、慰謝料自体が認められない、もしくは、低額の慰謝料しか認められないということも多くあるため、裁判の結論が出るまでにかかる時間と比較した場合、どこまで慰謝料にこだわるべきかという点は慎重に検討する必要があります。

財産分与

婚姻期間中に夫婦で形成した財産を離婚時に分与するという制度です。

婚姻以外の原因(婚前からの預金、贈与、相続等)によって形成された財産(特有財産)は財産分与の対象から除外されるため、特有財産の存否を巡り深刻に争われることが多くなっています。

ある財産が特有財産であることについて配偶者が認めない場合、当該財産の特有財産性を主張するためには婚姻時の預金残高や贈与時の金銭のやり取りに関する資料が必要になりますが、婚姻期間が長くなれば長くなるほどその資料の収集は困難となります。

裁判所は資料が存在しないものについては基本的に特有財産性を認めないという立場であるため、他の離婚条件に争いはないが財産分与における特有財産性についての主張が対立しているという場合、特有財産に関する資料の存否を踏まえ、特有財産性が認められる可能性と裁判の結論が出るまでの時間に支出が予想される婚姻費用の金額(厳密には婚姻費用と養育費の差額)とを比較検討して裁判まで進むべきかどうかを検討する必要があります。

年金分割

年金分割

離婚時に婚姻期間中の厚生年金記録を分割する制度です。

年金分割の制度は将来の年金受給時における夫婦の年金額のバランスを取ろうとするものであり、通常の分割割合は2分の1(50%もしくは0.5と表現することもあります)とされています。

割合について納得できないという意見が多く出る部分ですが、年金分割について裁判所はほぼ例外なく2分の1の分割割合としているため、特殊な事例を除き、この点に時間をかける実益はないと考えた方がよいと思われます。

まとめ

まとめ

今回は男性離婚に強い弁護士の選び方及び争点ごとの考え方について解説をしてきました。

これまでに経験したことがなく、多大なストレスのかかる離婚という問題に立ち向かうにあたり、弁護士選びを失敗したくないということは誰しもが思うことですが、現状、弁護士選びを行うにあたって必ずしも必要十分な情報が提供されているというわけではないため、今回のコラムが多少なりともその手助けになれば幸いです。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二

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