弁護士 田中智美

ハラスメント対策が注目される理由

職場でのハラスメントトラブルは、近年、増加の一途を辿っています。
2021年6月に厚生労働省が公表した「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2020年度の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は7万9190件で、相談種類別の第1位。都道府県局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」においても、案件別でトップとなっています。
ハラスメントは、業種、業態、会社の規模の大小を問わず、およそ人が複数集まる場所では常に発生するリスクがあるものです。
特に職場でのハラスメントトラブルは、被害を受けた従業員が心身に深刻なダメージを負い、酷い場合には就労を継続することができなくなる状態にまで追い込まれることもあります。少子高齢化が進む現在、せっかく獲得した貴重な人材をそのような形で失ってしまうことは、会社にとって大きな損失です。
また、そのようなトラブルが頻発するようでは、職場全体の雰囲気や環境も悪くなり、会社にとって良いことは一つもありません。
さらに、昨今では、ハラスメントトラブルに対する対応を誤ると、SNSへの書き込み等を通じてネット上に情報が拡散し、思わぬ風評被害を受ける恐れもあります。
このような事態に陥らないようにするためにも、職場でのハラスメント対策は、今や全ての会社にとって必須であると言えるでしょう。

改正パワハラ防止法の施行時期

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称「労働施策総合推進法」。「パワハラ防止法」とも呼ばれています)は、大企業に対しては2020年6月1日から、中小企業に対しては2022年4月1日から施行されました。
これにより、パワーハラスメント(パワハラ)が法規制の対象となることが明確化されたほか、会社の規模を問わず、事業主はパワハラを防止するための雇用管理上の措置を取ることが義務化されました。

何がパワハラに当たるのか?

それでは、そもそも、職場におけるどのような言動・行動がパワハラに当たるのでしょうか?
パワハラ対策を行う以上、会社の方でも、その対象となるパワハラの概念を正しく理解しておく必要があります。

パワハラの定義

改正パワハラ防止法の施行に伴い、2020年1月15日、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働省告示第5号)」(以下「パワハラ防止法の指針」と言います)が公表されました。
このパワハラ防止法の指針によると、職場におけるパワハラとは、次の3つの要素を全て満たす行為を言うものとされています。

①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの

客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。
また、行為者(加害者)は上司で、被害者は部下というように当事者の関係性が固定されているわけではありません。そのため、例えば、部下が複数名で上司の業務命令を無視したり、上司の人格を否定するような言動を繰り返す場合には、部下から上司に対するパワハラ(いわゆる逆ハラスメント)に該当することになります。

パワハラの代表的類型・該当例

パワハラ防止法の指針では、さらに、職場におけるパワハラの代表的な言動の類型、該当すると考えられる例が挙げられています。
経営者や管理職の皆様にはすでにご存じかもしれませんが、今一度おさらいしておきましょう。

①身体的な攻撃(暴行、傷害)
≪該当例≫・殴打、足蹴りを行う
・相手に物を投げつける
②精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
≪該当例≫・人格を否定するような言動を行う
相手の性的指向、性自認に関する侮辱的な言動を含む
・業務の遂行に必要な以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)
≪該当例≫・1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
≪該当例≫・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する
⑤過少な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
≪該当例≫・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
・気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
≪該当例≫・労働者の性的指向、性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する

最近の事例として、「新型コロナ対策ということで、周りは皆テレワークなのに、自分だけが出社させられている」、逆に、「皆が出社しているのに、自分だけ新型コロナ対策を理由にテレワークを命じられている」というケースも、合理性が認められなければ、③「人間関係からの切り離し」として、いずれもパワハラに当たると考えられます。

パワハラにあたるかどうかの判断

個別の事案について、パワハラに該当するかどうかの判断は、当該言動の目的、言動が行われた経緯や状況等、様々な要素を総合的に考慮して行います。
この点、会社の担当者からよく聞かれるのは、「そうはいっても、結局何がアウトだと判定されてしまうのか、よく分からない」、「相手の主観で『パワハラだ』と受け取られてしまったらお終いだと思うと、必要な注意もできなくなってしまう」というものです。
上司や管理職が、パワハラだと指摘されることを恐れて過度に委縮してしまい、必要な業務上の指導も行えなくなってしまうのでは、会社組織として本末転倒です。
繰り返しになりますが、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには該当しません。
また、パワハラに当たるかどうかが、相手の主観で決まるということはなく、客観的に判断されます。その言動や行為が業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導かどうかは、あくまで客観的に見て判断するのです。
部下を指導教育しなければならない上司が、部下からパワハラ被害を訴えられることを恐れるあまり、ミスを犯した部下に対しても何ら適切な注意指導をしないということでは、業務の円滑な遂行の妨げになりますし、その部下のためにもなりません。

