交通事故で、大腿骨骨折のケガを負う方は多いです。例えば、バイクで衝突して吹き飛ばされたケース、歩行者が自転車に衝突されたケース等です。大腿骨を骨折すると、股関節の可動域制限や、膝に痛みが残ることがあります。そこで、大腿骨の後遺障害などについて埼玉の弁護士が解説します。
大腿骨骨折とは何か
大腿骨骨折は、特に交通事故や転倒によって発生することが多い外傷です。
症状としては、
- 痛み: 脚の付け根部分に強い痛みを感じ、立ったり歩いたりすることができなくなります。
- 腫れと変形: 骨折した側の足は外側を向き、もう片方の足より短くなることがあります。これにより、歩行困難や日常生活への支障が生じます。
このような症状が現れ、骨接合術(骨折した部分を金属器具で固定し、骨を癒合させる手術)や、人工骨頭置換術(骨折部位の状態が悪い場合や合併症が生じた場合に行われる手術で、人工の関節に置き換えます)の治療を行うことが多いようです。
しかし、治療後もさまざまな後遺症が残る可能性があります。
以下に、大腿骨骨折の後遺障害の症状について説明します。
機能障害
大腿骨骨折によって、股関節や膝関節の可動域が制限されることがあります。特に、大腿骨頚部や大腿骨頭を骨折した場合、股関節の動きが著しく制限されることが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。具体的には、以下のような後遺障害等級が認定されることがあります。
- 8級7号:下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(ほとんど動かない状態)
- 10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(可動域が2分の1以下)
- 12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(可動域が4分の3以下)
短縮障害
骨折治療後に下肢が短くなることがあります。この短縮は、骨癒合時に生じることが多く、特に大腿骨頚部や転子部で顕著です。短縮障害は以下のような等級で認定されます。
- 8級5号:1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
- 10級8号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
- 13級8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
神経障害
骨折によって神経が損傷されると、痛みやしびれなどの神経症状が残ることがあります。これらは以下の等級で認定されます。
- 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの(画像所見で痛みの原因を証明できる場合)
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの(画像所見で証明できない場合でも痛みが存在することが推測できる場合)
大腿骨骨折は特に高齢者に多く見られ、その治療には時間がかかるため、後遺症が残りやすい傾向があります。
適切なリハビリテーションと医療的サポートが重要であり、早期からリハビリを開始することで回復を促進することができます。リハビリをしても、後遺障害が残るケースがあり、その場合、自賠責保険に、後遺障害の申請 をする必要があります。
認定された後遺障害等級によって、慰謝料や賠償額が変わってくるのです。
交通事故による大腿骨骨折の損害賠償について
交通事故による大腿骨骨折で、受け取れる賠償金には、以下のような項目の金銭があります。
・治療費:治療にかかった費用
・休業補償:仕事を休んだ場合に支払われる費用(主婦も含む)
・交通費:通院にかかった費用
・入院雑費:入院したときにかかる諸費用
・入通院慰謝料:通院や入院による精神的慰謝料
・後遺障害慰謝料:後遺症が残ったことに対する慰謝料
・逸失利益:事故に遭わなければ今後得られるはずだった収入の補償
これらを漏れなく計算して、その合計が、賠償金となります。
治療関係費
治療費や入院費は、「必要かつ相当」な範囲で実費が認められるとされています。したがって、特殊な治療をうけても、「相当では無い」と判断されることもあります。
症状固定の後の治療費は、原則として認められません。もっとも、症状の内容・程度に照らして必要かつ相当なものは認めた例があります。
入院中の特別室使用料(個室ベッド)は、医師の指示があった場合や、症状が重篤であった場合、空室がなかった場合等の特別な事情がある場合にかぎり、認められる余地があります。
整骨院・接骨院の施術費用は、医師の指示の有無が重要で、それを参考にして、相当額のみ認められます。針灸、マッサージ、温泉治療も同様です。
入院雑費
1日あたり1500円の額を基準とします。
交通費
入退院や通院の交通費は実費となります。ただし、タクシーの場合は、ケガの程度によります。自家用車利用の場合は、1㎞あたり15円でガソリン代を認めます。
※近年、ガソリン代が高騰化していますが、実務では、1㎞15円で変る気配はありません。
装具・器具等購入費
装具・器具等の購入費用については、症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認められます。
車椅子・義手・義足・電動ベッド・歩行具、車いす、サポーター等がよくあてはまります。
一定期間で交換が必要なものは、将来の費用も加算されます。
※将来の装具・器具購入費用は、取得額相当額を基準に、使用開始の時及び交換時期に対応して、中間利息を控除する
慰謝料
・慰謝料
こちらで詳しく解説しています。
簡単にご説明しますと、慰謝料は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準・財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)と言われる専門書に記載されている表が、基本的に基準として採用されています。
以下では、裁判基準の表を公開します。
表は、ⅠとⅡがありますが、原則として別表Ⅰを使います。
●表の見方
・入院のみの方は、「入院」欄の月に対応する金額(単位:万円)となります。
・通院のみの方は、「通院」欄の月に対応する金額となります。
・両方に該当する方は、「入院」欄にある入院期間と「通院」欄にある通院期間が交差する欄の金額となります。
(別表Ⅱの例)
①通院6か月のみ→89万円
②入院3ヶ月のみ→92万円
③通院6か月+入院3ヶ月→148万円
後遺障害慰謝料
認定された後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 裁判基準 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|
第1級 | 2,800万円 | 100/100 |
第2級 | 2,370万円 | 100/100 |
第3級 | 1,990万円 | 100/100 |
第4級 | 1,670万円 | 92/100 |
第5級 | 1,400万円 | 79/100 |
第6級 | 1,180万円 | 67/100 |
第7級 | 1,000万円 | 56/100 |
第8級 | 830万円 | 45/100 |
第9級 | 690万円 | 35/100 |
第10級 | 550万円 | 27/100 |
第11級 | 420万円 | 20/100 |
第12級 | 290万円 | 14/100 |
第13級 | 180万円 | 9/100 |
第14級 | 110万円 | 5/100 |
例えば、表の通り、12級に該当した場合は、「裁判基準」の「290万円」が正しい相場です。
8級だと830万円です。
逸失利益
逸失利益とは、具体的には、交通事故がなかったとしたら、本来得られるはずだった利益のことをいいます。
逸失利益としては、「死亡による逸失利益」と「後遺障害による逸失利益」があります。
「死亡による逸失利益」は、被害者の方が生存していれば得ることのできた収入をいい、この損害を賠償することを請求することで本来得られたであろう利益を補填します。
対して、「後遺障害による逸失利益」は、事故によって体に痛みが生じたり、関節が動かしにくくなる(可動域制限)などの後遺障害が残ってしまったことで、労働能力が低下し、将来の収入の減少が予想される場合の減収に対する補填をいいます。
後遺障害による逸失利益の計算は、下記の計算式で求められます。
一年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
こちらで詳しく解説しています。
交通事故による大腿骨骨折について弁護士に依頼するメリット
後遺障害が残ると保険金額が大きくなるので保険会社と争いになることがほとんどです。
特に、慰謝料や逸失利益は金額が大きくなります。
弁護士に依頼するのとしないのでは、数十万~事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所でありました)。
弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。
また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。
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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
入院中でお悩みの方や、被害者のご家族の方に適切なアドバイスもできるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。