このページは、弁護士が書く離婚をお考えの方向け記事です。数々の離婚問題を取り扱ってきた専門家が、夫が離婚に応じてくれない場合の理由と離婚の進め方を分かりやすくご説明します。

1 夫が離婚に応じてくれない場合のいくつかの理由

「夫に離婚を切り出したが、なかなか離婚に応じてくれない。どうしたらよいでしょうか。」
このようなお困りの方からの相談をとても多くいただきます。

ご相談者からしたら、
・夫との関係は冷め切っている
・数年間、セックスレスが続いている
・子が生まれ夫に対する愛情がなくなった
・夫とは口も利かない状態である
等の事情から、「離婚するしかない」と思っておられると思います。
しかし、いざ、夫に離婚を切り出した場合に、夫が「うーん」と話しを濁したり、「離婚は絶対にしない」と強硬的な態度に出ることがあります。

では、夫はなぜ、離婚に応じてくれないのでしょうか。
大まかに3つのパターンがありますので、簡単に解説して参ります。

① あなたとの離婚を考えたことはなく、離婚することを具体的に考えようともしないパターン

このパターンの方は、ある意味、あなたが本気で離婚を進めようと思っているとは考えていないことが多いです。つまり、深刻にあなたの悩みをとらえていないパターンです。このパターンの方と離婚するためには、粛々と手続を進め、あなたと離婚をしなければ前に進めないという現実を体感してもらう必要があります。具体的には、両親を交えて話し合いをする、弁護士を交えて交渉を開始する、別居を開示する、などと具体的な行動で示していくことが効果的な面があります。

② 利害関係を踏まえ、離婚をすることは「損」でると考えているパターン

このパターンの方は、現状から変化することが「損」と考えていることが多いです。例えば、離婚をするにしても、養育費を取り決めたり、財産分与を支払ったり、年金分割を取られたりと、損得勘定から、離婚を進めることは「損」であると考えているのです。このパターンの方と離婚をするためには、離婚をしないことが今以上に損をする可能性があるということを理解させることが大切です。具体的には、別居や婚姻費用分担請求を通じて、あなた自身が経済的な状況を確保することからじっくりと腰を据えて進める気持ちを見せることが効果的な面があります。代理人弁護士を通じて、合理的な提案を進めていくことで糸口が見えることがあります。

③ 感情的になっており、理屈よりも意地で離婚を拒絶しているパターン

このパターンの方は、感情が優先してしまい、冷静に考えることができなくなっているタイプのパターンです。①のパターンとは異なり、物事を深刻に考え過ぎてしまい、意地が全面に出ているともいえます。このパターンの方と離婚するためには、離婚裁判を視野に、手続を粛々と進める覚悟が必要です。代理人弁護士に依頼をし、最短で手続を進めていくことが求められます。

2 夫との離婚を進める上で知っておくべきこと

夫との離婚を進めるためには、民法上の離婚原因(民法770条)に該当するか、該当するとしたら、どのような事実がどの条件に該当するか、という視点から夫婦関係を分析しておくことが大切です。
夫が離婚を拒絶している場合には、裁判で離婚をすることを「視野」に入れておく必要があるからです。

配偶者に不貞な行為があったとき。
配偶者から悪意で遺棄されたとき。
配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

3 うつ病になる前に別居、婚姻費用の請求という選択肢

あなたは精神的に限界に近い状況でこのページを見ているかもしれません。
精神は一度、バランスを崩してしまうと、そう簡単に治せるとは限りません。
そのため、あなたが夫との生活に限界を感じているのであれば、「別居」という選択肢があります。夫婦には同居義務というルールがありますが、かかるルールのせいでうつ病に罹患したら元も子もありません。
「別居」をした後に何が待っているか。
あなたと夫の収入にもよりますが、夫の収入が高い場合には、生活費=婚姻費用を毎月支払ってもらう権利があります。
言い換えれば、夫は、あなたと別居していても、あなたに対して、離婚が成立するまでの間、生活費を支払い続けなければならないという状況になります。
上でみたパターン②のような経済的損得に重きがある方はもちろん、そうではない方であっても、実際に別居し、夫婦としての生活もないまま、生活費だけは支払い続けなければならないという状況は辛いものがあります。それゆえ、この「別居+婚姻費用の請求」という選択肢は、夫婦の婚姻関係の破綻にも結び付く事情でありながら、離婚を後押しする面があります。

4 不倫の証拠という最大の武器

万一、夫が女性と浮気をしているかもしれない。
そのような場合には、迷わず、探偵(どの探偵を雇うかは吟味する必要があります)に依頼し、夫が不貞を働いている証拠を集めるようにしましょう。
不貞行為が立証できれば、民法770条の「配偶者に不貞な行為があったとき。」に当たるとして、離婚事由が優に認定されますので、離婚できる確実性を高めることに繋がります。

同時に、離婚条件面を交渉する際にも、優位に交渉を進めることができます。あなたの気持ち次第では、離婚はせず、婚姻費用だけ、何年でももらい続けるという選択肢を選ぶことができるからです。夫が「有責配偶者」であれば、そのような夫から離婚を求めても、信義誠実を重んじる裁判所が「都合がよすぎるよね」として、夫の離婚請求を棄却する可能性が高いからです。
そのため、離婚したくても妻の意向次第でしか離婚できないという立場に置かれますから、交渉上優位に立てるというわけです。

5 法的措置の進め方

以上、夫が離婚に応じてくれない場合の考え方について見て参りました。
最後になりますが、おさらいも兼ねて、法的措置の進め方にも触れておきます。
方法は、大きく分けて3つ。
① 交渉(公正証書作成を含む)
② 調停(審判を含む)
③ 訴訟
です。
どの方法で進めるべきかについては、弁護士によく相談しながら決めるとよいです。
弁護士を依頼する際には、①~③まで最後まで事案を快く担っていただけるかどうかが一つのポイントです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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