改正パワハラ防止法上の義務

改正パワハラ防止法は、会社に対して次のような義務を課しています。
条文に則して確認してみましょう。

①事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(同法第30条の2第1項)。

②事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(同法第30条の2第2項)。

③事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置(※)に協力するように努めなければならない(同法第30条の3第2項)。
※国の行う広報活動や啓発活動を指す。

④事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない(同法第30条の3第3項)。

特に下線を引いた部分が重要で、会社は、
■パワハラに関する従業員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体 制の整備を含む、「雇用管理上必要な措置」を講じなければならない
■従業員がパワハラに関する相談をしたこと、または、会社による相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その従業員を解雇するなどの不利益な取扱いをしてはならない(不利益取扱いの禁止)

ということです。

会社に求められる「雇用管理上必要な措置」とは?

改正パワハラ防止法第30条の2第1項によって講ずることが義務づけられた「雇用管理上必要な措置」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
「雇用管理上必要な措置」の具体的な中身については、パワハラ防止法の指針が示しており、それは次の全10項目です。

【事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発】
①職場におけるパワハラの内容及び職場におけるパワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
(取り組みの具体例)
・就業規則等の服務規律を定めた文書において、パワハラを行ってはならない旨を規定する
・社内報、パンフレット、社内ホームページ等の広報・啓発資料に、パワハラの内容や発生原因、パワハラを行ってはならない旨を記載し、配布等を行う
・従業員向けにパワハラに関する研修、講習を実施する

パワハラに関しては、業務上適正な指導と違法と評価される言動との違いをよく理解することが重要となります。管理職や上司が自らの言動について客観的に把握できるよう、具体的な事例を用いた教育やロールプレイングによる教育研修を行えば、許容される行為とそうでない行為との線引きができるようになっていくでしょう。

②行為者について、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
(取り組みの具体例)
・就業規則等の服務規律を定めた文書において、パワハラを行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する
・パワハラを行った者は、現行の就業規則等の服務規律を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発する

なお、厚生労働省が運営するホームページ「あかるい職場応援団」では、就業規則の策定モデルを公開しており、参考になります。
出典:あかるい職場応援団「パワハラ対策7つのメニュー〈ルールを決める〉」

【相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】
③相談窓口を予め定め、労働者に周知・啓発すること
(取り組みの具体例)
・相談に対応する担当者を予め決めておく
・相談に対応するための制度を設ける
・外部の機関に相談への対応を委託する

④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
(取り組みの具体例)
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みを整える
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、予め作成した留意点などを記載したマニュアルに基づいて対応する
・相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

なお、パワハラ防止法の指針には、「相談窓口においては、被害を受けた労働者が委縮するなどして相談を躊躇する例もあることを踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら」という表現が加わるなど、相談窓口の担当者には、相談者の心情に寄り添った丁寧な対応が求められます。
また、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること(いわゆる「二次被害」)が発生しないよう注意する必要があります。
もっとも、相談窓口の担当者は相談者(被害者)の言い分だけを鵜呑みにし、その全面的な味方になってしまってもいけません。
相談窓口はあくまでも中立公正な立場で、予断を持たず、事情聴取の対象者に対して公平な態度で接することが肝要です。

【職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応】
⑤事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(取り組みの具体例)
・相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認する(その際には、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止め方などその認識にも適切に配慮すること)
・相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取するようにする
・事実関係の迅速かつ正確な確認が困難な場合においては、都道府県労働局に設置された紛争調整委員会の調停の申請を行うなど、中立な第三者機関に紛争処理を委ねる

⑥職場におけるパワハラが生じた事実が確認できた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
(取り組みの具体例)
・事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等を行う

⑦職場におけるパワハラが生じた事実が確認できた場合、行為者に対する措置を適正に行うこと
(取り組みの具体例)
・就業規則等の服務規律を定めた文書における職場におけるパワハラに関する規定等に基づき、行為者に対して、必要な懲戒その他の措置を講じる
・事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講じる

⑧改めて職場におけるパワハラに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。また、パワハラが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること
(取り組みの具体例)
・職場におけるパワハラを行ってはならない旨の方針及び職場におけるパワハラを行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報やパンフレット、社内ホームページ等の広報・啓発資料に改めて掲載し、配布する
・労働者に対して、職場におけるパワハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施する

