このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、自社の株式を買い取りたい中小企業向け(非上場)の法的手段や注意点について、株主兼会社代表者に向けて、有益な情報を提供しております。

はじめに

このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、自社の株式を買い取りたい中小企業向け(非上場)の法的手段や注意点について、株主兼会社代表者に向けて、有益な情報を提供しております。

株式を買い取る必要性とは

会社のオーナー(所有者)は誰か。それは、従業員でもなく、役員でもなく、監査役でもなく、もちろんクライアントでもありません。
会社のオーナー(所有者)は、株主です。
つまり、株主が、会社の価値を保持しており、会社の重要事項を決定する権限があります(重要なことは、株主総会で決めます)。一方、株主が経営をするとは限らず、会社は、役員と委任契約を締結し、会社経営を委任することがあります。その場合、役員になったものは取締役会で業務遂行を決定しますが、決定できる範囲は限られており、やはり重要なことは株主総会で決めることになります。

株主総会は、普通決議、特別決議、特殊決議、という方法で会社の意思決定をすることになります。株主がただ一人ということであれば問題はありません(つまり、株主総会を省略し、会社法319条以下の書面決議による方法が可能であり、株主の意思=会社の決定ということになる)が、株主が二人以上の場合には、「過半数」や「3分の2」というような定足数を満たす必要があります。

そこで問題となるのは、例えば、株主が二人おり、それぞれが50%ずつ保有しているような場合です。もし、二人の意見が一致しないと、一人では過半数にすら達しませんので、経営ができない(違法状態になる)というリスクがあります。もちろん、会社法違反になれば、罰則等を課されるおそれもあります。

そのため、会社の支配権を確保するために、株式を買取りたいというニーズが生じる場合があります。

株式買取の進め方とは

株式も財産ですから、強引に、あるいは強制的に、株式を取り上げるということはできません。そのため、会社法の定めるルールを踏まえたうえで、買取を慎重に進める必要があります。

では、どのような方法で自社の株式の買い取りを進めたらよいでしょうか。
ここでは、非上場会社(上場会社の場合には市場で売買されているため異なる)における株式買取の進め方を説明します。

まず、最近は、ほとんどの会社が株券不発行会社であると思いますので、株券不発行会社を前提にお話しします(株券発行会社では、会社法128条により株券の交付が必要になります)。

合意による買取を目指す

まずは、株式所有者との間で、合意による買取を目指すことになります。
合意によれば、1株につき1円でも10円でも100円でも1000円でも…よいですが、株主は高く売りたい、会社は安く買いたいというのは当然です。ただし、不当に安く買い取った場合には、みなし贈与課税がなされるリスクもあります。
そのため、会社としては、適正な金額の範囲内で安く買い取りをすることが望ましいことになります。

株式の評価方法としてはいくつかあります。
①純資産方式
②配当還元方式
③収益方式
④比準方式
⑤取引事例方式
⑥併用方式
⑦国税庁方式
このうち、比較的評価がしやすい方式は、①純資産方式、⑦国税庁方式です。①については、会社法にもよく登場する評価方法であり、会社の純資産に着目して評価額を決定しますので、客観的に明確です(しかし、その会社の伸びしろ、収益力を考慮しない点で不当という評価はあり得ます)。⑦の国税庁方式も、小会社であれば、純資産価額方式(純資産価額方式とは、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法)をとります。なお、大会社は、類似業種比準方式により評価されます。

なお、会社法上、自社株の取得については、配当を行うことのできる財源と同様の分配可能額になるなどの制限があります。

合意ができたら株式譲渡契約書を作成する

合意ができたら、株式譲渡契約書を作成します。
会社が株式を買い取る場合には、最低限(注:例えとして、極めて簡易な内容になっており、現実にはより内容を検討する必要があります)、以下のような内容は記載する必要があります。

株式会社●(以下、「甲」という。)は、▲(以下、「乙」という。)より、**年**月**日付で、下記条件にて、株式会社●(本店所在地:***)の普通株式(以下「本株式」という)XX株分を譲り受けた。

第1条 本株式の譲渡金額は1株につき金XX万円とする。
第2条 本株式に関わる株主としての権利の移転は、代金の振り込み時点をもって行う。
第3条 本株式は券面が不発行となっているため、株券の受け渡しは行わない。
第4条 譲渡代金の振込期限は**年**月**日とし、期限内に下記の振込先口座に甲名義の満額の振り込みがなかった場合、本契約書は無効とする。なお、振込等にかかる手数料は甲が負担する。
代金の振込先口座  **銀行**支店 普通預金******
第5条 本株式には株式会社●の定款による譲渡制限があるため、株式会社●の取締役会での承認を条件とする。

会社の承認を受ける(株主総会、または定款で定めがあれば取締役会)

それを受け、株式買取が決定したら、株主総会、または定款で定めがあれば取締役会による承認を受ける必要があります(会社法139条)。この手続を怠ると、後に「無効」と主張されるおそれがあります。
なお、売主となる株主は、「みなし配当」(自社株買いにより得た資金の一部について、株主は会社から配当金を受領していないにもかかわらず、株主に対する利益の分配を行ったとみなされて課税される税制といわれます)に該当し納税が必要となる場合もあるので、売却額から源泉徴収されるおそれがあることは含みおいた方がよいです。みなし配当が生じる場合には、会社側から支払う際に、20.42%もの源泉徴収が必要となります。

株主からの株式買取請求とは

最後に、株主からの株式買取請求について触れます。
株式の買い取り額が折り合わなかった場合には、株主の方から会社に対し、株式の買い取りが請求される場面があります。

しかし、会社法上法定され、買取請求が権利化されているのは、単元未満株の買い取り請求という場面と、組織再編時の株主総会決議に反対する株主の買い取り請求のみです。

しかし、こういったケースは限定的な場面でしか生じませんので、単に、株式がいらなくなったから会社に買い取ってくれという請求は認められておりません。
この場合、株主は、株式譲渡承認請求という形で、第三者に譲渡することを承認させることを求めるしかありません(会社法138条)。会社は、承認しない場合には、会社自身もしくは指定買取人に株式を買い取らせることになります。なお、2週間以内に株主に通知しなければなりませんので、期間が短く、迅速さが求められます。また、会社自身が買い取る場合には、株主総会特別決議が必要です(会社法309条2項1号、140条)。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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