飲み会の帰り道、ちょっとした口論が暴力に発展してしまった。友人とのトラブルで物を壊してしまった。感情が高ぶって相手に手を出してしまった――このような日常的な場面で起こりうる「傷害」「暴行」「器物損壊」は、刑事事件として警察の介入を招く可能性があります。

これらの犯罪は、被害者が存在する「被害者あり犯罪」であり、示談交渉が最も重要な解決手段となります。本コラムでは、傷害・暴行・器物損壊の法的な構造、逮捕のリスク、そして最善の解決策について、埼玉県大宮の弁護士が詳しく解説します。

傷害・暴行・器物損壊の法的な違いと刑罰

暴行罪と傷害罪の違い

「暴行罪」(刑法208条)は、人の身体に対して有形力を行使したが、傷が生じなかった場合に成立します。法定刑は「2年以下の懲役・30万円以下の罰金・拘留・科料」です。「傷害罪」(刑法204条)は、暴行の結果として被害者に傷害が生じた場合に成立します。法定刑は「15年以下の懲役・50万円以下の罰金」と、暴行罪より大幅に重くなります。

傷害の「程度」と実務上の評価

傷害の程度は量刑に直結します。数日で治る軽傷の場合と、骨折・後遺症を残す重傷の場合では、検察・裁判所の対応が大きく異なります。また傷害致死(傷害の結果死亡した場合)になると、さらに重い刑罰が科されます。

器物損壊罪の成立要件

「器物損壊罪」(刑法261条)は、他人の物を損壊または傷害した場合に成立します。法定刑は「3年以下の懲役・30万円以下の罰金・科料」です。器物損壊罪は「親告罪」であり、被害者の告訴がなければ起訴することができません。そのため、被害者との示談によって告訴を取り消してもらうことが、最も直接的な解決策となります。

逮捕・勾留のリスクと在宅捜査

現行犯逮捕と後日逮捕

傷害・暴行事件では、現場で警察が介入した場合に「現行犯逮捕」が行われることがあります。喧嘩の現場に警察が駆けつけた場合、当事者の一方または双方が逮捕されるケースは珍しくありません。また、事件後に被害者が被害届を提出した場合には、警察が捜査を行い「通常逮捕」(令状逮捕)に至る可能性があります。

ただし、全ての傷害・暴行事件で逮捕が行われるわけではありません。逃亡や証拠隠滅の恐れが低い場合(自宅・職場が明確、初犯で軽微な傷害)は、「在宅捜査」として進む場合があります。在宅捜査では、日常生活を継続しながら定期的に警察に出頭し、事情聴取に応じます。

逮捕後72時間の重要性

逮捕されてしまった場合、逮捕から勾留が決定されるまでの最大72時間が最初の山場です。この期間に弁護士が接見を行い、黙秘権の行使方法や調書への署名拒否について具体的なアドバイスを伝えることが、その後の手続きの行方を大きく左右します。

示談交渉の重要性と具体的な流れ

示談が起訴・不起訴を左右する

傷害・暴行・器物損壊事件において、検察官が最も重視するのが「被害者との示談の成否」です。示談が成立し、被害者が処罰を望まないという意思を示した場合、検察官は不起訴処分(起訴猶予)とする可能性が高まります。特に初犯で傷害の程度が軽微な場合は、示談成立が不起訴の必要条件に近い位置づけとなります。

示談交渉で弁護士が担う役割

示談交渉は、加害者本人または家族が直接被害者に接触することは、証拠隠滅や脅迫と誤解される恐れがあるため、弁護士を介して行うことが原則です。弁護士は、被害者の感情に寄り添いながら誠意ある謝罪と適切な賠償金の提示を行い、示談書の作成と署名・押印を取り付けます。

示談金の相場と算定根拠

傷害事件における示談金は、治療費・休業損害などの実損害に加え、精神的苦痛に対する慰謝料、そして早期解決の対価(解決金)を合算して算定されます。軽微な打撲・擦り傷であれば10万〜50万円程度、骨折を伴う中程度の傷害では50万〜200万円程度が目安ですが、被害者の感情や事件の態様によって大きく変動します。

公判における情状弁護の戦略

示談が成立しなかった場合の対処

示談が成立しないまま起訴された場合でも、公判において適切な情状弁護を行うことで、執行猶予付き判決を目指す余地があります。情状弁護では、犯行に至った経緯と動機の説明、反省の深さと真摯さ、今後の再犯防止策(カウンセリング受講、アルコール依存の場合は断酒会への参加)、そして職場や家族による監督体制の構築を具体的に立証します。

傷害・暴行事件において、弁護士なしで対応しようとすることは、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。示談交渉において適切な金額と条件を提示できなければ、示談が不成立に終わるリスクがあります。また、取調べにおいて自分に不利な内容を供述してしまったり、调書への署名を拒否すべき場面で署名してしまったりすることで、公判における弁護の幅が著しく狭まってしまいます。逮捕された直後、または警察から連絡があった時点で、速やかに弁護士に相談することが最善の対応です。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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