【併せて講ずべき措置】
⑨相談への対応または当該パワハラに関する事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシー(性的指向・性自認や病歴、不妊治療微な個人情報も含まれる)を保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること
(取り組みの具体例)
・相談者、行為者等のプライバシー保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行う
・相談窓口においては、相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等の広報・啓発資料に掲載し、配布する

⑩相談したこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
(取り組みの具体例)
・就業規則等の服務規律を定めた文書において、パワハラの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定する
・社内報、パンフレット、社内ホームページ等の広報・啓発資料に、パワハラの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布する

改正パワハラ防止法に違反した場合の罰則

パワハラ防止法では、次のような罰則が規定されています。

≪パワハラ防止法第41条≫
第36条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する。

上記の条文の中に出てくる第36条第1項とは、厚生労働大臣が事業主から必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置の施行に関し必要な事項について報告を求めることができる旨を定めたものです。
つまり、厚労省からそうした報告を求められた際に、報告をしなかったり、嘘の報告をした事業主には、刑事罰として20万円以下の過料が科されるということです。

また、罰則とは別に、厚生労働大臣は、パワハラ防止法の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導または勧告をすることができるほか、勧告を受けた事業主が従わなかった場合にはその旨を公表することができると規定されています(パワハラ防止法第33条)。
このように、パワハラ防止対策を怠った事業主は、行政処分を受けるリスクもあるのです。

なお、パワハラ防止法からは離れることになりますが、会社はその雇用する従業員に対して安全配慮義務を負っていますので、「職場でパワハラが行われていることを知っていながら、漫然と放置していた」などという場合には、民法上の損害賠償責任(民法第415条第1項、第715条)を負う可能性があります。

パワハラ以外のハラスメントについて

ここまではパワハラを中心に説明してきましたが、ハラスメントには、他にも、
■セクシャルハラスメント(セクハラ)
■マタニティハラスメント(マタハラ)
があり、すでに定着した用語・概念として使用されているほか、近年では、
■介護休業等に関するハラスメント(ケアハラ)
■男性の育児休業等に関するハラスメント(パタハラ)
■性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)
■消費者や顧客から受ける嫌がらせであるカスタマーハラスメント(カスハラ)
■就職活動中の学生等の求職者に対するハラスメント
などが新たに登場し、マスコミなどにも取り上げられるようになってきています。
このうち、カスハラは加害者が(会社内の人間ではない)第三者である点が、求職者に対するハラスメントは被害者が(まだ会社と雇用契約を結んでいない)第三者である点が、他のハラスメントと異なっています。とはいえ、前者については、事業主は労働者に対し良好な職場環境を提供する義務があるという観点からすれば労働問題の一種と捉えることができますし、後者についても企業責任(不法行為による損害賠償責任、使用者責任等)を問われかねないという意味では、看過できないものです。
さて、これらパワハラ以外のハラスメントについて、法律の規制はどのようになっているのでしょうか。

※なお、ハラスメントの境界線は実は曖昧です。
例えば、マタハラといっても、妊娠・出産という女性に生じるライフイベントに対するハラスメントであると捉えるとセクハラにもなり得ますし、妊娠・出産したことを原因として個の侵害や人間関係からの切り離しがあればパワハラにもなり得ます。
このため、相談者から事実関係を聞き取る相談窓口担当者の方は、「これは●●ハラだ」と無理にカテゴライズする必要はないと思います。事案によっては、2種類以上のハラスメントの複合型ということも考えられるからです。

セクハラに関する規制

職場におけるセクハラについては、男女雇用機会均等法により、雇用管理上の措置を講じることがすでに義務付けられています。

【セクハラ防止のために講ずべき雇用管理上の措置】
①職場におけるセクハラの内容・セクハラがあってはならない旨の方針の明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
③相談窓口を予め定めること
④窓口担当者は、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
また、広く相談に対応すること
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥事実関係が確認できた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
⑦事実関係が確認できた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講じること(事実確認ができなかった場合も同様)
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑩相談したこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

さらに、今般の法改正により、事業主及び労働者の責務が法律上明記されたほか、
■事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
■自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合の協力対応
などが定められ、対応策が強化されています。

マタハラに関する規制

職場におけるマタハラについては、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を講じることがすでに義務付けられています。
概要については、次のとおり指針が定めています。

