
離婚の準備をしているということは、遅かれ早かれ、妻も同様に対策を練ってくるはずです。そこで、妻は一体どんなことを考え、どんなことを要求してくるのか、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」の観点で反対の視点を持っていただきたく紹介します。
概要

離婚事件において、大きく分けると、①親権者をどちらとするか、②養育費の内容、③面会交流、④慰謝料の有無、⑤財産分与の内容、⑥年金分割、といった論点があります。もっとも、妻の関心事は、「今後の生活をどうしてくれるんだ」という金銭の問題が大きいと思われます。そこで、金銭問題に絞って紹介していきます。
離婚に至るまでに解決するべき論点

離婚が成立するまでの「婚姻費用」
夫婦が別居している場合でも、離婚が正式に成立するまでは法律上は「夫婦」であることに変わりはありません。そのため、収入が多い方は、配偶者や子どもの生活を支える義務を負います。これが「婚姻費用」と呼ばれるものです。
婚姻費用には、住居費や食費、教育費など、生活全般に必要な支出が含まれます。具体的な金額は、夫婦の収入や子どもの人数などに応じて算定され、「算定表」と呼ばれる基準に従って決めるのが一般的です。支払いに関するトラブルがある場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることができます。
子どもがいる場合の「養育費」
離婚後、子どもと同居しない親も、その子どもの生活を支える責任があります。これが「養育費」です。養育費の金額も婚姻費用と同じく、双方の収入や子どもの人数・年齢などを踏まえて算定表を用いて決定されます。
重要なのは、養育費は「親の義務」であるという点です。「会わせてもらえないから払わない」というような言い分は、法的には認められません。また、養育費の支払いは原則として子どもが成人するまで続きますが、高校卒業や大学進学の有無によって延長される場合もあります。
離婚協議の際には、養育費の金額、支払期間、振込日などを明確に取り決め、できれば公正証書を作成しておくと安心です。万一支払いが滞った場合、裁判所を通じて強制執行を行うこともできます。
離婚に伴う「財産分与」
離婚する際、夫婦が結婚生活中に築いた財産は原則として折半されます。これが「財産分与」です。対象となるのは預貯金、不動産、車、有価証券、退職金など。専業主婦(主夫)だった場合でも、家事や育児という「無償労働」によって家庭に貢献していたと認められれば、財産分与の対象となります。
また、財産分与には「清算的財産分与」(財産の公平な分配)のほか、「扶養的財産分与」(離婚後の生活が困窮する側を援助する目的)や「慰謝料的財産分与」(精神的損害を補う役割)といった意味合いもあります。
財産の名義がどちらであっても、結婚後に築かれたものであれば分与対象になります。一方、結婚前から保有していた財産や、相続・贈与されたものなどは「特有財産」として分与の対象外です。
不法行為があった場合の「慰謝料」
離婚に至る原因が配偶者の不倫や暴力、モラルハラスメントなどの不法行為である場合、被害を受けた側は「慰謝料」を請求できます。ただし、性格の不一致や価値観の違いなど、単に相性が悪かったという理由では慰謝料の対象にはなりません。
慰謝料の相場は事案によって大きく異なりますが、一般的には50万円から300万円程度が多いとされています。協議で合意できなければ、家庭裁判所を通じて調停や訴訟で請求することになります。
離婚後の生活費の目論見

離婚後の生活設計を立てるうえで重要なのは、「毎月どれくらいのお金が必要になるのか」を現実的に把握することです。収入(就労収入、養育費など)と支出(住居費、食費、保育費、教育費など)のバランスを冷静に計算し、必要であれば公的支援制度の利用や再就職の準備も検討しなければなりません。
なお、離婚後は母子家庭(または父子家庭)として児童扶養手当、医療費助成、住居支援などの行政サービスを受けられる可能性もあります。住んでいる自治体の窓口で情報収集することも欠かせません。
このような観点で考えたとき、妻の生活が成り立たないと思われてしまった場合には、離婚を拒絶されるでしょう。
「公正証書」作成圧力

離婚にあたって決めるべきお金の取り決めは、すべて口約束で済ませるのではなく、できる限り書面に残すことが大切と言われます。特に養育費や財産分与、慰謝料については、公正証書にしておくことで万一の支払い遅延・不履行に備えることができます。
公正証書には「強制執行認諾条項」を入れることが可能で、これにより、相手が支払いをしない場合でも裁判を経ずに差し押さえが可能になります。
そのため、公正証書を作るという話になった場合、覚悟をもってその内容を吟味検討することが肝要です。
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