
新しい民法が令和8年(2026年)4月1日から施行されました。離婚に伴う財産分与についても法改正を受け、変更されている部分がありますので、新しい民法下での財産分与について、従前と変わらない部分はどこか、変わるのはどこか、特に財産分与についての考慮要素について重点を置き、要点を説明したいと思います。
新民法下での財産分与
財産分与とは

離婚の際、夫または妻は、相手方配偶者に対し、婚姻中に築いた財産の分与の請求をすることができ、これを「財産分与」と呼んでいます。
財産分与については、夫婦で協議して決めることが多いでしょうが、夫婦で合意ができない場合は家庭裁判所に対して調停・審判を求めることができます。また、離婚調停の中で決められない場合でも、離婚裁判の中で裁判官の判断を仰ぐこともできます。
新民法で財産分与の何が変わったのか

今回の民法改正では、共同親権という新しい制度ができたことに注目されがちですが、実は財産分与に関しても
①請求期間の伸長、
②考慮要素の明確化、
③情報開示命令
という変更点があります。
①請求期間の伸長

①請求期間の伸長については、これまでの民法では、家庭裁判所に財産分与の請求をすることができる期間を「離婚の時から2年以内」と制限していました。
しかし、実際にはDVで避難中であるとか、体調を崩していたとか、離婚することを先行させ、財産については話し合う機会を設けられなかった等、夫婦間における事情により期限内に請求することができず、離婚後の一方当事者が経済的に不利益をえるということもありました。
そこで、新民法768条2項ただし書は、財産分与の請求期間を「離婚の時から5年以内」と伸ばしたのです。
この5年間の財産分与期間になるのは、改正民法が施行されてからの離婚となっており、それ以前に離婚が成立した財産分与には適用されません。したがって施行日(令和8年4月1日)前に離婚した場合の財産分与の請求期間については、なお2年という短い期間になってしまいます。
②考慮要素の明確化

これまでの民法では、財産分与について家庭裁判所の判断基準は「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」判断する、としか規定されていませんでした。
これに対し、新民法768条3項は、前段において、財産分与の目的を「離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため」とし、「当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情」を考慮する、と考慮要素を明確化しました。
さらに同項後段では、「婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」としています。これは、民法改正前から原則とされていた、いわゆる「2分の1ルール」を明文化したものです。
実は、財産分与といっても、実は様々な要素があるとされています。
まず、上記に述べたような「婚姻中に形成された夫婦財産関係の清算の要素(清算的要素)」です。これは、財産分与の中心的な要素といってもよく、基本的にはこれまでの離婚の多くのケースでは、この要素のみによって財産分与の具体的な内容を決めていたものと思われます。
このほかに、「離婚によって経済的に困窮する夫婦の一方に対する扶養の要素(扶養的要素)」もあり、また、「離婚に伴う損害賠償の要素(慰謝料的要素)」もある、とされています。
先ほど触れた旧民法768条3項では、家庭裁判所が財産分与を定める際の判断基準について、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」判断するとしかしていなかったので、法律上は財産分与の清算的要素のみを前面に出していたといえます。しかし、実際には扶養的要素や慰謝料的要素も無視はできませんので、これらの要素を考慮せずに財産分与が少額にとどまるなどの弊害が生じているとの声もありました。
そこで改正民法768条3項では、財産分与の目的が「離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため」であることを明らかにするとともに、具体的な考慮要素を示し、財産分与の中に清算的要素と扶養的要素があることを明らかにしているのです。
清算的要素

3つの要素のうち、「清算的要素」は、「当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度」の部分がこれに当たるといえます。
財産分与の対象となる夫婦共有財産は、当事者双方がその協力によって「取得」した財産のみならず、双方の協力によって「維持」された財産も含まれるので、実質的共有財産だけでなく、一方の特有財産(例:親からの遺産、独身時代に得ていた金員など)であっても、他方配偶者の協力により、その価値が維持された場合には、維持された分について寄与に応じた清算の対象とする考え方が生まれます。
「取得」や「維持」という寄与は、個々の財産の取得又は維持に関する寄与行為だけではなく、婚姻中の役割分担、たとえば家事や育児といった非経済的寄与も含むとされています。
逆に一方当事者が財産を浪費した場合、「取得」又は「維持」について消極的寄与があったとなりますから、これも考慮されるでしょう。
実際には、各当事者の積極的・消極的寄与については、家庭によって様々であり、また一律に比較ができないため、なかなか寄与度を図ることはできないかもしれません。 どちらかだけが明らかに財産の取得・維持に貢献したといえないような場合には、当事者間の衡平の見地から、「各当事者の寄与の程度が異なることが明らかでない」として、寄与の程度を相等しいものとならざるを得ないところがあります。
したがって、改正民法においても財産の取得・維持について消極的・積極的寄与があるというのであれば、その内容はきちんと証拠化しておくといったことが重要といえるかもしれません。
扶養的要素

改正民法では 「婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入」 (新民法768条3項)という部分が扶養的要素として記載されています。
「婚姻中の生活の水準」や「職業及び収入」は、婚姻中の夫婦の生活水準と比して、離婚による生活水準が低下する場合などが考えられます。「婚姻中の協力及び扶助の状況」は、当事者の婚姻中の役割分担の状況(家事労働を一方がになったたため、当該配偶者が稼働能力が減少したなどの状況などが想定されます。)等を把握し、婚姻生活が離婚後の経済的地位に及ぼした影響等を考慮すると考えられます。
「各当事者の年齢、心身の状況」は、例えば、請求する側が高齢・持病により離婚すると生活が困窮するといった場合を想定しています。
扶養的財産分与

改正新民法で、扶養的要素をも考慮することは想定されていますが、実際にはこれまでの財産分与の判断枠組みを変更するものではないとされています。
扶養的財産分与は、清算的財産分与や慰謝料による給付では離婚後の元配偶者の保護が十分ではない場合に、資産・収入等の一切の事情を考慮して、補充的に認められるものとして裁判所では考慮要素となっています。
改正民法においても、請求者側の有する資産・収入等に清算的財産分与や慰謝料による給付額を加えた額を基礎として、新民法768条3項に明示された財産分与の目的に沿うよう、双方の経済的状況を比較するなどして、扶養的財産分与も容れるべき、となれば、家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられているものの額及び方法を定めることもできるようです。
③情報開示命令の新設

情報開示命令、というのは、家庭裁判所が財産分与を定めるに当たり、夫や妻に情報の開示を命じることができる、とする制度のことです。
これまでにも、調停や審判の中で、「調査嘱託」や「文書送付嘱託」といった制度があり、一方当事者から他方当事者の財産に対し、財産の情報を出すよう第三者機関等に対し裁判所が照会などをするという制度自体はありましたが、この情報開示命令はその情報の開示を命じられた当事者が正当な理由なくその情報を開示しなかったときなどには家庭裁判所は過料の制裁を科すことができるものとされています。
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