【マタハラ防止のために講ずべき雇用管理上の措置】
①マタハラの内容、妊娠・出産等に関する否定的な言動がマタハラの背景等となり得ること、マタハラがあってはならない旨の方針、妊娠・出産等に関する制度の利用ができる旨を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
③相談窓口を予め定めること
④窓口担当者は、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
また、職場におけるマタハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生する恐れがある場合や、職場におけるマタハラに該当するか否か微妙な場合等であっても、広く相談に対応すること
⑤その他のハラスメントの相談窓口と一体的に相談窓口を設置し、相談も一元的に受け付ける体制の整備が望ましいこと
⑥事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑦事実関係が確認できた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
⑧事実関係が確認できた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑨再発防止に向けた措置を講じること(事実確認ができなかった場合も同様)
⑩業務体制の整備など、事業主や妊娠した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じること
⑪妊娠等した労働者に対し、妊娠等した労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲との円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが望ましいこと
⑫相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑬相談したこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

ケアハラに関する規制

職場におけるケアハラについては、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を講じることがすでに義務付けられています。
概要については次のとおり指針が定めており、「育児休業等の関するハラスメント」の中に介護休業等に関するケアハラも含まれています。

【ケアハラ防止のために講ずべき雇用管理上の措置】
①育児休業等に関するハラスメントの内容、育児休業等に関する否定的な言動が育児休業等に関するハラスメントの背景等となり得ること、育児休業等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針、制度等の利用ができる旨を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
③相談窓口を予め定めること
④窓口担当者は、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
また、育児休業等に関するハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生する恐れがある場合や、育児休業等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合等であっても、広く相談に対応すること
⑤その他のハラスメントの相談窓口と一体的に相談窓口を設置し、相談も一元的に受け付ける体制の整備が望ましいこと
⑥事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑦事実関係が確認できた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
⑧事実関係が確認できた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑨再発防止に向けた措置を講じること(事実確認ができなかった場合も同様)
⑩業務体制の整備など、事業主や制度等の利用を行う労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じること
⑪制度等の利用の対象となる労働者に対し、労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲との円滑なコミュニケーションを図りながら自身の制度等の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが望ましいこと
⑫相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑬相談したこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

SOGIハラに関する規制

SOGIハラについては、現在、これを明確に禁じる法律はありません。
しかしながら、パワハラ防止法の指針では、SOGIハラやアウティング(労働者の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに暴露すること)も、パワハラに該当し得ることが明記されています。
例えば、「あいつは同性愛者だから、同性のグループで作業させるのはやめよう」などと発言することは、本人の了解を得ていないとすればアウティングとして「個の侵害」になりますし、また、同性のグループからその人だけ隔離するとすれば「人間関係からの切り離し」として、パワハラに該当するでしょう。
パワハラ防止法の指針では、性的指向や性自認への理解を深め、差別的言動や嫌がらせが起こらないよう注意喚起がなされています。
直接規制する法律が未だ存在しないからといって、こうした行為が許されるというわけではないのです。

カスハラ、求職者に対するハラスメントに関する規制

これらのハラスメントについては、現在、これを明確に禁じる法律はありません。
しかしながら、パワハラ防止法の指針では、職場におけるパワーハラスメント防止等のための望ましい取り組みとして、カスハラにつき、相談体制の整備、被害者への配慮のための取り組み等を行うことを推奨しており、また、パワハラを禁じる方針を示す際の対象者として、就職活動中の学生等の求職者を挙げています。

ハラスメント概念の変化

ハラスメントの概念は常に一律、一定というわけではありません。
それは、時代や社会情勢、人々の意識の変化に従って、同じく変化していくものです。
ご年配の経営者の中には、「昔はこんなことが問題になることなんてなかった」、「いちいちこんなこと、気にしていられない」、「最近の人は打たれ弱いだけではないか」といった感想を持たれる方もいるかもしれません。
しかし、時代は常に変化しています。「昔は許されたから」といって、それが行為の違法性を減じる免罪符になるわけではないのです。
パワハラ防止法が求める雇用管理上の措置を講じることは、未然にハラスメントトラブルを予防し、職場環境を改善することで、離職率の低下や勤務意欲の向上、ひいては労働生産性の改善に繋がり、会社にとってもメリットが大きいものです。
経営者や管理職の皆様には、「職場でのハラスメントは絶対に許されないもの」との認識を新たにし、ハラスメントトラブルの発生防止に向けて、今後も最新の知識を取り入れていっていただきたいと思います。

以上