会社経営者の場合、妻の理解が得られず離婚に至る独特の理由があります。いざ離婚するにあたっても、経営者ならではの一般の方とは異なる悩みも多いところです。そこで、一般の方とは異なる視点、特に婚姻費用・養育費算定にフォーカスした違いを紹介します。

経営者に離婚が多い理由~離婚事由


会社経営者は、一般の会社員とは異なる、様々な制約の中で孤軍奮闘しているケースが多いと思われます。他方で、「経営者」に対するステータス・イメージは高く、高い理想に憧れて経営者と結婚する妻もおられます。

経営者は基本的に仕事人間である

自ら会社を経営していると、良くも悪くも自己責任で所得が変わってきます。自ら起業する方は、向上心・意識が高く、どこまでも働いて収入を上げ、会社を拡大させようとワーカホリック気味になることが多いです。

経営者は不安定で孤独な中で生きている

会社を経営すると、会社事務所の家賃等や、従業員の給与・社会保険等に責任を持つことになります。一時は業績が好調であっても、いつ何時業績が悪化するか分からない。そのため、がむしゃらに働く傾向があり、経営への不安から、精神的に余裕のある姿を家庭では見せないことも見られます。

「経営者」イメージへの憧れ

他方、経営者のステータスに憧れて結婚した妻は、優雅な生活を期待していたにもかかわらず、経営者である夫の働き方に対して、家庭を顧みないという評価をし、これを理由として離婚を決断する方がいらっしゃいます。

婚姻費用・養育費の計算


婚姻費用の算定にあたっては、客観的に公正妥当と考えられる、最高裁判所から令和元年12月23日に公表された改定標準算定表に基づき算定します。
具体的には、配偶者それぞれの収入を基礎とし、子どもの年齢・監護の有無を踏まえて計算をしていくことになります。

【婚姻費用の計算式】

[{(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷世帯全体の生活費指数}-権利者の基礎収入]÷12

【養育費の計算式】

〔義務者の基礎収入×{子の生活費指数の合計額÷(100+子の生活費指数の合計額)}×{義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)}〕÷12

基礎収入割合

上記計算式で「基礎収入」いう言葉が出てきます。これは、統計データを基にした、収入から公租公課・職業費(就労に必要な支出)・特別経費(住居関係費・保健医療費など)などを差し引いた、婚姻費用/養育費に割くことができる収入割合を計算するための収入です。そして、この金額は、収入に応じたパーセンテージ(基礎収入割合)を、収入金額に掛け合わせることで算定します。

基礎収入割合は、給与所得者が38%から54%,事業所得者が48%から61%と定められています。

【給与所得者の場合】

収入(万円) 割合(%)
0~75 54
~100 50
~125 46
~175 44
~275 43
~525 42
~725 41
~1325 40
~1475 39
~2000 38

【事業所得者の場合】

収入(万円) 割合(%)
0~66 61
~82 60
~98 59
~256 58
~349 57
~392 56
~496 55
~563 54
~784 53
~942 52
~1046 51
~1179 50
~1482 49
~1567 48

基礎収入割合算定の表を超える場合の基礎収入割合算定方法

それでは、上記の表を超える収入がある場合、どのように計算すれば良いのでしょうか?

算定表の最高額を上限とする方法

収入が増えれば、それに比例して職業費が増えるとも考えられます。しかし、それにも限界があり、上記上限を超える部分は資産形成に当てられるとするのです。そうすると、給与所得者の場合の上限は38%、事業所得者の場合の上限は48%と計算することになります。

基礎収入の割合を修正する方法

収入が増えても、上記のとおり、職業費に充てるにしても限界があります。他方で、公租公課の割合は、高額所得者の方が高くなっており、結局は全体としてみると、高額所得者の方が基礎収入の割合自体は低くなるのです。そこで、基礎収入割合を修正することが考えられます。

福岡高裁決定平成26年6月30日

給与所得者として基礎収入額を算定すべきであるが,年収2000万円までの基礎収入割合は概ね34ないし42パーセント(ただし高額所得者の方が割合は小さい。東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」判例タイムズ1111号285頁参照)とされているところ,年収2000万円を超える高額所得者の場合は,基礎収入割合はさらに低くなると考えられるから,抗告人の職業及び年収額等を考慮して,抗告人の基礎収入割合を27パーセントとするのが相当であり・・・

採用すべき方式

公租公課の点から、高額所得者といってもひとくくりに考えるのは不適切です。そこで、収入が標準算定方式の収入額の上限を500万円程度超える場合には、算定表の最高額を上限とする方法を採用するべきと考えられます。他方、収入が億を超える場合には、基礎収入の割合を修正する方法を採用することが妥当といえます。

養育費についての基礎収入割合算定の表を超える場合の基礎収入割合算定方法

養育費については、婚姻費用と異なり、基本的に算定表の上限値を上限とすることが一般です。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣
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