現在の勤務先について、待遇や人間関係等の不満があり、退職を考えているという方は少なくありません。しかし、会社が退職を認めてくれない、気難しい上司に退職を切り出せない等の理由から退職できないというケースが存在します。
そのようなケースでは未払いの残業代が発生している場合もありますので、今回は退職代行サービスと残業代請求について解説していきます。

労働者の退職の自由

民法は、期間の定めのない雇用契約(正社員として雇用されている場合)について、労働者はいつでも会社に対して退職の申入れをすることができ、その場合、当該雇用契約は労働者の退職の申入れから2週間を経過することで終了すると定めています。

就業規則において、労働者からの退職申入れは退職の2週間以上前までに行うことと定められている場合がありますが、申入れの期間をあまりに長く設定しているような場合には当該規則の効力が否定される場合もあり、原則的には、労働者は退職の2週間前に退職の申入れを行うことで会社を退職することができると考えてください。

また、会社は、退職の申入れをした労働者を法的にいつまでも会社に縛り付けたままにしておくことができません。
退職届を受け取らない、繰り返し退職時期を先延ばしにするといった行為は退職時期を後ろ倒しにしようとする会社の事実上の時間稼ぎに過ぎないという認識を持ちましょう。

退職代行サービス

退職代行サービスは、労働者に代わって会社に対して退職の申入れを行うことにより、会社からの退職を実現しようとするサービスです。

現在、退職代行サービスを提供している主体は多く存在しますが、それらは、弁護士が退職代行サービスを提供している場合と弁護士以外の民間企業が退職代行サービスを提供している場合に分けられます。

弁護士と民間企業が行う退職代行サービスの違い

弁護士は報酬を得て示談交渉等の法律事務を行うことを法律で認められていますが、弁護士以外がそれを行うことは認められていません。
そのため、民間企業は労働者の使者として退職の申入れを行うことはできますが、法律事務に該当する退職条件等の交渉を行うことができません。
会社に対して退職の申入れを行うにあたっては、不利にならないよう、有給消化や退職日の調整、それまでの賃金の処理等の退職条件について会社と交渉を行う必要がありますが、それらの交渉は弁護士でなければできないということになります。

 

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退職代行サービスと残業代請求

会社に対して退職の申入れをした時点で未払いの残業代が発生している場合には、労働者は会社に対して残業代の請求を行うことができますが、会社が請求の満額を認める場合を除き、残業代請求には交渉事がつきものですので、退職代行サービスを利用して退職の申入れ及び残業代請求を行う場合には弁護士が提供する退職代行サービスを選択する必要があります。

会社に対して退職の申入れを行う段階で残業代の計算が完了していれば、退職の申入れとあわせて具体的な未払残業代を会社に請求することになり、当該段階ではまだ残業代の計算ができていない場合にはタイムカード等、残業代計算の前提となる資料の開示を会社に請求することになります。
その後は、会社との間で退職条件の交渉と並行して未払残業代支払いの交渉を行うことになります。

退職代行サービスを用いて退職の申入れとともに残業代請求を行う場合の注意点

経験上、退職代行サービスを利用する労働者の方の多くは、可能な限り会社との接触を避け、早く会社から離れたいという要望を持っています。
退職だけであればそこまで大きな問題が生じることは少なく、比較的短期間の間に処理が進むことが一般的ですが、残業代請求をあわせて行う場合には、会社からの資料開示までの時間、残業代計算の時間、その後の交渉の時間とある程度の時間がかかってしまいます。
そのため、退職の申入れと残業代請求をあわせて行う場合には、上記の労働者側の要望と反して相当期間、会社と接触関係が存在し続けることになりますので、その点を認識した上で、退職の申入れとともに残業代請求を行うか否かを検討すべきと考えます。

また、残業代請求には消滅時効期間(原則として令和2年4月1日以前に発生したものについては2年、同日以降に発生したものについては3年の消滅時効期間)がありますので、退職の申入れをした時点で消滅時効期間が経過していない部分の残業代の請求をすることになります。

まとめ

今回は退職代行サービスと残業代請求について解説してきました。
退職代行サービスの提供主体によってできることに違いがある、退職の申入れとともに残業代請求をすることはできるが、会社との関わり合いをなくすことを最優先で考える場合には残業代請求まですべきかどうかについて検討する必要があるという点に注意が必要です。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
労働分野について専門チームを設けており、退職代行等についてのご相談・ご依頼は労働専門チームの弁護士が担当し解決までサポートいたします。
会社が退職を認めてくれない、退職にあたり請求したい事柄がある等でお悩みの場合には、是非、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二
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