【交通事故】症状固定で泣き寝入りしない! むちうちの損害賠償額が劇的に変わる「後遺障害14級」の壁

交通事故に遭い、医師から「むちうち(頚椎捻挫・腰椎捻挫)」と診断されたものの、治療を続けても痛みが消えない。

やがて保険会社から「症状固定です」「もう治療費は打ち切ります」と告げられ、そのまま損害賠償の提案を受け入れることがあるかと思います。

「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態を指します。しかし、この言葉の裏側には、あなたが受け取る最終的な損害賠償額を大きく左右する重要な分岐点が隠されています。

残ってしまった痛みやしびれを「後遺障害」として認定してもらうか否かで、受け取れる賠償額は大きく変わる可能性があるからです。

特に「むちうち」の場合、最も認定を目指すべき等級が「後遺障害14級9号」です。

本コラムでは、むちうちで泣き寝入りせず、適正な「後遺障害14級」の認定を勝ち取り、損害賠償額を劇的に変えるための具体的な知識と戦略を大宮の弁護士が解説します。

なぜ「後遺障害14級」の認定が重要なのか?

なぜ「後遺障害14級」の認定が重要なのか?

「治療が終わって示談すればいい」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、後遺障害が認定されるかどうかは、最終的な賠償額に決定的な影響を与えます。

賠償金が大きく増額する3つの理由

賠償金が大きく増額する3つの理由

後遺障害14級が認定されると、それまでとは比べ物にならないほどの賠償金が加算されます。これには、いくつかの理由があります。

後遺障害慰謝料が加算される

後遺障害が非該当の場合、請求できるのは主に「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」となります。しかし、14級が認定されると、後遺症が残ったことに対する精神的苦痛への補償として「後遺障害慰謝料」が別途支払われます。

この後遺障害慰謝料の金額は、保険会社が提示する自賠責基準では通常数十万円ですが、弁護士が交渉にあたる弁護士基準(裁判所基準)で請求した場合、110万円が相場となり、その差は非常に大きくなります。

後遺障害逸失利益が請求できる

後遺障害とは、残った症状によって将来にわたって労働能力が失われたことを意味します。この「失われた将来の収入」を補償するのが「後遺障害逸失利益」です。

後遺障害が非該当であれば、逸失利益は一切支払われませんが、14級が認定されると、基礎収入額、労働能力喪失率(14級は5%)、労働能力喪失期間を基に計算された、将来の減収分として多額の賠償金を請求することができるようになります。

むちうちで「後遺障害14級9号」を認定されるためのいくつかの壁

むちうちで「後遺障害14級9号」を認定されるためのいくつかの壁

「むちうち」で後遺障害の対象となるのは、痛みやしびれといった「神経症状」です。この症状で認定を目指す等級が「14級9号:局部に神経症状を残すもの」です。

しかし、むちうちはレントゲンやMRIで明確な異常が見つかりにくいため、保険会社や審査機関は「大した怪我ではない」「ただの気のせいでは?」と判断しがちです。14級9号の認定を勝ち取るためには、以下の4つの「壁」を乗り越える必要があります。

事故態様と受傷の程度の壁

「軽い接触事故だった」という場合、保険会社は「その程度の事故で後遺傷害が残るはずがない」と主張してくることがあります。この壁を破るためには、車両の損傷状況の写真や修理見積書を保管し、事故の衝撃が体にかかったことを客観的に証明する必要があります。

修理費用が100万円を超えるような中破以上の事故は、認定上有利に働くと考えられます。

治療の継続性と一貫性の壁

後遺障害の審査では、「症状固定まで適切な治療を継続していたか」が非常に重視されます。

まず、事故直後から症状固定と診断されるまでの約6ヶ月間は、整形外科への通院を継続することが必須です。

月に数回の通院では、「症状が軽かった」と判断され不利になります。

また、治療の途中で「症状が消えた」「しばらく通院を中断した」という期間があると、症状の「連続性・一貫性」がないと判断され、非該当になる可能性が高まります。

痛む部位が当初から変わっていないこと、また、日常生活で症状に苦しんでいることを、医師に正確に伝え、診療録に残してもらうことが重要です。

症状の「常時性」と「医学的説明可能性」の壁

14級9号の認定基準は、「症状が、単なる故意の誇張ではなく、医学的に説明可能と推定されるもの」です。

「常時性」としては、「雨の日だけ痛い」「疲れた時だけ痛い」といった不定愁訴ではなく、「常に痛みやしびれがある」という訴えが必要です。

また、「医学的説明可能性」としては、むちうちでは画像所見に明らかな異常がないことも多いですが、神経学的な検査(ジャクソンテスト、スパーリングテストなど)や、患部の一部の知覚が鈍くなっているといった「自覚症状を裏付ける他覚的所見」が重要になります。

医師に対して、自覚症状を曖昧にせず、具体的な痛みやしびれの部位、強さ、頻度を伝え、これらの症状と整合性のとれる検査結果を後遺障害診断書に記載してもらうよう依頼することが不可欠です。

