車で移動していて橋を渡る度に、ずっと気になっていたことがあります。
それは、橋のたもとに掲げられた河川名の看板のローマ字表記。
例えば、荒川だと、「Arakawa River」となっていて、これをそのまま日本語に直すと、「荒川川(あらかわ・がわ)って、『かわ』がダブることになって、変じゃないか?」という素朴な疑問です。
片や、「Tone River」(利根川)のように、そのまま日本語に直しても「かわ」がダブらない表記がされているものもあります。
これ如何に?
さっそく調べてみると、国土地理院が2016年(平成28年)3月に出した通達「地名等の英語表記規定」(国地達第10号)なるものがあって、そこにきちんと定められておりました。
これによると、まず、英語表記の方式には、
■追加方式・・・表音のローマ字表記に地形や種別を表す英語を追加する方式
■置換方式・・・表音のローマ字表記のうち、地形や種別を表す部分を対応する英語に置き換える方式
の2種類があります(同規定第3条2項、3項)。
そして、「島以外の単体の自然地名の英語表記」の方法として、次のように定められています。具体例とともに見てみましょう。
①「固有名詞的部分の読みが2音拍で漢字1文字の場合は原則追加方式によるものとする」(同規定第8条2項2号)
【例】荒川「Arakawa River」、中川「Nakagawa River」
②「固有名詞的部分の読みが2音拍で漢字1文字でない場合で、地形を表す英語が末尾に付く場合(川、峠及び海岸)は、原則置換方式によるものとする」(同規定第8条2項4号)
【例】利根川「Tone River」、那珂川「Naka River」
③「固有名詞的部分の読みが3音拍以上の場合は原則置換方式によるものとする」(同規定第8条2項5号)
【例】思川「Omoi River」、小貝川「Kokai River」
ここまできて、「あれ?例えば、『江戸川』は②に当てはまるのだから、『Edo River』と表記すべきなのに、実際には『Edogawa River』になっているのはどうして?」と思った方は、ご安心を。
実は、②には例外も定められていて、「ただし、地名全体が地域名、行政名、居住地名、公共施設名等に広く使用されている場合は追加方式によるものとする」とされているのです(同規定第8条2項4号ただし書き)。
江戸川は「江戸川区」というように、地域名、行政名として広く使用されているため、この例外規定によって追加方式での表記、すなわち、江戸川「Edogawa River」となるのですね。
なお、多摩川については、国土地理院の見解(「多摩」も地域名として広く用いられているが、「多摩」市、「多摩」動物園など、「多摩」だけで用いられていることが多いため、②の例外とはせず、②の原則である置換方式のままでよい)では、「Tama River」ということになっていますが、上記の通達が比較的最近出されたことも影響しているのか、実際には「Tamagawa River」となっている看板もあるようです。
これで、一応、私の長年に渡る疑問は解消いたしました。
(もっと早く調べれば良かった・・・)
しかし、生活に身近な、こんなニッチなところにも、法規・通達の類が存在するのだなぁと感慨深いです。