交通事故の被害に遭われた結果、椎間板ヘルニアなどを患ってしまうことがあるかと思います。交通事故の被害で、むち打ちやヘルニアを患ってしまうことは少なくありません。
ここでは、交通事故によって椎間板ヘルニアになってしまった場合の慰謝料について解説いたします。

はじめに

交通事故事件は、事故によって被った損害を金銭で補填してもらうことで解決を図ります。交通事故事件で相手方に請求できる金銭には、以下のものがあります。

・慰謝料:事故による精神的苦痛の補填(通院慰謝料、入院慰謝料、後遺障害慰謝料等)
・積極損害:治療費など実際にかかった費用の補填
・消極損害:事故の影響により減った利益の補填
・物的損害:車や自転車などの修理費等の補填

交通事故で椎間板ヘルニアなどの事故にあわれた場合には、まずは治療に実際にかかった費用などを積極損害として請求し、事故により入院をしたなどして働けなかった期間の賃金等を消極損害として請求することができます。
 
そうした損害の請求の他に、後遺障害が残った場合には、慰謝料を別に請求することができます。入院慰謝料や通院慰謝料については、その期間の長さで額が決定されますが、後遺障害慰謝料については、残った後遺障害がどれくらい重いと認められるかで額が変わります。

ここでは、椎間板ヘルニアになり後遺障害が認められる場合の慰謝料について解説いたします。

後遺障害慰謝料の請求

後遺障害とは

よく聞く言葉として「後遺症」がありますが、「後遺症」と「後遺障害」は異なる概念です。

「後遺症」とは、症状固定時(これ以上治療しても回復が見込めないと医学的に判断がされて治療を終了することになった時点)において身体に残っている症状全般をいいます。
対して、「後遺障害」とは、事故を原因とする後遺症の中でも労働能力に影響を与えているとして自賠責保険が定める基準に該当する症状をいいます。

自賠責基準の該当性

事故後、体が痛いからといって必ずしも後遺障害が発生しているわけではありません。
いかに身体に不具合が残っているとご自身で思ったとしても、それが自賠責の定める基準に該当しなければ「後遺障害」にはなりません。

自賠責の定める基準は、「後遺障害等級認定」として、交通事故により残ってしまった「後遺症」が14個にわけた等級のいずれに該当するかという判断方法で決定がされています。

この14の等級は、後遺障害の症状の種類や重さに応じて決められるもので、自動車損害賠償保障法施行令の別表に基準が定められております。

後遺障害に関する損害賠償を請求するまでの流れ

このように後遺障害に関する損害賠償請求をするためには、後遺障害の認定を受ける必要があります。大まかな流れとしては以下のとおりです。

①交通事故の発生
②治療を受ける(病名の診断を受ける)
③治療を続ける
④医師から症状固定の診断を受ける
⑤後遺障害等級認定を申請する
⑥後遺障害等級認定を受ける
⑦後遺障害に関する損害賠償請求をする
⑧賠償の支払いを受ける

後遺障害の認定を受けるには、このような段階を経ることが必要ですが、交通事故の発生から長期間を要することもあります。
特に、症状固定とは、医師がこれ以上治療しても回復が見込めないと判断することが必要ですが、症状固定の判断がなされるまでに長期間を要することがあります。

椎間板ヘルニアの場合の慰謝料

椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアとは、骨と骨との間にある椎間板という軟骨が、本来あるべき位置から飛び出して、近くの神経を圧迫することで起こるものです。
椎間板ヘルニアの主な症状は、各部の痛み、しびれ、麻痺などの「神経症状」です。

考えられる後遺障害の等級

椎間板ヘルニアを患った場合、以上のような「神経症状」があることから、後遺障害等級としては、12級もしくは14級に該当することが考えられます。これらの認定基準は以下のとおりです。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

12級13号も14級9号も神経症状が残った場合に認定される等級です。
これらは、自賠責の基準をみると「頑固な」ものであるかどうかの違いですが、その認定は、他覚症状があるかどうかを主な基準として決定します。

14級9号は、神経学的検査(患部に刺激を与えて反射や反応を見る検査)や画像検査(MRIやレントゲン)で必ずしも異常が見当たらなくても認定されることがあります。
もっとも、単に自覚症状を訴えるだけでは不十分で、神経症状の存在が医学的に説明できるという医師の意見は必要となります。

一方、12級13号は、神経学的検査や画像検査で異常が認められないと認定がされません。その意味で、自覚症状のみでは足りず、他覚症状(他の人からみても明らかにわかる症状)が必要となります。

椎間板ヘルニアの診断を受けた際には、このような後遺障害認定の等級を獲得することを目指します。

後遺障害等級認定された場合の後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級認定された場合の賠償金について、自賠責の基準では、下記のように決められています。

12級224万円
14級74万円

しかしながら、これらは加害者側の自賠責保険から支払われる金額の上限であり、相場とは異なります。あくまで加害者の加入している保険会社に対して加害者が加入している自賠責保険から支払われる金額であり、これを超える金額は支払われないというわけではありません。

この基準を超える金額については、加害者の加入している任意保険会社が支払うこととなります(加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者本人が支払うことになります)。

弁護士が介入した場合、こうした自賠責の基準ではなく裁判になった場合、どれくらいの金額で判断されるかという基準で話し合いを行います。裁判になった場合に用いられる基準は以下のとおりです。

12級290万円
14級110万円

そのため、交通事故によって椎間板ヘルニアを患い、これが後遺障害として残ってしまった場合には、後遺障害の慰謝料として認定される等級によっては、最大で290万円の慰謝料の支払いを受けることができる可能性があります。

まとめ

ここまで、交通事故で椎間板ヘルニアを患ってしまった場合の慰謝料について解説いたしました。

後遺障害は認定されるかどうか、認定された場合でもどの等級になるかで大きく慰謝料の額が変わってきます。
適切な等級認定を受けるためには専門的な判断が必要なこともあるため、交通事故でお怪我を負われた場合には一度弁護士にご相談していただけますと幸いです。

弁護士に相談をすることで、適切な等級を獲得することが期待できますし、治療から損害賠償の流れなどのご案内をすることができます。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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