症状固定の時期と「後遺障害診断書」の壁

保険会社は、治療費の支払いを打ち切るために早めに「症状固定」を促してきますが、症状固定を急ぐと、症状の改善期間が不十分なまま後遺障害診断書を作成することになり、適正な等級認定が遠のきます。

症状固定の判断は、治療の経過を把握している主治医が行うものです。保険会社の都合ではなく、あなたの症状の推移を最優先に考え、最低でも6ヶ月は集中的な治療を継続しましょう。そして、最も重要な書類が「後遺障害診断書」です。

この診断書に、上記の「連続性」「常時性」「他覚的所見」を示す情報が網羅されていなければ、審査機関は症状の重篤性を認めてくれません。診断書作成前に主治医と面談する際の助言や、診断書の記載内容のチェックを行うことで、この壁を破るサポートが期待できます。

異議申し立てと弁護士の役割

異議申し立てと弁護士の役割

上記の努力にもかかわらず、審査の結果が「非該当(後遺障害なし)」と通知されることも少なくありません。

しかしかならずしも諦める必要はありません。

後遺障害の認定結果に納得がいかない場合、「異議申し立て」という手続きを行うことで、再審査を求めることができます。

異議申し立ての成功率を高める戦略

異議申し立ての成功率を高める戦略

異議申し立ては、単に「認定に納得できない」と主張するだけでは成功しません。

初回の審査で「何が足りなかったのか」を分析し、それを補う新たな証拠を提出することが必須です。

まず、審査機関(自賠責損害調査事務所)から送られてくる認定理由書から「症状の連続性がない」「画像所見がない」など、非該当とされた具体的な理由を特定します。

次に、この非該当理由を覆すための医学的証拠を確保します。これが最も重要です。

例えば、主治医に対し、症状固定後の痛みやしびれが交通事故に起因すること、症状に一貫性があることを、医学的見地から具体的に記述してもらう「医師の意見書」を作成してもらいます。

また、初回審査で言及されなかった、神経学的所見を明確にするための追加的な専門検査を提案・実施します。そして、事故当初からの症状の訴えがどのように変化し、いかに症状が連続・常時であったかを、詳細なレポートとして提出します。

弁護士による異議申立て

弁護士による異議申立て

異議申し立ての全体的な成功率は高いとは言えません。

異議申立書は、単なる嘆願書ではありません。緻密な論理に基づき、「なぜこの症状が後遺障害14級に該当するのか」を、判例や医学的知見を引用しながら、審査機関に対して説得力をもって主張する書面でなければなりません。

この作成を弁護士に依頼することで、審査に有利な情報を取捨選択することが期待できます。

後遺障害14級認定後の賠償額アップの戦略

後遺障害14級認定後の賠償額アップの戦略

無事に後遺障害14級の認定を受けたら、次に待っているのは相手方保険会社との示談交渉です。ここでも、弁護士の力が不可欠です。

保険会社の提示額

保険会社の提示額

後遺障害14級が認定されると、保険会社から示談案が提示されます。しかし、保険会社が提示する金額は、必ずしも「最も適正な金額」ではありません。

 彼らは、「弁護士基準(裁判所基準)の範囲内で、できるだけ低く抑えたい」という意図を持って交渉に臨んでいます。

例えば、後遺障害慰謝料について、弁護士基準では110万円が目安であるにもかかわらず、その金額に満たない提示をしてくることがあります。また、逸失利益の計算においても、労働能力喪失期間(通常5年程度)や基礎収入の評価を不当に低く見積もってくるケースが多々あります。

弁護士による増額交渉のポイント

弁護士による増額交渉のポイント

裁判例などを根拠に、提示額の増額交渉を行います。

後遺障害慰謝料の満額請求

14級の弁護士基準である110万円の満額を揺るぎなく主張します。

逸失利益の交渉

被害者の職業や年齢、症状の重篤性によっては、喪失期間を5年より長く(例:7年、10年)主張するなど、個別の事情に応じた最大限の請求を行います。

過失割合の修正

賠償額は、被害者の過失割合によって減額されます。保険会社が提示する過失割合が不当である場合、弁護士は客観的な証拠に基づき、過失割合を修正し、最終的な受取額の目減りを防ぎます。

弁護士が介入することで、被害者の方が自力で交渉した場合に比べ、大幅に増額となるケースは珍しくありません。これは、保険会社が提示する自賠責基準ベースの金額と、弁護士が請求する裁判所基準の金額との間に、大きな差があるためです。

まとめ

まとめ

交通事故の被害に遭われた方は、これまでの生活と大きく一変してしまうことは少なくありません。少しでも適切な賠償額を請求することが何よりも大切です。

そのために、弁護士を介入させることをぜひご検討ください。

ご自身の保険に弁護士費用特約が付帯していれば、費用を気にせず弁護士に依頼することが可能です。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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